月曜日に書いた、「一般型老健の新報酬はいかに厳しいか」のまとめ部分に、4月以降の診療報酬改定に関連して、在宅復帰強化型老健や同加算型老健が、医療機関からの在宅復帰率の計算式に入れることができなくなったと書いたが、それは間違いであった。

記事を訂正するとともに、改めてここで新ルールを示しておこうと思う。

介護報酬や診療報酬の改定、介護・医療制度の改正は、現在の制度がいかに持続できるかという視点から行われている。そのために各自治体が知恵を絞って、限りある財源を地域住民ニーズに合わせて、必要な部分に重点的に配分できるように、地域包括ケアシステムを創りあげ、それを深化させようとしているのである。

高齢化が進行するわが国では、慢性疾患を抱えて長生きする人が増えているのだから、医療入院は、疾病の発症から治うまでのすべての期間を担うのではなく、疾病の発症時期に自宅等から緊急入院できる機能を高め、疾病に速やかに対応すると同時に、治療を速やかに行うことで、できるだけ入院期間を短くして、ある程度の治療が終わった時点で、患者を地域に戻すという役割が求められてくる。

そして地域の中で、慢性期疾患については通院で対応しつつ、主として介護サービスを使いながら、機能維持や機能低下のスローダウンを図ることが求められている。このように社会保障費の自然増を抑制するためには、医療から介護への付け替えが求められてくるわけである。

そのために医療機関には、急性期・回復期・慢性期のぞれぞれの時期に対応する病棟区分を明確にすることが求められ、各病棟区分ごとに算定できる基本報酬や加算報酬算定要件に、一定の在宅復帰率をクリアすることを求めている。

今年4月からの在宅復帰率計算式の一部変更の表が以下である。この中の老健の記述部分に注目いただきたい。
無題
無題2
この3月まで、在宅復帰強化型老健及び加算型老健については、7:1病棟と地域包括ケア病棟からの在宅復帰率計算式に入れることができるとされる一方、一般型老健はどちらの計算式にも入れられなかった。

しかし4月以降の計算式では、急性期病棟からの在宅復帰率の計算時に、在宅強化型および加算型老健だけではなく、一般型老健も計算式に入れられるようになっている。一方、地域包括ケア病棟からの在宅復帰率の計算式から、すべての老健が外れている。

老健の顧客確保という面から考えて、これはどのように影響してくるだろう。

医療機関はより高い報酬を算定するために、在宅復帰率をクリアせねばならない。急性期病棟では8割、回復期病棟では7割、長期療養病棟でも在宅復帰加算を算定するには5割の在宅復帰率が求められている。

そのため現行まで、急性期・回復期病棟からの退院先として、在宅復帰強化型老健・加算型老健を勧める傾向があって、それらの病棟からの退院患者を受け入れることで、ベッドの稼働率と回転率を高めている老健施設も多かったはずである。

しかし4月以降は、急性期病棟から一般型老健を含めたすべての老健に退院患者が入所するという流れになって、逆に言えば在宅強化型および加算型老健は、一般老健と顧客を奪い合わねばならない流れもできてくる。

さらに地域包括ケア病棟から老健に入所しても、在宅復帰率の計算式に入らなくなるということは、それらの医療機関からの退院先として、老健が選択されるケースは減ることを意味にしている。(替わって退院先として介護医療院という選択が増えていく傾向が予測される。)それは老健のベッドの稼働率と回転率に、大きな影響を及ぼしかねない。

入退所担当の相談員は、今からそれに備えた対策を考えなければならないのではないだろうか。

なおこの表の中の「居住系施設」には、グループホームや特定施設のほか、特養も含まれているので、地域包括ケア病棟からの退院先として、特養を選択しようとするケースも増える可能性がある。そういう意味では顧客確保に苦心し、空きベッドが生じている特養の営業先として、各医療機関の在宅復帰率管理担当者が存在するということも知っておく必要があるだろう。
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