骨太の改革の中で社会保障費の自然増を、本来の伸びより半分の5.000億円に抑える政策の中で、診療・介護のダブル改定が行われる。そこでは単価の高い医療費から、単価の低い介護給付費への『付け替え』が誘導されることになる。

高齢者が病気を発症したり、持病を悪化させたりして、入院が必要になったとしても、その入院期間はできるだけ短くして、早く自宅等に退院させ、医療サービスよりも介護サービスを使って地域で暮らし続けることが求められていく。脳卒中モデルにしても、医療リハビリテーションが担うのは、急性期と回復期の一部のみで、それ以降は介護リハビリテーションを使うように政策誘導されている。

そのため次期介護報酬改定では、入退院に関する連携加算が強化される。例えば居宅介護支援費では、入院時情報連携加算について、現行の入院後7日以内の情報提供に加えて、入院後 3日以内に利用者の情報を医療機関に提供した場合を新たに評価するとともに、情報提供の方法(訪問又は訪問以外)による差は設けないこととしている。最も必要となる退院支援に関連しては、退院・退所時におけるケアプランの初回作成の手間を明確に評価するとともに、医療機関等との連携回数に応じた評価を行うことに加えて、医療機関におけるカンファレンスに参加した場合を上乗せで評価することとした。(※1

そのほか医療と介護の連携の強化策として、居宅介護支援事業の運営基準を改正し、入院時における医療機関との連携を促進する観点から、居宅介護支援の提供の開始にあたり、利用者などに対して、入院時に担当ケアマネジャーの氏名などを入院先に提供するよう依頼することを義務づける。(※2

さらに平時からの医療機関との連携促進として、利用者が医療系サービスの利用を希望している場合は、利用者の同意を得て主治医などの意見を求めることとされているが、この意見を求めた主治医などに対してケアプランを交付することを義務づける。(※3

末期がんの利用者に対するケアマネジメントも改正し、著しい状態の変化を伴う末期がんの利用者については、主治医などの助言を得ることを前提として、状態変化に応じたケアプランの変更のたびに、サービス担当者会議の招集を不要とすることなどにより、ケアマネジメントプロセスを簡素化する。(※4

質の高いケアマネジメントの推進として、居宅介護支援事業所における人材育成の取り組みを促進するため、主任ケアマネジャーであることを管理者の要件とする。これには3年間の経過期間を設けることとされている。(※5

公正中立なケアマネジメントの確保策としては、利用者との契約にあたり、利用者やその家族に対して、利用者はケアプランに位置付ける居宅サービス事業所について、複数の事業所の紹介を求めることが可能であることを説明することを義務づける。また、その事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であることを利用者・家族に説明することも義務づける。(※6

訪問回数の多い利用者への対応は、訪問回数の多いケアプランについては、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用といった観点から、市町村が確認・是正を促していくことが適当。ケアマネジャーが、通常のケアプランとかけ離れた回数(*)の生活援助を位置付ける場合には、市町村にケアプランを届け出ることとする。
*「生活援助の全国平均利用回数+2標準偏差」を基準として2018年4月に国が定め、6ヵ月の周知期間を設けて10月から施行する。なお想定としては、生活援助について要介護2で月33回、要介護3で42回などがこれに該当するとされ、生活援助利用者の約2万4千人が対象となるとしている。(※7

障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携としては、障害福祉サービスを利用してきた障害者が介護保険サービスを利用する場合などにおける、ケアマネジャーと障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携を促進するため、特定相談支援事業者との連携に努める必要がある旨を明確にする。(※8

さらに居宅介護支援費に「ターミナルケアマネジメント加算」を新設する。対象となるのは、末期がんと診断され在宅で亡くなった利用者。利用者・家族の同意を得たうえで、死亡日と死亡日前14日以内に2日以上在宅を訪問し、主治医の助言を得つつ、本人の状態やサービス変更の必要性を把握し、適切な支援を行うことを目的としている。訪問により把握した利用者の心身の状態などを記録し、主治医や居宅サービスの事業者に提供することなどが要件とされる。なおケアマネが訪問した後、24時間以内に病院で亡くなったケースも含まれる見通しだ。体制要件として、夜間も連絡を受けられるようにし、必要に応じて柔軟に対応できる体制を整えておくことが前提となる。(※9

さてこれらの改定・改正内容について、ケアマネの某職能団体は、『良い内容だ』と評価しているそうである。特定事業者集中減算を福祉系3サービスだけ限定して残存させたのもこの団体である。(参照:職能団体としてどうなのかと思う某協会のこと

囲い込みを防ぐための、ケアプランの適切性の担保という意味合いからいえばこの方向性はおかしい。もともと囲い込みとは医療機関が、併設の通所リハビリ等に患者を囲い込むモデルから始まっているのだから、これを防ぐ竹には医療系サービスほどこの減算が求められるはずである。しかし実際には、この減算は意味がないと会計検査院が指摘しているのだから、いっそ廃止してしまえばよいものを、この団体の提言によって一部だけ残すという意味のないルールになってしまった。

本日の記事の(※5)もこの団体の要望で実現したことだ。しかし寝ていても資格付与される主任ケアマネが管理者を務めたからといって、どうして事業者の質を担保できるだろう。資格は仕事をしてくれないのだ。

主任ケアマネ資格を取るために、資格付与の講座受講者が増え、しかも5年に一度更新研修を受けることで、国や関連団体は、介護支援専門員から資金を回収するシステムが強化されたという意味だ。居宅介護支援事業者にしてみれば、管理者等がこの資格更新のため、5年ごとに多額の受講料を支払い、決して短いとは言えない期間、利用者支援業務から離れなければならない。効果より損失の方が大きいだろう。

このような国の意向にすり寄るような改定を『良し』とするのは、この団体が国の補助金なしで運営できない『ひも付き団体』である証拠だろう。こんな団体に頼っていては、いつまでたっても介護サービスの場で汗する介護支援専門員の皆さんの意思は、国に届かない。介護支援専門員の地位の向上もない。

こんな団体に支払う会費はムダ金そのものだろう。しかし残念なことに早く目を覚ましてほしい人が、現場には数多くいるのも事実だ。
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