先月25日の介護給付費分科会で公表された、平成28年度介護経営実態調査における『各サービス別の収益率』を表にしてみた。

平成28年度決算における介護サービス事業の収支差率
この表からも明らかなように、全体の収益率が3.3%で、居宅介護支援事業以外はすべてプラスの数字になってる。

調査のたびに赤字続きの居宅介護支援費について、基本単価を引き上げようという動きがない理由は、そもそも居宅介護支援は、併設事業とセットで収益を挙げるモデルであり、居宅介護支援単独で収益を挙げるのであれば、事業規模を大きくして特定事業所加算を算定する必要があるという国の理屈が存在するからである。

このため次の動きは、居宅介護支援事業所の管理者要件を、「主任介護支援専門員」にして、次の次の報酬改定(2022年)では、居宅介護支援事業所について、原則介護支援専門員を3人以上配置する事業所しか認めないという方向で、居宅介護支援事業所の統合化が図られていく筋立てがされつつある。

ところで短期入所生活介護は、なぜ生活と療養が分けられていないのだろう。両者では大きな報酬差額があるので、本来は分けるべきであると思う。

特養と特定施設は広域型と地域密着型が別に示されているが、両者には大きな違いがある。特定施設は地域密着型の方が収益率が高くなっており、特養は広域型の方が収益率は高い。特に特養は地域密着阿多の収益率が、広域型より1.1%も下がり、わずか0.5%の収益率でしかない。これでは次年度定期昇給するだけで単年度赤字に転落してしまう。そんな中で報酬が下げられたらどうするのだろうか・・・。

思えば特養の収益率が高く、もうけ過ぎであるとして「内部留保」が問題となったのは、平成24年度の報酬改定議論からであったと記憶しているが、その改定で特養の報酬を大きく削る根拠とされた平成22年度の介護経営実態調査結果における特養の収益率は13.6%であった。このことを考えると、広域型で収益率が1.6%まで落ち込んだ数字は、まさに国に狙い撃ちにされた結果であるとしか言いようがない。(※ただし13.6%という数字は、収益率の高い施設だけを抽出したねつ造データだとい見方もある。)

地域密着型特養はさらにひどい数字なのだから、今後の介護経営戦略上、広域型特養を経営している法人が、そこにさらに地域密着型特養を新規開設させて経営するというモデルは成立しないことになるだけではく、そんな経営は狂気の沙汰であることを示している。僕自身もかつて、地域密着型特養の指定に手を挙げよという理事者の命令で、経営シュミレーションを行ったことがあるが、何年かけても借入金の返済ができないシュミレーションにしかならず、その指定申請に反対した過去がある。状況はその時よりかなり悪化しており、特養と通所介護と居宅介護支援事業所を1事業所ずつしかもっていない社会福祉法人で、そこに来年度以降、地域密着型特養を新設するという計画の社会福祉法人に勤めている人は、今から再就職先を探し、できるだけ早く新しい法人に移ったほうが良いだろう。

さて全サービスの収益率の平均は3.3%であったが、これは2015年の報酬改定の根拠となった2014年度の調査の結果より大幅に下がっており、前回の介護報酬改定の影響が大きかったことが読み取れる。前回は他産業の収益率5%平均に対して、介護サービス事業者の収益率が8%超であるとして、介護報酬を3%以上削減する根拠になった。昨年度の他産業平均収益率は4%を超えているのだから、それと比較すると介護サービス事業者の収益率は低いのだから、次期介護報酬は下げられないと考えるべきである。

ところが財務省は介護報酬削減ありきの姿勢を崩しておらず、25日の「財政制度等審議会」のでは、介護サービス事業者は中小規模の事業者が多いのだから、他産業との収益率の比較ではなく、中小企業の平均収益率(2.6%)と比べて判断すべきと指摘し、それより利益率の高いサービスの報酬は引き下げるべきと要求した。(上に掲げた表を見て、2.6%より多い収益率のサービスは引き下げが懸念されるという意味だ。)

しかしこの主張は、前回までの報酬改定議論との整合性も何もない主張で、まさに介護報酬をマイナスにするために持ってきたとしか思えない数字と理屈である。これでは介護サービスは、収益を挙げてはならないと言っているようなもので、介護サービス崩壊につながりかねない。

しかし『利益率は総じてプラス。介護保険は税や保険料をもとに限られた財源で運営されている。次の改定で報酬の全般的な引き下げを図るべきだ』(日本経団連・間利子晃一参考人)、『利益率は決して悪くない。今後の財政は非常に厳しく、報酬を引き上げる環境にはない』(健康保険組合連合会・本多伸行理事)、『高齢化が進む一方で『支え手』は減っていく。制度の持続性の確保という視点は重要。保険料もすでに高い水準にあり、適正化できる部分は確実に実施すべき』(協会けんぽ・安藤伸樹理事長)という報酬引き下げの大合唱が上がる中、厚労省は通所介護の大規模報酬と、訪問介護の生活援助の単価引き下げ方針をすでに決めている。

全サービスの同一建物減算と集合減算も、一般の集合住宅にも適用する方針も固め、サ高住や有料老人ホームについては現行の20人以上から10人以上からの適用に変更し、20人以上の減算幅の拡大方針も決めている。

こんなふうにして報酬引き下げ方針が固まりつつある。

次期介護報酬の諮問・答申は来年1月20日前後となるだろうが、そこに続く介護給付費分科会は、さらなる介護報酬引き下げに大きく舵をとっていくことになるのだろうが、国の方針に引きずられて、独自の方針を何も決めることができない介護給付費分科会は、存在意義そのものが問われてくるだろう。

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