27年の報酬改定の際、収益率が10％を超えていた特養は、「もうけ過ぎ」であるという批判を受け、大幅な報酬カットが行われた。その影響から28年決算時の収支差率は全国平均1.6％と大幅に落ち込んで、中小企業の平均収益率（2.6%）と比べても大きくそれを下回った数値となった。

この数値は単年度赤字の特養が、かなりの数にのぼることを推測できるものであり、これ以上の減額は深刻な経営悪化に陥る特養が増大する危険性をも示す数値であった。

そんな中での介護報酬改定で、全体の改定率が小幅のプラス改定（0.54％）とされる中、特養の報酬は約3％の増額となっている。これでひとまず息をついた特養経営者が多いのだろうか。特養の報酬改定の全容をチェックしてみよう。（※ただし定員30名の小規模介護福祉施設については、例外的に大幅減算）
特養の新旧報酬比較
本体報酬は2％弱のアップ。これだけで100人定員の特養では、年間約480万円の増収となる。

配置医師緊急時対応加算は、複数名の配置医師を置くだけではなく、配置医師と協力病院等の医師が連携し、施設の求めに 応じて24時間対応できる体制を確保していることでも算定できるので、協力病院に強く働きかけて、その体制を作るべきである。

もう一つの算定要件である「入所者に対する緊急時の注意事項や病状等についての情報共有の方法及び曜日や時間帯ごとの医師との連絡方法や診察を依頼するタイミングなどについて、医師と施設の間で、具体的な取り決めを行う」ことは難しいことではないので、協力病院等の医師との連携さえできれば、6時〜8時の早朝と18時〜22時の夜間の診療は650単位/回、22時〜6時までの夜間の診療は1300単位/回と、高い報酬を算定できる。この費用を算定することは、特養の収益として大きな要素になる。（僕が施設長を務めていた特養の実績からいえば、50万〜100万/年の算定が可能と思える。）よって算定要件をクリアして、早朝・夜間又は深夜に施設を訪問し、診療を行う必要があった理由を記録するなどの要件をクリアして算定したいものだ。（※ 看護体制加算（�供�を算定していない場合、この加算も算定できないので注意が必要。）

上記の連携体制を確保した場合、看取り介護加算は、死亡日と死亡日の前々日の3日間を合わせて500単位高い報酬を算定できる。これを年間30人に適用できるとすれば、15万円の増収。これは収益としては大きくないが、特養の機能として実践が必要だ」。

夜勤職員配置加算について、現行の要件に加えて、夜勤時間帯を通じて、看護職員を配置していること又は喀痰吸引等の実施ができる介護職員を配置していることで現行より高い報酬算定ができるが、看護職員が夜勤を行っている特養は、全国平均でも1割に満たないので、喀痰吸引等の実施ができる介護職員の配置で算定する施設の方が多いだろう。毎日喀痰吸引等の実施ができる介護職員が配置できれば年間100万以上の収益増につながる。これは大きい。

生活機能向上連携加算については、個別機能訓練加算を算定している場合は100単位／月加算で、100人定員で年間120万円の増収。

新設された排せつ支援加算は、要介護認定調査の「排尿」または「排便」の状態が算定要件になってくるため、利用者すべてに算定することは難しいが、特養の場合要介護3以上の入所者が大部分を占める状態になっているため、8割程度の利用者に算定可能と思える。ただしこの加算は、支援を開始した日の属する月から起算して６ 月以内の期間に限り、１月につき所定単位数を算定するとされていることから、来年度は年間45万以上の増収が期待できるかもしれないが、2019年度以降は新規入所者と再入所者の算定に限られるために、算定単位は減ってくる。

褥瘡マネジメント加算 10単位については、３月に１回を限度として算定であるため、年間2〜3万円程度の少額増収しか見込めない。しかし算定対象者は現に褥瘡ある利用者ではなく、褥瘡の発生に係るリスクがある利用者を対象にすることができるため、寝返りができないという状態像だけではなく、何らかの皮膚保清援助を要する人に算定可能と思え、かなり広い範囲になる。

低栄養リスク改善加算 300単位／月は、経口移行加算・経口維持加算を算定していない利用者で、かつ低栄養リスクが「高」の入所者であることから、算定率は低くなると思えるが、仮に年間20人に算定するとして72万円の増収となる。

再入所時栄養連携加算 400単位／回は、要件から鑑みると年間数人程度の算定にとどまると思え、増収の期待をしておかないほうが良いだろう。

在宅サービスを利用したときの費用 560単位／日については、実際に特養の職員が利用者宅に出向いてサービス提供が可能かということを、人員不足の現状から考えると、難しい点が多いように思える。どちらにしても現行の外泊時費用の大半が、入院により算定されている現状を考えると、この費用は収益に大きく反映されるとは考えにくい。

総合的に考えると、今回の改定は、拾える加算をこまめに拾っていくことで、年間800万以上の収益アップが期待でき、そこを目指して経営・運営にあたる必要があるだろう。
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