全国の特養では25%のベッドに空きがある。そんな状況下でも、新たな特養の建設は続いている。
その時に、特養を新設する社会福祉法人は、きちんとマーケティングを行い、経営シミュレーションを行っているのだろうか。サ高住との競合状況はどうなのか、特養入所のニーズは十分なのかということを、現状分析をして、きちんと状況把握できているのだろうか。
一部の法人の状況を見渡すと、そのことが全く行われておらず、幻想的なシミュレーションで、借入金の償還計画を立てているような実態も見受けられる。
既存施設の空きベッドがスムースに埋まらないのに、生活圏域が異なるとは言っても、同じ地域内に新設する施設のベッドがすぐ埋まるというのは、どういう根拠に基づいているのだろう。既存施設のショートステイの稼働率より、はるかに高い稼働率で収入を見込んでも、それは現実的なシミュレーションといえるだろうか?
職員雇用計画と人件費支出のシミュレーションを見ても、これで運営できるのかという幻想的な雇用計画の法人がみられる。人の配置が極端に少ないシミュレーションは、まだましな方で、数合わせとして半数以上の介護職員を非正規職員で見積もっているような配置が現実的だろうか?雇用情勢を見れば、全産業で人手が足りないのに、待遇が悪いというイメージがぬぐえない介護施設において、正規職員とほとんど同じ仕事をする非正規職員にどれほどの応募があるというのだろう。
そのそもそれだけ人件費の低い非正規職員に頼る経営で、果たしてサービスの質は担保できるのだろうか。非正規職員の教育・訓練体制は整っているのだろうか。
施設を建てれば、利用者が来てくれて、誰が運営しても特養は安泰という時代ではないのだ。広域型の特養を本体として、別の地域に小規模特養(地域密着型特養)を建てて、そこにショートステイを併設すれば収益を挙げられるだろうか。それは極めてのんきで胡散臭い計画である。それだけで借入金を返還しながら収益を出し続けることは不可能だ。小規模特養をメインに経営シミュレーションするなら、もっと多様なサービス提供を視野に入れて、経営スタイルを考えねばならない。
社会福祉法の改正等の動向から、法人規模を拡大して、多角経営にシフトしなければならないという経営戦略は当然あるべきだが、収益構造を無視した事業拡大は自らの首を絞める結果にしかならない。一つ一つの新規事業において、それぞれ収益が見込めるという現実的な経営シミュレーションを行って、そのための目的意識を全職員が持ちながら、それぞれの役割を分担し、専門性を発揮していく必要がある。
市町村の介護保険計画に乗るだけで、施設を建設しても、それがそのまま赤字部門になって、法人経営を危うくするというケースはすでに現実的な話である。
利用者が集まらず経営困難となったサ高住の転売が進んでいることは周知の事実であるが、同じことが社会福祉法人に起こらないという保証はない。社会福祉法人経営者は、このところの危機感を持って、法人経営に必要な手腕を磨いていかねばならない。
同時に介護給付費が増えない中で、営業専属の職員も増やせない状況において、利用者確保の方策を立てていかざるを得ないのだから、今いる職員・職種の中で営業に携わる業務にもシフトを置くという意識改革を全職員に求めていかなければならない。そのためには、全職員に様々な変革が迫られているという現状認識を求め、厳しい時代であるという意識を持ってもらわねばならない。しかしそこでは、きちんとした現状分析と現状説明が伴うものでなければ意識は浸透しない。なんの分析と説明もなしに、経営者が単に「厳しい」・「大変だ」と叫んだところで、その危機意識は現場に浸透するわけがない。
この辺りの理解も、社会福祉経営者に求められるところだ。
僕は経営コンサルタントではないから、現在は直接的に施設の新設に携わってはないないが、あまりに荒唐無稽な計画書を見ると心配になるだけではなく、あきれてしまう。しかもそれが経営コンサルタントが関わって作成されているものだと聞いたら、開いた口が塞がらない。
経営コンサルタントも様々であり、インチキな業者が存在するということだろう。そもそもそういうインチキさを見抜けないで、今後の法人経営は大丈夫なのだろうか。他人ごととはいえ心配である。
どちらにしても、今後は社会福祉法人の倒産や吸収合併が当たり前になるだろう。
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開設して3年目の広域型特養では働いている介護職員です。法人で他に特養や障害者施設、地域包括支援センター等を合計10施設くらい持っています。入所は80床、ショートステイ10床、デイサービスの定員は20(開設時は30でしたが20に変更しています)
入所のユニットは満床、ショートステイも稼働莉80〜90%ですが、デイサービスは開設からいままで30%で来ています。 デイサービスの稼働率の話しをした時に、『他の施設の借金は返し終わっているから大丈夫らしい』と言われています。私がケアマネや介護福祉士会などの勉強会に出るなどして人間関係を作り、営業活動をしたらどうかと世間話の中で提案しましたが、時間外でプライベートの時間なので難しいという感じでした。
実際まわりの他施設もデイサービスは数が多いので、仕方がないとか、辞めてちゃんとしたところを探した方がいいと言われます。
私の考え方は的外れなのでしょうか?
今後、昇進して施設の経営や運営に関わりたいと考えていますがどんな時間の使い方をしたり、どんな情報満載アンテナを立てればよいでしょうか?
愚痴のようなコメントになってしまい申し訳ありません。書籍等読ませて頂き、なんとか前向きな気持ちで頑張れています。ありがとうございます。