昨日更新した、「介護技能実習生を配置職員とカウントする方針について」という記事の中で、この制度で実習生を受け入れ、配置職員としてカウントすることは、介護サービスの品質低下につながり、介護サービスを、「安かろう、悪かろう化」すると論評した。

しかし勘違いしないでほしいことは、外国人を介護サービスの人材として受け入れることが問題であると主張しているわけではなく、この外国人技能実習制度というものが問題であると言っているだけである。

外国人の方々でも、日本の介護を担える人材はたくさんいて、単に日本で生まれ育った人ではないというだけで、介護人材から排除するような考え方はあってはならないのだ。

例えば、今般入管法改正が行われ、国指定の養成機関で2年以上学んで卒業した外国人が介護福祉士として在留資格を得られるようになった。これによってEPAに基づいて例外的に認めているインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国以外の外国人労働者の方々が、介護福祉士の国家試験に合格し、介護現場で働く道が開かれるわけである。

このことについては大いに評価されてよいわけであるし、介護人材としての期待をもって良いわけである。

外国人労働者を受け入れることに関する議論では、不安視する声も聞こえてくる。例えば外国人に日本のおもてなしのマナーがあるのか?とか、日本語の理解が十分ではないと対人援助の場でのトラブルが増えるのではないかという懸念の声が聞こえてくる。

しかし現在の介護現場の状況はどうなのかと逆に問いたい。

日本人であるにも関わらず、おもてなしのマナーのかけらもない対応に終始する職員がいるのはなぜか。礼儀や言葉遣いを知らないことで生ずるトラブルは、外国人特有のトラブルだとでもいうのだろうか?

先週も北海道旭川市の有料老人ホームで、夜勤中に複数の利用者に暴力をふるって怪我をさせた介護職員が逮捕されている。おもてなしの精神どころか、利用者に対して暴力をふるう職員がいるという実態があり、それは日本人が引き起こしている事件なのである。

その背景には、社会全体の就業者数は、54カ月連続で増加しているにも関わらず、産業別では医療・福祉の就業者数は836万人と9万人減となっており、この分野の人手不足が顕著になっているという実態がある。

介護事業者の職員募集にも、なかなか応募がない現状で、人材不足を通り越して人員不足に陥っているのが介護業界の実態であり、そんな中で事業者は、経験も知識も技術も関係なく、応募してきた人をとりあえず採用するという傾向に陥りやすい。

常に売り手市場の介護職員であるがゆえに、短期間で数多くの職場を渡り歩く人も多い。その中には、介護技術が不十分なままに、虐待と見紛うような行為を繰り返して、職場に居づらくなって次々に職場を変えるような人も見られる。実際に暴力・虐待事件につながる行為に及んでしまう人もいる。

つまり現在の介護現場は、人材の枯渇と人員不足によって、ホスピタリティとは無縁の、マナーに欠けたサービスを生み出してしまっているという実態があり、対人援助に向かない資質の従業者による不適切なサービスが問題になっているのである。

介護事業でのトラブルの多くは、外国人が引き起こしているのではなく、スキルの低い日本人によって引き起こされているという現実を見れば、介護に従事できる人の条件を緩め、外国人にも広く介護の職業の門戸を広げることで、日本人との競争を促すことが可能になり、それによってサービスの質が改善できる可能性は否定されるものではない。

介護事業でのトラブルの多くは、外国人が引き起こしているのではなく、スキルの低い日本人によって引き起こされているという現実を見れば、介護に従事できる人の条件を緩め、外国人にも広く介護の職業の門戸を広げることで、日本人との競争を促すことが可能になり、それによってサービスの質が改善できる可能性は否定されるものではない。

対人援助という職業であるがゆえに、外国人労働者に対して、コミュニケーション能力や文章力、文化の違いによる弊害を心配することは理解できなくもないが、そもそも法改正で、外国人が介護労働に従事しやすくなったとしても、その中で人材を選ぶという事業者側の権利があるのだから、日本人と同様の条件で広く人材を求めながら、介護事業としてふさわしいサービス提供ができる人材を、外国の人々にも求めていくという視点があれば、それらは解決でき得る問題であろう。

利用者が外国人による介護を望まないのではないかという考えも杞憂だろう。今後の介護サービス利用者は、企業戦士としてグルーバルな視点で日本経済を支えてきた人々である。むしろ外国人というだけで、我が国の介護サービスを担う人材としてふさわしくないと考えることは、偏見でしかないことを、対人援助の専門家として我々は訴えていく立場にある。

タイトルに書いたように、外国人という属性が、介護の質として問題となるわけではなく、外国人の方々を、どのような法体系や制度の中で、日本の介護事業人材として受け入れて行くのかが問われているのであり、外国人技能実習制度という枠組みで、外国人の方々を実質介護労働の担い手としていくのは問題点が多いということなのである。


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