医療・介護の総合情報サイト、CBnewsが今朝配信したニュースの中に、【中医協】介護施設の看取りケア要件を見直しへ 〜外部の診療所や訪問看護の参入促すというものがある。
8日に行われた中央社会保険医療協議会で、特養等の看取り期介護に対し、外部の機関による訪問診療や訪問看護を導入して、施設側と協働した場合、診療所や訪問看護ステーションでも、診療報酬を算定可能にすることが提案されたものである。
医政局通知「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」では、がん末期及び看取り介護加算の施設基準に適合している介護施設が看取り介護を行った場合で死亡日から遡って30日間に行われた訪問診療は診療報酬が算定可能であるし、がん末期の医療保険訪問看護も診療報酬の算定が可能である。しかし当該訪問診療や訪問看護について、介護施設側が介護報酬における『看取り介護加算』を算定している場合、診療報酬の在宅ターミナルケア加算及び看取り加算については算定できないというルールになっている。(参照:気づいてる?特養の療養給付変更。 特養入所者への訪問診療と訪問看護)
中医協での提案は、この加算の算定を可能にするものであると同時に、特養等の利用者に、外部の医療機関や訪問看護ステーションから、訪問診療や訪問看護を提供できる条件について、がん末期や、看取り介護加算の施設基準に適合している介護施設が看取り介護を行った場合で死亡日から遡って30日間に行われた場合という条件を緩和し、特養等の看取り介護対象者であれば、原則すべての人に訪問診療や訪問看護の提供を可能にしようというもので、外部の医療機関や訪問看護ステーションと協力しながら、より介護施設での看取り介護の実施を促進しようとするものである。
そもそも訪問診療の「死亡日から遡って30日間に行われたものに限る。」という条件は、実質この訪問診療を不可能にさせている欠陥条文である。なぜなら死亡日は推測・想定しかできない問題で、推測が外れることもあるのだから、いざ終末期で余命いくばくもないからと訪問診療を開始したとして、小康状態が予測以上に続いて30日を超える訪問診療の提供となった場合に、死亡日から30日を超える以前の対応については報酬算定ができないということになるため、訪問診療医はその間、どこからも報酬を得ることができなくなる。そのようなリスクのある訪問診療を行ってくれる医療機関は多くはないだろう。
リンクを貼った記事でも紹介されているが、そもそも医師配置のある特養で、なぜ外部の医療機関の医師の関わりが必要なのかという疑問に対し、診療側委員からは、配置医は非常勤で、入所者の日々の健康管理や療養支援を行う立場なので、看取りへの対応を求められても、外来診療中で対応できないことも多いという説明がされたそうだが、まさにその通りで、利用者の日常の健康管理を行うための配置医師が、看取り介護の際の夜間救急対応や、終末期の緩和ケアの対応がほとんどできないために、看取り介護を行うことができないというケースは実際に存在するので、外部の医療機関や訪問看護ステーションが関わりを持つことができるという選択肢が広がることは悪いことではない。
ただし看取り介護は、チーム内の適切な情報共有と連携が不可欠で、単に外部機関の職員が特養のできない部分を補うということではなく、外部機関の職員であっても、特養内の看取り介護チームの一員として協力し合うという意識が不可欠で、訪問診療医も単に施設職員に指示命令を下すのではなく、利用者が安らかな終末期を過ごすために、特養等の職員が何を目的に何を具体的に行っているのかを理解しながら、そこに終末医療に携わる専門家として、適切な協力を行うという意識が不可欠で、その意識がないと、単に混乱させる私事にとどまり、特養の看取り介護の質は下がってしまうだろう。
どちらにしても2010年と比べ、2030年には我が国の死者数は40万以上増え、そのときに病院のベッド数は減るために、47万人の看取り難民が生まれる可能性がある。
そうならないために、医療機関だけではなく、暮らしの場所で看取り介護ができる体制を全国津々浦々まで作らなければならない。特養等の介護施設も、看取り介護を特別視することなく、日常の介護の延長線上に、ごく普通に看取り介護という時期があり、それは決して特別な介護ではなく、日常介護であると捉え、すべての特養で看取り介護を実施していく必要がある。
現在全国の特養の8割以上が看取り介護を行っているというが、それは単に『看取り介護加算』が算定できると届け出ている特養が、8割以上であるという意味で、本当にそこで誰かの終末期の暮らしを護る、安心と安全が担保された看取り介護が行われているのかは、また別の話である。
本当の意味での看取り介護の実践法を伝えるために、来年度も僕は全国各地で看取り介護セミナーを行うが、夜間の対応や、緩和ケアという部分の医療支援体制に不安をもっているために、適切な看取り介護ができないという施設にとっては、医療や看護支援の提供レベルが高まることにつながる、医療・看護・介護連携の選択肢が広がることは悪いことではない。
要はそれをどう的確に利用して、本来の目的である利用者に対するケアの質を高めていくかということが重要なのである。
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