介護ストレスが利用者虐待の理由にされることについて、僕自身は納得がいかない。

過去に引き起こされた介護事業者における虐待事例では、その原因が介護ストレスであるかのような解説がされたり、加害者自らが介護ストレスによって虐待行為に及んだとコメントする姿が見られたりしている。

馬鹿を言うなと言いたい。介護を職業として選択するということは、介護サービスのプロとして利用者に関わるという意味だ。そこで生じたストレスを理由にして、顧客である利用者に対して虐待行為に及ぶというのは、対人援助に携わるスキルがないという意味だ。そうした人間は、介護という職業に向いていないという意味である。昨日の記事で言えば、その際の虐待要因は、「1.もともと対人援助に向いていない人によって行われる悪意がある行為」というふうに分類すべきである。

ストレスの全くない職業など存在しない。介護という職業だけがストレスと向き合っているわけではなく、職業人であれば、プロとして仕事上のストレスと向き合って、それを乗り越える努力をすべきであり、短絡的にストレスのはけ口を利用者虐待という行為で発散しようとする人間は、どこかが壊れているとしか言いようがない。

それは異常なことであり、本来それは理由として成立しないと考えるのが正常感覚である。

介護のストレスが虐待行為に直接結びつくという論調が正論化すれば、介護という職業が他の職業に比してストレスが異常に多いと思われて、そのストレスのはけ口が利用者虐待に結びつくのも仕方ないと考える風潮が生まれる危険性さえある。そのことのほうが恐ろしいと思う。

大多数の職員は、様々なストレスを抱えながらも、自らの感情をコントロールして、献身的な看護や介護を行っているのである。それはある意味、当然のことではあるが、虐待事件が起きることによって、介護サービスを十把一絡げにして、多かれ少なかれ職員が暴力行為を行っていると見られることは看過できない。

事件として表に出たような許されない行為以外にも、そうした行為が隠されているという意味では、それが氷山の一角といわれることも仕方ないのかもしれないが、そうした氷山とは無縁の介護サービス事業者の方が多数派なのである。マジョリティーは、暴力と無縁の職員であるという事実が存在するのだから、医療や介護の現場で、どうしてこのような虐待行為が発生し、場合によっては繰り返されるのかということを、様々な角度から検証して、少しでもそうした行為の芽を摘む方法を考えていくべきではないだろうか。ストレスという一言で片づけられてよい問題ではないのである。

我々は評論家ではないのだから、「ほかでもやってるのだろう。」とか、「氷山の一角だね。」という感想のみで終わるのではなく、改善の手立てを考える人でなければならないのだ。

そうした内容をメインにしているのが、介護の誇り出版記念セミナー、『感覚麻痺・不適切ケアの芽を摘む 介護施設・事業所で虐待を発生させない、介護サービス質向上の具体策〜ホスピタリティーファーストの考え方。』である。

その中で、「介護サービス従事者のストレス管理」という内容が含まれている意味は、ストレスが介護に直結するという意味ではなく、このセミナーの一番のテーマが、「介護サービスの質向上の具体策」であるからだ。虐待防止は、そのテーマを実現する一方策でしかなく、そのこと自体がメインテーマではない。それとは別個の問題としてメンタルヘルスケアを取り上げているのだ。

高品質なサービスは、サービス提供者の献身とボランティアリズムで成り立ちのではないし、従業者の犠牲の上に成り立つものでもない。そうであるがゆえに、サービスを提供する従業者の働く環境をも整えて、できる限りストレスのない状態で、肉体的にも精神的にも健康に働いてもらうことが高品質サービスを提供する重要な要素にもなる。

対人援助とは、人に向かい合うがゆえに、利用者の感情に巻き込まれやすいという特徴がある。人は人を見つめすぎると間違ってしまう。見つめた人の、いいものも、悪いものも自分に感染って(うつって)しまうからだ。その時冷静なもう一人の自分をきちんと意識して関わって行くことができるかどうかが対人援助サービスに関わる人々に問われてくる。

そういう意味で、ストレス管理も対人援助サービスの品質をあっるするための大事な要素だ。よってこのセミナーの後半部分に、ストレス管理という内容も含んでいることをご理解いただきたい。

日総研出版社主催・「介護の誇り」出版記念セミナー・感覚麻痺・不適切ケアの芽を摘む!〜介護保険施設・事業所で虐待を発生させない〜介護サービス質向上の具体策の詳細と申し込みはこちらからダウンロードしてください。
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