6年に1度となる診療、介護、障害福祉の3報酬の同時改定で、介護サービスの公定価格である介護報酬は0.54%のプラス改定となった。

診療報酬は、本体部分がプラス0.55%とされたが、薬価下げを巡り、改革効果を織り込む厚生労働省と、織り込まない財務省とで見解が分かれ、厚労省試算では薬価でマイナス1.74%、診療報酬全体でマイナス1.19%としているが、例年通り試算する財務省は薬価マイナス1.45%、全体マイナス0.9%としている。

障害福祉サービス等報酬も0.47%のプラス改定で、国庫負担は合計800億円増えることになった。

介護報酬は2012年度の前々回改定以来、6年ぶりの増額とされているが、このブログで何度も指摘しているように、プラス改定だから介護事業者の収益が挙がるという構図にはならない。

プラス改定分には、介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティブという成果報酬(加算)が新設されるほか、従前の加算も、より成果に結びつく要件を加えて加算額が上がるものがある。このように重点的にアウトカム評価がされる中での小幅のプラス改定とされるのだから、多くのサービス種別において基本サービス費は下がることになる。少しでも収益を上げるためには、細かく加算を拾って、かつ減算対象とならないようにルールを読み込むことが求められる。

介護施設の場合、褥瘡管理の評価や排せつの機能向上の評価が新設されたが、これらについては必ず算定しなければならない加算である。それぞれの要件を読みこんで、対象となる利用者に説明し、算定漏れがないように新年度に向けて今から備えておく必要がある。

ところで排せつの機能向上の評価については、医師・看護師の判断で排泄機能の向上(排泄について全介助→一部介助等)ができると見込んだうえで計画を立て、サービスを行った場合に評価する加算とされたが、この加算案が示された11月29日の第153回介護給付費分科会の直前、11月25日05時09分にインターネット配信ニュースサイトである朝日新聞DIGITALが、松川希実さんという記者名をつけて『介護「脱おむつ」支援の事業者は高報酬に 厚労省が方針』というニュースを配信した。張り付けたリンク先の記事は、一定時間経過後に削除されてしまうので、下記にその内容を転載する。

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朝日新聞DIGITAL 2017年11月25日05時09分配信記事

介護「脱おむつ」支援の事業者は高報酬に 厚労省が方針

 厚生労働省は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでおむつをしている入居者がおむつなしで暮らせるように支援する施設事業者に対し、介護報酬を手厚くする方針を固めた。来年度の報酬改定で導入する高齢者の「自立支援」を促す仕組みの具体策だ。
 まず、おむつを使う入居者に「ポータブルトイレをベッド脇に置けば自分でできる」などの目標を立てる。そして、実現に向けての支援計画を作り、計画を実施した場合に報酬を加算する方針だ。事業者が加算を得るために入居者に強要することを防ぐため、医者がおむつを外せると判断し、本人が望む場合に加算対象を限定する。
 また、デイサービスの自立支援の具体策では、利用者の身体機能が改善して45メートル以上歩けるようになると15点、車椅子で45メートル以上動けるようになると5点など10の機能が一定期間でどれだけ改善したか100点満点で評価する。そして、全施設利用者のうち、機能が改善したか維持された人の割合が一定以上あった場合に報酬を手厚くする。
 事業者が改善が見込めないと判断した人の利用を断るのではとの懸念があるため、介護の必要性が高い要介護3以上の人の利用割合を一定以上とする方針だ。(転載以上
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このように記事では「おむつ外し」の加算であることが明記されている。しかし実際には11/29の介護給付費分科会で配布された「排せつの機能向上の評価」に関する資料の中で、「おむつ外し」という文言は一切なく、この加算は排泄機能が現状より介護の手かがかからなくなるように計画をし、その計画を実行することに対して加算評価されることとなった。

極端に言えば、排泄機能向上の計画を実行してさえおれば、その結果は問われず、排泄機能向上の目標が達せられない場合も加算算定できる内容である。

つまり朝日新聞DIGITALの2017年11月25日ネット配信ニュースは、結果的に言えば大誤報となったわけである。そのような誤報がなぜ配信されたのか・・・。

じつは25日時点では、この加算は確かに「おむつ外し」を評価する加算という内容で、その内容を掲載した資料が、関係団体に配布されていたのである。朝日新聞は、この資料に基づいて先行してその内容をネットニュースで配信してしまったのである。

しかしこの資料を見た関係団体が、その内容に猛反発したのである。

なぜならその加算案には国のある意図が隠されていたからだ。それはオムツを徹底的に否定し、それを無くさなければならないものとして、介護関係者のみならず国民全体に印象操作を行ったうえで、2021年度の介護報酬改定時に、介護報酬から『オムツ代』を外出しにして給付費を下げるというものだ。

そのため26日あたりから、関係団体の反対運動が活発になり、結果的に厚労省が示した当初案が撤回され、加算要件の中から「おむつ外し」という文言が削除され、その内容も排泄機能の向上に取り組む過程を評価するものとなり、朝日新聞の配信記事が誤報となったのである。

このようにオムツは悪者であるという偏見を生みかねない改正案が修正されたことは良いことだ。オムツは決して必要悪ではなく、暮らしを営むために必要不可欠な介護用品であるし、オムツを外すことだけを目的化してしまうことで、利用者の暮らしの質が低下してしまうことがあるからである。そういう意味で加算案が修正されたことは一安心だが、水面下でこうしたきな臭い動きがあったことを、関係者は記憶にとどめておくべきである。

なぜなら今後の介護報酬改定で、再び「おむつ代」の給付費からの除外を実現させようと、あの手・この手で策略が行わるかねないからだ。

権謀術数渦巻く中で、国民の福祉を護る介護事業者が、財政論の名のもとに、安かろう悪かろうサービスになることを、我々は阻止していかねばならないのである。
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