僕は北星学園大学・文学部社会福祉学科を卒業している。というわけで学生時代は社会福祉を専門に学んできたわけであるが、専攻は高齢者福祉ではなく、児童福祉であった。

そのため社会福祉実習は、児童相談所で行い、数多くの児童施設を訪ね歩いた。児童養護施設もそんな施設の一つである。

児童養護施設とは、児童福祉法41条において定められている施設で、「児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設」と定義されており、児童相談所長の判断に基づき、都道府県知事が入所措置を決定する児童福祉施設である。

そんな児童養護施設で信じがたい虐待が行われていたことが明らかになった。

道央の児童養護施設で2013年8月から2014年3月にかけて、道が措置入所させた女児らに対し、男性職員(当時)がわいせつ行為を繰り返していたことが、北海道新聞の調べで明らかになった。

この職員は女児2人に対し、消灯後の女子居室で、それぞれ胸や下半身を無理やり触ったほか、別の女児とも施設内で複数回、性交渉を行っていたという。事件は被害女児からの訴えで発覚し、道と同施設を運営する社会福祉法人が、それぞれ200万円支払うなどで和解しているという。なお犯人は、懲戒解雇され、2014年9月に、強制わいせつ、児童福祉法違反(淫行させる行為)などの罪で懲役4年6カ月の実刑判決を受け確定している。今も塀の中であるということか・・・。

本件は最初に女児から性的虐待を聞いた職員から報告を受けた上司が、すぐに施設長らに報告していなかったなど、事件の重大性を認識していないかのような施設側の対応の問題も明らかにされている。

今朝の北海道新聞朝刊の3面記事では本件に関連して、「助けてと言えなかった 養護施設の性的虐待被害者 恐怖や不信感、口止めも」と題した特集記事を掲載している。その中で被害女性が、「施設を追い出されたら行くところがない、どうしようと怖かった」と性的被害を訴えられなかった理由を語っている。
北海道新聞1/19朝刊
さらに被害女性は、事件が明らかになり加害男性がいなくなってからも悪夢にうなされ、警察や検察の事情聴取も、「あの時のことを思いだそうと頑張らなきゃいけなくて、つらかった」と語り、何度も死のうと思いリストカットを繰り返した過去を振り返っている。まさに悲痛な声としか言いようがない。

これから先の社会が彼女を温かく包み込んで、なんとか1日も早く立ち直ってくれることを祈るのみである。

様々な事情から、家族と暮らせない子供たちにとって、児童養護施設はセーフティネットであり、一時的滞在の場所ではあっても、ある時期、そこは子供たちにとって安住の場所でなければならない。そのような場所に、鬼畜のような職員が存在することいよって、子供の人生がゆがめられ、今回の報道で明らかになったように、ひとりの女性の人生がひん曲げられることを許すわけにはいかない。

人を護る場所で、このような鬼畜が存在した場合、被害が子供たちに及ぶ前に、それを察し未然に事件を防ぐことはできないものかを、今一度真剣に考え直さねばならない。

そのためには社会がもっと、命を尊び、尊厳を護る意識を育てることが必要だ。人が人に対してもっと優しくなるためには何が必要で、何がそれを阻害しているのか、僕たち社会福祉の専門家は、もう一度そのことを振り返って考えねばならない。

これは児童問題ではなく、この国の社会問題だ。社会全体で対策を講じていかねば解決しない問題だと思う。
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