介護サービス事業者による、利用者に対する虐待行為が事件として報道されることがある。その中には、人として許されないような非道で卑劣な行為も含まれている。

多くの介護事業者や介護に携わる人は、そのような虐待行為とは無縁であるし、虐待行為を許されざる行為だと非難する立場の介護関係者が大部分であろうとも、決して少なくない数の虐待事件が報道されることによって、それは介護サービス事業の氷山の一角であるという見方をされている。一般市民のそうした認識自体は、事実として存在している。

そのことに目をつぶり、耳をふさいではならず、事実を事実として認識したうえで、そうした行為をなくすために何をすべきかを考えなければならない。汚いものを見ないように、聞かないようにするだけでは、汚らしい行為が皆無になることはないからである。

そのために僕の新刊本、「介護の誇り」の第1章PRIDE1は、「介護の誇りを穢す闇」として、介護事業者で行われた虐待行為を描き出し、そのことを論評した。

昨日の記事で紹介した、介護の誇り出版記念セミナーのテーマも、『感覚麻痺・不適切ケアの芽を摘む 介護施設・事業所で虐待を発生させない、介護サービス質向上の具体策〜ホスピタリティーファーストの考え方。』としているが、ここでも虐待と言う言葉をあえて使っており、セミナーでも信じがたい虐待事例のいくつかを紹介し、その行為に結びつく原因がどこにあったのかを抉り出したうえで、そうした行為を防ぐ方策を提示したい。

そもそも介護サービスの場で利用者が虐待被害を受ける原因は一つではなく様々である。虐待につながる要因をいくつか挙げるとすれば下記のようなものが考えられる。

1.もともと対人援助に向いていない人によって行われる悪意がある行為
2.感覚が麻痺して、不適切な状態に気づかないか、大した問題ではないと思い込む状態
3.知識がないことによって不適切な状態に気づかない
4.権威のある人に指導されることによって、根拠のない方法を正しいという思い込む状態(洗脳介護)
5.利用者の暮らしの豊かさより、支援者の定めた目的が達せられたかどうかしか評価しない状態
サービス提供側の価値観の押しつけを正しいと思い込む状態


4と5については、その典型例が竹内理論による強制水分摂取によって引き起こされている悲劇だろう。これは関係者が、一日も早く洗脳を解いて、普通の思考回路に戻って、まっとうなエビデンスに基づいた介護サービスの提供に努めなければなくならない悲劇だ。逆に言えば、常に根拠に基づいた介護技術の習得に努め、世間の常識感覚を失わなければ陥らないことなのに、知識と技術のない施設管理者による旗振りによって、日本中の特養で、入所者がたくさん苦しめられているという実態は恥ずかしい限りである。

残念ながら1による虐待も数多く発生している。この要因は教育では防げないことが多いのが問題である。そうであるがゆえに、職員募集の応募者選考は、人材・人員不足ではあっても慎重に、厳しく行うべきであり、試用期間中の適性の見極めにも労力を使うべきである。どうしても介護に不向きな人というのは必ずいるわけであり、そういう人には、適正ではないことをきちんと説明し、他の職業を選んでもらうように導くことも必要である。

ところで前述した虐待要因を見て、介護ストレスが入っていないのはおかしいのではないかと考える人がいるかもしれない。しかし僕は、あえて虐待要因に介護ストレスを入れてはいない。しかしながら介護の誇り出版記念セミナーでは、介護に携わる職員のメンタルヘルスケア・ストレスケアにも触れてお話しする部分がある。それはなぜで、どんな意味があるのか・・・。そのことは明日の記事で触れたい。

日総研出版社主催・「介護の誇り」出版記念セミナー・感覚麻痺・不適切ケアの芽を摘む!〜介護保険施設・事業所で虐待を発生させない〜介護サービス質向上の具体策の詳細と申し込みはこちらからダウンロードしてください。
介護の誇り出版記念セミナー
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