丁寧語で利用者に接すると、自分と利用者の間に壁ができると思い込み、わざわざ言葉を崩している人がいます。
崩した言葉で伝わるものは、親しみやすさではなく、馴れ馴れしさだけです。それは時に相手にとっては無礼で、不快な言葉にしか過ぎなくなります。
介護サービスの場では、利用者が職員の無礼で馴れ馴れしい言葉遣いに不快を感じても、遠慮して言い出せない人が多々存在します。そんな場面が多々あります。認知症が原因で、苦情を伝えられない人も数多くいます。
そういう人たちにとって、崩した言葉は時に刃(やいば)にも等しいものです。
認知症の人は、どれだけ長く付き合いがある介護職員でも、毎日その職員の顔を忘れてしまいます。それらの人にとって、職員の側が慣れ親しんだ利用者であると思っていても、利用者にとってその職員は初めて会う人です。そんな見ず知らずの初対面の人が、自分に向かって馴れ馴れしいタメ口で言葉をかけるとしたら、自分を馬鹿にしているのか、喧嘩を売っているのではないかと感じます。どちらにしても、そのような言葉かけは、不快この上ないものだと思うでしょう。自分を攻撃していると勘違いするのも当然です。
つまり言葉を崩して生まれるものは、深い谷なのです。
利用者と職員の壁を崩すような結果は生まれません。そもそも丁寧な言葉をかけることにおいて、利用者と職員の間に壁など生じないのです。汚らしいタメ口による声掛けとは、利用者と職員の間に暗くて深い谷をつくって、場合によってはその谷に、利用者を突き落とすことなのです。
言葉を崩して親しまれようとしたとき、どこまでの崩れが親しみにつながり、どのレベルを超えたときに、相手に不快感を与えるかという線引きなど不可能なのです。線を引くとしたら、お客さん様に接する際にとって良い態度であるか、使ってよい言葉であるかというところしかありません。
言葉を崩した先に生まれるものは、利用者と職員の親しい関係ではなく、言葉を崩した側の思い込みから発生する感覚麻痺に他ならないのです。タメ口を利用者が喜んでいるという勘違いから、自らの不適切さを気付きにくくさせる感覚麻痺がどんどん広がって、人を小ばかにして不快にさせ、人を傷つける行為さえ見えなくする感覚麻痺なのです。
利用者をお客様として認識して、接客として正しい丁寧語で接することは、利用者と職員の間に壁を作ることにはなりません。対人援助であるからといって、対価をいただき職業として利用者に接している以上、お客様に接するプロとして相応の対応が求められるのですから、丁寧語はプロの技を示して、お客様に信頼感を抱いていただくツールです。それを示すことにほかなりません。
どうぞ正しい丁寧語で、利用者の皆様を護る介護従事者でいてください。
2月24日(土)と25日(日)に、福岡と岡山で行うセミナーは、こうした感覚麻痺につながる、言葉の乱れの恐ろしさを具体的に伝えるセミナーです。過去に同じ内容で行ったセミナーで、多くの介護従事者の方々が、間違いに気づいて、職場の中で言葉の改革に取り組んでおります。介護事業経営者の皆様には、是非職員さんが間違いに気が付くように、このセミナーへの参加機会を与えていただきたくお願い申し上げます。
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