このブログでは、認知症の人の運転行為がいかに危険であるかという観点から、免許の返納や周囲の人が運転をやめさせるようにすることが必要であることを再三主張してきた。

そして「認知症でも運転動作ができないという考え方は短絡的」・「正常の運転操作ができる認知症の人もいるので、認知症という診断のみで免許を返納させるのはいかがなものか」などの意見についても、一見、認知症の人の権利を護ろうというかのような印象を与えるけれども、それは周囲に果てしなく危険なものを残存させ、尊い命を事故で奪う危険性をばらまくものでしかないとして、極めて否定的な意見を述べてきた。(参照:認知症診断で運転免許を取り消す法律について

リンクを張り付けた参照記事で、僕の次のように提言している。

・認知症の診断が、高齢者の「生活の足」を奪うことを問題視する人がいるが、そうであれば認知症診断により、運転免許が取り消された高齢者に対し、その情報を地域包括支援センターに送り、関係者が自家用車を運転士しなくなった後の、「生活課題」を話し合って対策するシステムを作ればよいではないか。それが本来の「地域包括ケアシステム」ではないだろうか。

・認知症だからと言って正常な運転ができないわけではないが、その状態ではいつ、判断の衰えで悲惨な事故を起こしかねないのだから、もう運転からは引退して、地域サービスによって生活に必要な移動手段を確保しましょう、ということでよいのではないだろうか。


この提言を受けたわけでもないが、その提言を実現する一歩になるのではないかと思われる国の新たな方針が示された。「免許返納者、買い物弱者に来年度から介護保険で送迎サービス」というものだ。

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読売新聞WEB NEWS 2017年10月02日 14:17配信記事を転載
厚生労働省と国土交通省は、交通機関の衰退した過疎地で運転免許を返納したり、買い物に困ったりしている高齢者らの交通手段を充実させるため、介護保険制度の送迎サービスを活用する方針を決めた。
今年度、介護保険法や道路運送法に基づく指針を改正し、来年度から市区町村が実施する。
送迎は、介護事業者やNPO法人などが、高齢者を自宅から病院や介護施設、スーパーなどへ車で送り迎えするサービス。介護保険制度の介護予防・日常生活支援総合事業の一つで、2015年度から一部の自治体で始まった。
現在の対象は、市区町村から「要支援」と認定された人や、認定とは別に、「一人で外出できない」などと認められた人。乗車距離や時間に応じたガソリン代などの実費相当分として、1回数百円で利用できる。
新たな指針には、これらの高齢者以外でも利用できることを明示。例えば、バスの本数が少ない地域で買い物に困る高齢者や、運転免許を返納した高齢者らを想定している。行き先もスーパーや病院だけでなく、喫茶店や集会所も巡回するなど、自治体がニーズに柔軟に対応できるようにする。利用者負担も、現在と同程度とする予定だ。
厚労省によると、送迎サービスを行っている事業者は昨年4月現在、全国で十数事業所にとどまるが、今年4月、全ての自治体で総合事業の実施が義務化されたため、多くの参入が見込まれている。日々の買い物に困る高齢者らは約700万人に上るとみられる。
また、75歳以上を対象に、免許更新時の認知機能検査を強化する改正道路交通法が今年3月に施行された。16年には75歳以上の約16万人が免許を返納し、今後も増える見通しだ。
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この送迎サービスは、介護保険を財源とするが、【介護予防・日常生活支援総合事業】として実施されるために、要介護・要支援認定を受けなくとも、運転免許証を返納した高齢者はこの事業での移動サービスを受けることができる。これは朗報である。

勿論、その事業は各市町村が独自の基準と方法で実施する地域支援事業だから、市町村間で運用の違い=格差はでてくるやもしれないが、近い将来の事故危険性を感じて運転免許を返納した人に対して、その後の移動手段は自己責任で何とかしなさいという風に放り出して終わりではなく、国として移動手段の確保のための支援策を示したことは大きな第一歩だろう。

あとは地域の事情に応じて、実効性のある高齢者の移動手段の確保、買い物支援策など様々な方策を考えて具体化していくことが必要であり、そのために保険・医療・福祉・介護関係者だけではなく、民間営利企業や地域住民をも交えた、多職種協働・多職種連携が求められている。

そして高齢者の移動手段を伴う生活支援ネットワークを構築していくのが、真に求められる地域包括ケアシステムの姿であると言えるのではないだろうか。

今回国が示した送迎サービスへの保険給付は、認知症高齢者の運転による事故防止の一助にもなるという意味で、高齢者だけではなく、地域住民全体のメリットとして考えられてよいと思う。各市町村は、そのために適切な介護予防・日常生活支援総合事業による移動サービスのシステムを構築していくべきである。

まさにこの部分は、地域行政の腕の見せ所なのである。

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