報酬改定議論の中で、訪問介護費について「一定の間隔を空ければ一日に複数回所定の報酬を算定可能な現行の報酬体系は、必要以上のサービ ス提供を招きやすい構造的な課題があるという指摘がある。 」という考えが示され、その方向から議論展開された。

このことは居宅介護支援事業所の介護支援専門員に対する、居宅サービス計画の在り方に関する疑念にも結び付いた。必要以上のサービスを計画しているのではないかという意味である。

特に訪問介護における生活援助中心型サービスは、通常のケアプランよりかけ離れた利用回数の居宅サービス計画が存在するとして、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、市町村が確認・是正を促していくことが適当であるとされた。そのためケアマネジャーが一定の回数を超える訪問介護を位置付ける場合には、市町村にケアプランを届け出ることとし、届け出られたケアプランについて、市町村が地域ケア会議の開催等により検証を行うことになった。

そんな中で来年度以降、保険者には自立支援・重度化防止に向けた目標設定等を義務付け、目標を達成した市町村に自由に使える交付金を増やすという財政インセンティブ制度(報酬金制度)ができる。それは端的に言えば、一定期間の給付費抑制を評価することにもなる。

その中で居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から市町村に変更され、市町村の権限が強化されていくのだから、訪問介護の生活援助の制限も強化されていくことが予測される。

もともと生活援助中心型サービスについては、同居家族がある場合の制限ルールが存在している。しかしこうした制限が過度に機械的に当てはめられた結果、生活に支障をきたす例に枚挙がないことから、平成21年12月25日に、厚労省老健局振興課長通知、「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」が発出され、同居家族に障害や疾病等がない場合であっても、介護疲れで共倒れの危険性がある場合や、日中就労で家事が実質困難な場合は、生活援助中心型サービスを適切に組み込むように通知している。

ここで一番問題となったのは、都道府県等(政令指定都市の場合は、区や市など)の行政指導担当課が、「同居家族がいる場合は、昼ごはんも事前に作り置きすることができるので、原則生活援助中心型サービスで対応することは認めない」などと一律機械的に支給制限をすることであった、

しかるにいまだにこうした一律機械的な制限を行っているところがあるそうだ。こうしたローカルルールは、保険者の権限が強化される来年度以降増えることだろう。その時に、利用者の暮らしをコーディネートするケアマネジャーが、こうした制限はもっともであると無批判に受け入れることで何が起こるだろうか。

就労している息子に、同居しているという理由だけで一律機械的に家事を押し付けることは、どんな結果をもたらすのかという想像力が必要だ。就労で疲れた体を鞭打ちながら作る夕食や朝食のみならず、自分が不在の際の家族の昼食準備さえ、一律機械的に押し付けるという暮らしの中で、本当に人間らしい暮らしの営みを継続できるかという視点が必要だ。

「同居家族に障害や疾病等がない場合であっても、介護疲れで共倒れの危険性がある場合」という状況を、個別状況に当てはめて、狭く考えるのではなく、より広く考えるほうが、人の暮らしの支援では必要なことだろう。それはサービスありきの計画ではなくて、必要性をアセスメントすることによって導き出すという意味に他ならない。

原則制限が正しいと言い切るケアマネが担当者であってはかなわない。

そもそも家族は、インフォーマルな支援者とか社会資源とかいう前に、血の通った人間そのものである。血の通った人間は、いつも頑張れないし、くじけることがある弱い存在だ。

社会全体で支えあうために生まれたはずの介護保険制度とは、皆がぎりぎりまで頑張らなくてもよくなる仕組みを作るという意味があったのではないのか。「それは家族が行うべきことでしょ。」・「同居家族がいる方の調理は、家族支援が基本だ」と簡単に断じる介護支援専門員は、介護の社会化というコンセプトや、強制加入保険で生ずる国民の権利との整合性をきちんと語れるのであろうか。

そうしたケアマネジャーは、家族が頑張って限界点に達する瀬戸際で、心が壊れていく様をみたことがあるのだろうか。

それともそうしたケアマネは、「国民の健康で文化的な最低限度の生活」を奪うことを目的として居宅サービス計画を立てているとでもいうのだろうか。

一律機械的制限が危険であるという視点がないケアマネに、本当の意味の暮らしの支援なんてできるわけがない。ろくでもないローカル行政ルールに縛られて、制限をすることが適正プランであると思い込んでいるケアマネに、この国の行く末を任せることなんてできないのである。

そんなケアマネはいらない。さっさと退場してくれ。
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