「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に 関連する事項等について」では、医療リハビリと介護リハビリの適用関係について次のように定めている。
8 リハビリテーションに関する留意事項について
(1) 要介護被保険者等である患者に対して行うリハビリテーションは、同一の疾 患等について、医療保険における心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管 疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビ リテーション料(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション料」という。)を算定するリハビリテーション(以下「医療保険における疾患別リハビ リテーション」という。)を行った後、介護保険における訪問リハビリテーシ ョン若しくは通所リハビリテーション(リハビリテーションマネジメント加算、 短期集中リハビリテーション実施加算又は個別リハビリテーション実施加算を 算定していない場合を含む。)又は介護予防訪問リハビリテーション又は介護 予防通所リハビリテーション(運動器機能向上加算を算定していない場合を含 む。)(以下「介護保険におけるリハビリテーション」という。)に移行した日 以降は、当該リハビリテーションに係る疾患等について、手術、急性増悪等に より医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定する患者に該当する こととなった場合を除き、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算 定できない。 ただし、医療保険における疾患別リハビリテーションを実施する施設とは別 の施設で介護保険におけるリハビリテーションを提供することになった場合に は、一定期間、医療保険における疾患別リハビリテーションと介護保険のリハ ビリテーションを併用して行うことで円滑な移行が期待できることから、必要 な場合(介護老人保健施設の入所者である場合を除く。)には、診療録及び診 療報酬明細書に「医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日」 を記載し、当該終了する日前の2月間に限り、同一の疾患等について介護保険 におけるリハビリテーションを行った日以外の日に医療保険における疾患別リ ハビリテーション料を算定することが可能である。ただし、当該終了する日前 の1月間に算定できる疾患別リハビリテーション料は1月7単位までとする。 また、医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日として最初 に設定した日以降については、原則どおり、同一の疾患等について医療保険に おける疾患別リハビリテーション料は算定できないものであるので留意するこ と。
要するに同一の疾 患等については、治療のため医療機関外来でリハビリを受け、診療報酬を算定していた場合に、その患者さんが介護保険の通所リハビリテーションなどに通うことになった場合は、介護保険リハビリを利用した日から2ケ月間は、外来リハビリと通所リハビリを併利用して、診療報酬と介護報酬をそれぞれ算定できるが、併用期間の2ケ月を超えた場合は、外来リハによる診療報酬は算定できないので、介護保険リハビリのみの利用となるという意味である。
しかしこのとき問題となるのは、言語聴覚療法である。通所リハビリにしても、訪問リハビリにしても、理学療法士や作業療法士によるリハビリは備わっていても、言語聴覚士が配置されている事業所はそう多くないことから、介護保険リハビリに移行後に、理学療法や作業療法については問題なくサービス利用できたとしても、言語聴覚療法を受けることが難しい利用者がおられる。
地域によっては、医療保険の言語聴覚療法しか使える資源がない場合もある。
そこで当該リハビリの医療保険と介護保険の給付調整について、適用除外や特例がないかと探したところ、千葉県言語聴覚士会ニュース(NO.24 2007年9月30日)に次のような情報が記されている。
言語聴覚療法において医療保険と介護保険の併用が認められる場合について、厚生労働省より日本言語聴覚士協会宛に回答がありましたのでお知らせいたします。以下の通りです。
医療保険と介護保険の併用については原則禁止となっておりますが、言語聴覚療法においては、以下のような運用になりますのでお知らせいたします。(厚生労働省回答)
なお、この件についてはQ&Aとして明記はされていません。
医療保険において言語聴覚療法を実施している疾患が、失語症などの疾患別リハビリテーションの算定日数上限の除外対象疾患であり、当該算定日数上限を超えて疾患別リハビリテーションを行っている場合には、同一の疾患等であっても、
○ 言語療法を医療保険の脳血管疾患等リハビリテーション、
○ その他を介護保険の通所リハビリテーション
を実施することは認められる。
平成20年8月7日付、某県から厚生労働省保険局医療課への疑義照会より。
問.医療保険において言語聴覚療法を実施している疾患が、失語症などの疾患別リハビリテーション料の算定日数上限の除外対象疾患であり、当該算定日数上限を超えて疾患別リハビリテーションを行っている場合には、同一の疾患であっても、言語聴覚療法を医療保険の脳血管疾患等リハビリテーションで、その他のリハビリは介護保険の通所リハビリテーションとして同時に実施することは認められるか。
答.認められる。言語聴覚療法は介護保険ではあまり提供されていないことから、医療の言語聴覚療法と介護の通所リハビリテーションとの併用は可能としてよい。疑義解釈資料 (その7) の問25を介護保険のリハビリテーションに置き換えて準用されたい。
このように国に問い合わせた結果、国としてのQ&Aは出していないが、一定の条件下で、同一の疾患であっても、言語聴覚療法を医療保険の脳血管疾患等リハビリテーションで、その他のリハビリは介護保険の通所リハビリテーションとして同時に実施することは認められるとしているのだ。
その一方で、新潟県はQ&A集を出して次のように回答している。
Q45 .利用者が介護保険のリハビリテーションに移行したものの、事業所に言語聴覚士 がおらず、言語聴覚療法が実施できない場合は、医療保険の言語聴覚療養法を併用 できるか。
A45 .保険医療機関(医療保険)の言語聴覚療法を併用することはできません。 (厚生 労働省老人保健課に確認済み)
このように例外なく、介護保険リハビリに移行後は、言語聴覚療法も介護保険のリハビリとしてサービスを受けることになり、医療保険の脳血管疾患等リハビリテーションとして言語聴覚法を受けることを認めていないというのだ。
そして新潟県も国に問い合わせたうえで、このQ&Aを示していると明記している。
新潟県の回答と、千葉県言語聴覚士会の回答を比較すると、両者は180度違う回答を国の見解として載せている。これによって千葉と新潟のリハビリテーションの給付調整に違いが出ているという実態がある。
介護報酬と診療報酬は国定費用なので、この部分の給付調整にローカルルールが存在してはならない。
国の回答が、問い合わせを受けた担当者によって違うようなことはあり得ないし、この部分は国として統一したルールを示して、全国での取り扱いを統一してほしい。
言語聴覚法は、言語障害に対するリハビリテーションに限らず、食物の口腔摂取に関連したリハビリテーションとしても重要であり、それはとりもなおさず、食物が口腔から摂取できなくなった後のことを考えると、看取り介護・ターミナルケアにも影響してくる重大な問題であり、地域住民が住む地域によって、取り扱いに差があってはならないのである。
一日も早く、国が統一ルールを示してくれることを強く望むものである。
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