次期介護報酬改定の目玉のように唱えらている言葉が、「自立支援介護」という言葉である。

このことに関連して、「自立支援は是か非か」などと論評している関係者がみられる。はなはだバカげた問いかけだと思うし、意味のない論評だと思う。

自立支援を非とするものなどありえず、それは否定されるべきではないからだ。

しかしここで問題になるのは、介護報酬改定で言うところの「自立支援介護」と、本来の意味の、「自立支援」はまったく異なるものだということだ。前者は非常に狭い概念でしかなく、その概念で高齢要介護者の暮らしぶりを評価することは百害あって一利なしである。

自立支援介護については、今後データを集積して、自立支援のエビデンスを作って、それを将来的には介護報酬評価につなげるとされているが、それができるのは早くても2021年(平成33年)の介護報酬改定からであるし、エビデンスが作られるかどうかさえ不透明である。・・・というか無理だろう。

2018年の次期介護報酬では、とりあえず要介護度の改善割合という、非常に限定的な尺度を報酬評価につなげるだけだから、本当の意味での、暮らしの中の自立支援などできない。

介護保険制度の理念の一つは、「自立支援」であることは間違いない。しかし本来の介護とは、自立支援だけを目指すものではない。支援対象者の状態像や、時期によっては、自立支援ではなく、自律支援のほうが重要になる時期がある。(参照:必要なのは自律支援

判断能力の衰えている人に対して、自律支援につなげるための代弁機能=代弁支援が最も重要となることもある。

自立支援だけを切り取って、評価を行うのは、人の暮らしに寄り添う介護の評価にはならないのである。

自立支援介護の礼賛者の中には、竹内考仁氏を自立支援のカリスマのように礼賛する人もいる。

しかし竹内氏が、自分の理論で実践している自立支援介護とは、個別のアセスメントを無視して、サービス提供者側の目的を達成させることだけを求めた「洗脳介護」でしかない。(参照:竹内理論

竹内理論に基づく洗脳介護を推奨していた全国老施協は、すでにその間違いに気づき、昨年厚労相宛に提出した意見書の中で、次のように指摘している。

・特養で利用者の意に反して栄養を投与し、リハビリを重ね、歩行器で歩かせることを強いるような「QOLの向上を伴わないADL回復の目的化」が促進されるリスクが強く危惧される。

・事実上要介護度改善の義務化を課すことは、もはや虐待と言っても過言ではない。


自分たちが「介護力向上講習」の中で推奨していた方法を、舌の根も乾かないうちに全否定する一貫性のなさはともかくとして、ダメな方法論に気が付いて、それを捨てる努力をしていることは評価に値するだろう。

どちらにしても、自立支援介護というフレーズに踊らされ、その実態に気づかずして、竹内理論の礼賛者が増えることがあってはならないし、自立支援介護の名の下で、利用者の希望も表情も無視した洗脳介護が横行することだけは阻止しなければならない。

竹内氏が自立支援のカリスマなどと宣っている輩には、少しは勉強しろよと言いたいところである。


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