4月からの介護報酬改定に向けて、そろそろ諮問・答申がされる時期となった。
その際に改定率がプラス0.54とされた新しい介護報酬単価が明らかになるが、それはこのブログで何度も指摘してきたように、介護事業者が一律収益アップにつなげられる単価にはなり得ない。
特に昨年度の経営実態調査で民間の中小企業より収益率が高いとされた事業種別については、「適正化」の名のもとに単価が下げられる。このことは12/18の麻生太郎財務相と加藤勝信厚生労働相の折衝の中で、マイナス0.5%程度の適正化を断行することでも一致しており、通所介護等の経営者には頭の痛い改定となるだろう。
そのような中で、新たな加算などが創設される。今後の事業経営を考えると、これらの加算は重要で、基本サービス費以外の加算を細かく確実に拾っていかねばならず、算定漏れがないように算定要件をしっかり理解しておかねばならない。
そのためには、介護報酬の諮問・答申後に示される報酬告示と解釈通知を必死に読み込むことが必要になる。同時にその解釈を巡って、全国各地で様々な研修会・説明会も行われることになるだろう。
そうした中で、僕も介護保険制度改正や報酬改定をテーマにしたセミナーなどに講師としてご招待を受けることが多い。
そうしたセミナーで、厚労省の方とご一緒にお話しする機会もある。よって必然的に厚労省の方の講演・講義を聴く機会も多くなる。しかしその内容が自分自身の学びになるかといえば、正直「否」といいたくなるところだ。
厚労省の方々は、国の内部で議論された様々な情報をお持ちであることは間違いのないところである。しかし研修会やセミナーという公の場で、「実は〜。」といった形で舞台裏のエピソードを語ってくるるかといえば、それはほとんど期待できない。立場上、公に示された内容を超えた個人的意見で発言することはできないので、誰を講師に呼んだとしても、同じ資料でほぼ同じ内容を語ることになる。
その資料も一般的に公開されている資料であり、内部文書を出すこともない。さらに介護報酬単価の改定額等は、それが現時点で最も適正な額であり、最も適切な算定ルールであるという前提で語ることになるので、その部分に批判的な意見は皆無である。
制度改正や報酬改定時の新しいルール等には、次の改正や改定の橋頭保となる様々な布石が隠されたりしているが、厚労省の役人という立場で、そのことに触れるわけにはいかない。同時に過去の改正のどの部分が布石となっていて、今のルールにつながっているという解説もできないし、今後の見通しも基本的には示すことはできない。
ましてや介護事業の経営戦略につながる話や、収益を挙げるための工夫について、彼らは触れることを許されていない。それは事業者の個別の経営努力の問題とされ、国がその部分に少しでも容喙(ようかい:ちばしを入れること。横から口出しをすること。)することがあっては、責任問題になるからだ。
つまり厚労省の方々の講演は、介護現場であまり役に立つ内容ではなく、基本資料の説明にとどまり、あたりさわりのない内容で終わることがほとんどだ。最初からあまり期待してはいけないのである。
一方、僕のような立場だと、地位的責任がないので、自由に発言できる部分は多い。介護保険制度開始当初から、今までの流れもすべて知っており、かつ介護経営にもか関わっているので、制度や報酬単価に対する批判的批評もできるし、隠された布石や、今につながっている過去の改正点にも触れて、今後の事業戦略という部分に触れてお話しすることもできるわけである。その際には、大胆な今後の予測も交えることもできる。(※過去の事実からいえば、その予測は概ね当たっていることを付け加えておく。)
そのため厚労省の方とご一緒する講演においても、僕の講演の方が評判が良いことも多い。
しかしこれは能力の問題ではなく、立場の違いという問題である。国のお役人様がその立場を超えて自由に発言できるわけではないという、彼らの立場を思いやって、その分を差し引いて講演を受講すべきである。
よって所轄官庁の担当者が講演を行うというセミナーに対し、過度な期待を持つことは禁物である。本当に必要な情報や、聞くべき意見は、国とは対峙する立場の人の中にあることも多いのである。
というわけで、僕は今日も来月行う、「介護報酬改定の要点」に関する講演資料を作成している真っ最中である。
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