来年4月からの介護報酬改定時に、従前からある身体拘束廃止未実施減算について、身体拘束のさらなる適正化を図る観点から運営基準と減算幅が見直される。
身体拘束については、介護事業者でそれを行うことは原則認められていないが、生命に危険が及ぶ行為を防ぐ対策として緊急・やむを得ない場合に、一時的な身体拘束を行うことは例外として認められている。
具体的に言えば、介護施設で一番多く行われている身体拘束とは、胃瘻増設者がチューブを引き抜いてしまうために、それを行わないように一時的に手を拘束する行為だと思う。
胃瘻チューブを引き抜く際に、胃壁に傷をつければ生命の危険にかかわるからであり、かつ胃瘻造設者を24時間隙間なく見守り、チューブ抜去という行為を防ぐことが困難だからである。ほとんどの施設で行われている、例外的身体拘束とは、経管栄養に関連した危険行為を防止するための行為であろうと(僕の経験上)想像するのである。
認知症の人が動きまわって危ないから、その行動を制限するために、ベッドから降りられないようにするなどの行為は、例外的拘束としても許されていないので、この部分は勘違いのないようにしていただきたい。
現在は、例外的な身体拘束を行った場合に、「その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない 理由を記録しなければならない。」という規定に基づき、緊急やむを得ず一時的に身体拘束する理由や、実際に身体拘束を行っている状態(時間や場所等)を記録することで1日5単位の減算は免除されることになる。
(※なお実地指導等では、それが本当に一時的な状態であることが確認されるとともに、身体拘束廃止委員会等で、常に例外的な身体拘束もしなくてよい方策が話し合われることが求められている。)
今回の見直しは罰則も重くするという意味で減算幅を大きくする。今は1日5単位としているが、「1日の報酬の○○%(例えば10%など)」という形に改める考えだ。そして従来の記録だけでは、減算対象となり、早急なる体制づくりが求められる。
新たに加えられる要件は以下のとおりである。
・身体拘束等の適正化を図るため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
1.身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急や むを得ない理由を記録すること。
2.身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その 結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること。
3.身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。
4.介護職員その他の従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
なおこの減算規定は、地域密着型介護老人福祉施設・認知症対応型共同生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護にも適用されるが、その3サービスの委員会については、運営推進会議を活用できることになる予定だ。
さて新しい要件を確認しよう。
僕が施設長をしていた特養では、身体拘束廃止委員会を毎月開催して、やむを得ない事情で身体拘束を行っている方についての現況報告として、どの時間帯でどういう状況で身体拘束を行っているのかを報告し、それに対してそれをしなくてよい方策はないか毎回話し合っていた。そのため1と2は、従前からの体制でクリアできるはずである。
3についても、身体拘束廃止に向けたマニュアルを作成していたので、この見直しをかけて、指針として新たに作り直せばよいだけなので、ここの作業も負担といえるほどのものはないだろう。
4については、今のところ頻度は示されていないが、おそらく年1回程度の研修が義務化されると考えてよいだろうが、施設によってはすでにこれも実施されているかもしれない。どちらにしても職員の内部研修は定期的に行われているはずだから、ここのテーマに必ず年1回以上、身体拘束廃止に向けた取り組みについての研修内容を組み入れればよいだけの話である。
そう考えると、この減算ルールは、さほど大きな変更ではないように思え、指針を整備し、身体拘束廃止委員会をきちんと機能させ、定期的に職員研修で身体拘束廃止に向けた内容を組み込むだけで、要件該当するので、くれぐれも未実施減算適用にならないように注意していただきたい。
適用されなければ、減算単位がいくら引き上げられたところで、何も影響がないのだから・・・。
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