来年度の介護報酬の改定率は全体でプラス0.54%となるが、それを正式に決定した12/18の麻生太郎財務相と加藤勝信厚生労働相の折衝の中で、マイナス0.5%程度の適正化を断行することでも一致していることを忘れてはならない。

つまり引き下げるサービスと引き上げるサービスをトータルでみてプラス0.54%とするという意味である。これに関連しては12/21の第17回経済諮問会議がまとめた工程表で、介護報酬改定の方向性として下記の2点が明記された。

○ 身体介護・生活援助の報酬にメリハリをつける

○ 通所介護など各種の給付の適正化を実施する


訪問介護の生活援助は、これ以上単価を引き下げると、サービスの担い手がいなくなるという懸念も示されているが、今回は生活援助サービスを提供できる資格者の要件を緩和し、130時間の初任者研修より短い研修を創設し、この修了者もサービス提供できるようにする。つまりボランティアができる程度の知識と体力がある人に、生活援助サービスを実施を担ってもらえるようにして、報酬単価を引き下げるわけである。悪い言葉を使えば、元気な高齢者の小遣い稼ぎとしてできるサービスに生活援助を貶めるというわけである。

通所介護も大規模事業所の報酬を下げるだけでなく、サービス提供時間単位を1時間ごとに細分化することで実質、報酬削減を狙っている。また小規模デイが下げられないという保障もない。Barthel Index(バーセルインデックス:ADL評価法)による一定期間内の利用者の機能回復や維持に対する評価加算を算定できない事業者は非常に苦しい経営状態に陥る可能性が高い。特にサービス提供時間が4時間程度のリハビリ特化型デイサービスは、大きな報酬ダウンとなる可能性が高い。(参照:リハビリ特化型デイサービスは国の覚えがめでたくない)

そもそも通所介護の報酬構造は、すでにすべての加算を算定しないと、将来にわたって収益を確保することは難しくなっているのだから、18人までしか受け入れられない地域密着型通所介護の経営戦略は破綻している。今収益を挙げていたとしても、1日18人しか加算算定できない事業で、10年職員の定期昇給を行いながら収益を挙げ続けることは不可能だ。地域密着型通所介護は顧客数を増やし、1日でも早く都道府県指定の事業に変更していくべきであり、月450人以上の顧客確保を目指していかねばならない。

昨年度の経営実態調査で、通所介護より収益率が高かった通所リハビリも報酬削減が予測される。特に3時間以上の通所リハビリテーションの基本報酬について、同じ時間、同等規模の事業所で通所介護を提供した場合の基本報酬との均衡を考慮した見直し案が示されているので、通所リハビリもサービス提供時間区分が1時間ごとに細分化されたうえで、報酬ダウンとなる可能性が高い。拡大・緩和されるリハビリテーションマネジメント加算の新要件に対応して、この加算を算定しないと経営状態が厳しくなるだろう。

ただし通所リハビリについては、短時間リハビリの基準要件緩和が図られるほか、小規模多機能型居宅介護利用者も、短時間リハビリに限って通所リハビリの利用を認めるよう要件緩和が実現される可能性が高く、顧客確保の間口が広がることから、経営戦略上大きなサービスとなり得る。ここの部分の事業戦略見直しも必要だろう。

今回見送られた混合介護については、訪問介護をメインとしたモデル事業が実施される。その内容は、要介護高齢者等と同居する家族の分の調理や洗濯、ペットの世話、庭の手入れ、電球の付け替え、日用品以外の買い物、長時間のコミュニケーションなどを連続的、あるいは一体的に提供していくというものだ。自費による外出支援をフレキシブルに組み合わせる形も試す。見守りのためのICT機器を上乗せ料金で導入・運用するサービスもテストする。

そのためにモデル事業では、保険外サービスの提供計画を別途作り、利用者の同意を得ることも求める。この提供計画をケアマネと共有することも義務付けるとともに、実地指導やケアプラン点検に取り組む。利用者保護の規定を盛り込む契約書も必須とされ、関係者と協議して標準的な様式を定めることとしている。

さらに再来年度以降になれば、デイサービスのサービス提供時間内の買い物支援や、ヘルパーの「指名料」の実験などにも発展していくとされている。

これらは国が介護事業者に送るメッセージを含んだものだ。

それは介護事業者は、いつまでも保険給付事業だけに寄りかかって、食っていくことはできないぞというメッセージである。
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