平成28年度介護経営実態調査の結果、収益率が高いとされた通所介護は、スケールメリットが働き収益率がより高い大規模事業者の介護報酬が適正化の名のもと引き下げられる。

前回大幅に下がった小規模事業者については、今回は引き下げはないとみられているが、しかしサービス提供時間の区分が2時間ごとから1時間ごとに変更される影響により、多くの事業者がサービス提供時間を延長しないと現行より低い単位の報酬区分に変更となる。しかしサービス提供時間を長くするということは、それだけ人件費支出が増えるという意味で、どちらにしても収益は下がる事業者が多くなることになり、引き続き厳しい経営状態が続くことになる。

そのような中で、通所介護の自立支援介護に対する加算としては、Barthel Index(バーセルインデックス:ADL評価法)による一定期間内の利用者の機能回復や維持に対する評価加算案が示された。(参照:通所介護の自立支援介護は、バーセルインデックス評価による加算

今後の通所介護経営を考えると、この加算は是非とも算定せねばならない。ということはすべての通所介護事業所で、Barthel Index(バーセルインデックス:ADL評価法)の概念を知り、その評価法に精通していく必要があるということだ。

ということで今時点で、通所介護の管理者は、来年度以降通所介護事業所の中で、この評価をどの職種の誰が担当し、その業務を担っていくかを決定しておかねばならず、その担当となる職員は、来年4月からすぐに、この評価が可能となる実務能力を身につけなければならない。

どちらにしても来年度からの報酬改定の影響で、Barthel Index(バーセルインデックス:ADL評価法)が介護保険事業の中で、もっともポピュラーなADL評価として定着していく政策誘導がなされているというわけである。

そのためこの評価法に関する研修ニーズが増えることを見越して、それに備えている業界団体も多い。

しかしこの程度の評価法を、わざわざ研修受講して身につけなければならないというのも残念な話だ。Barthel Indexとは、ADLの評価にあたり、食事、車椅子からベッドへの移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段 昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの計10項目を5点刻みで点数化し、その合 計点を100点満点として評価するものであり、さほど難しい評価法ではない。評価表様式を手にすれば、すぐに評価実務ができる程度のものである。

この評価法に対する文献も数多く出されているし、ネット検索するだけで、書式も含めて、その評価法の解説にもヒットする。初めてその評価法に触れる人でも、独学で十分身に着けることができる程度の方法である。研修受講を否定するものではないし、独学知識の確認のために事業所から担当者を受講させることは奨励されてよいが、繰り返し何度も学びに行かせるほどの研修でもないし、誰か一人が一度その研修を受講すれば、受講者による伝達研修で事業所職員全員がその知識を持つことができるものなのだから、基礎知識を備えた後は、事業所内で評価書式を活用しながら、自らの事業所のサービスに適合した評価法へと深化させていくという視点が求められ、外部講師に頼り過ぎることのないようにしていただきたい。

それにしてもこの加算、「機能訓練以外のサービスの提供を担保する観点から、利用者の求めに応じて、定期的 に食事及び入浴介助を提供した実績があること。」という条件付きである。リハビリ特化型デイサービスは加算できないっていうことだ。ある意味、リハビリ特化型デイを国はNOと言っているという意味にとれる。

また個別機能訓練加算も、通所介護の職員だけで立案するのではなく、訪問・通所リハビリテーション、リハビリテーションを実施している医療提供施設の理 学療法士・作業療法士・言語聴覚士、医師が、通所介護事業所を訪問し、通所介護事業 所の職員と共同で、アセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成し、かつハビリテーション専門職と連携して個別機能訓練計画の進捗状況を定期的に評価し、 必要に応じて計画・訓練内容等の見直しを行うことで、従前より高い加算算定が可能になるので、今から協力医療機関の医師やセラピストとの連携訪問等が可能な体制を作っておく必要があるだろう。

ところでこうした状況から、今後の通所介護経営を考えるとどうなるだろうか?

本体報酬(基本サービス費)の引き上げが期待できない中で、今後もアウトカム評価を中心とした加算報酬が収益増の中心とならざるを得ないということは、加算を上乗せできる利用者人員を増やすことで収益を挙げる以外になく、定員が18人で頭打ちの地域密着型通所介護で、収益を出し続けることは難しくなるということだ。地域密着型通所介護単独で、10年続けて職員の定期昇給を行いながら、収益を出し続けるモデルは存在しないということだ。

そうであるがゆえに、現行地域密着型通所介護の経営者・管理者は、いつまでもその規模で、通所介護の経営が続けられると考えるべきではなく、できるだけサービスの品質を高めて、他の通所介護事業者とのサービスの差別化を図り、地域住民から選択される通所介護事業を創りあげて、顧客を確保しながら、事業規模の拡大を目指さねばならない。

地域密着型通所介護〜都道府県指定の通所介護事業所へ指定変更できる、顧客確保を目指し、収益を安定的に確保できる事業規模へ変更していくという視点が不可欠である。

この部分の経営戦略を誤ってはならない。

また単独小規模通所介護事業所の職員の皆さんは、経営者が事業拡大の必要性の認識がない場合、処遇改善加算や、政府パッケージで一時的に給与が上がったとしても、そうした事業所には未来はないので、早急に転職先を探しておく必要があるだろう。
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