公益社団法人「日本介護福祉士養成施設協会」(東京)によると、専門学校や短大など全国の養成校で、2012〜2014年度は年間20人前後だった留学生が、2015年度から徐々に増加し、今年度の入学者7.258人中591人となり、全体の8.1%を留学生が占めているそうである。

この背景には、本年9月に施行される改正出入国管理・難民認定法(入管法)で、在留資格に「介護」が加わり、新たに介護福祉士となった外国人が最大5年の在留資格が得られ、繰り返し更新できることになったことがある。この議論が本格化した2015年から留学生の入学者が増え続けているというわけである。

介護福祉士養成校の入学者は年々減り、学校数やクラス数も減り続けている現状を考えると、介護福祉士を目指す外国留学生が増えて、入学者数が増えてくれることを歓迎しない人はいないだろう。同時にその人たちが、日本の介護福祉士養成校で知識と技術を身に着けて、近い将来日本の介護人材の一翼を担ってくれることを期待する人も多いだろう。

このことを決してネガティブに考える必要はないと思うが、だからと言ってこのことが日本の介護現場の人材不足や人員不足の対策として有効かと考えたとき、甘い考え方は持たないほうが良いという考えに傾かざるを得ない。

外国人留学生は、まじめに介護の勉強をして資格を取ろうとしており、そこに何の疑いを差し挟む必要はないし、多くの留学生が学校卒業後に、日本の介護現場で働きたいという希望を持っていることも疑いのない事実である。

しかしそれらの人々が、そのまま日本の介護サービスの場で主力になってくれるという保証はない。

多くの留学生は、日本の学校で勉強して資格を得て、その資格を生かして日本の介護サービス事業者で働いて、ある程度の技術を身に着けた後は、母国に帰って日本で身に着けた介護知識と介護技術をもって、母国の介護ベンチャーなり、介護リーダーとして働きたいという動機づけを持った人たちである。

出身国の経済事情によっては、日本で3年ほど働いて貯金を貯めれば、母国で一生働いて得られる額の貯蓄を貯めることができる場合もあり、故郷から遠く離れて働き続ける意欲も失せ、貯めたお金をもって母国に帰りたくなるのも人情である。

今までに、EPA(経済連携協定)などにより来日し、介護福祉士の資格を取った人の中にも、優秀で長く日本で働いてくれると期待された人が、その期待を裏切って短期間で母国に帰ってしまっている例もたくさんある。

そういう意味では留学生の介護福祉士養成校への入学者増は、日本の介護事情からすれば、関係者の多くに歓迎されることではあったとしても、人材対策としては、あまり多くの期待を寄せてはならないということになろう。

それよりも、日本で生まれ、日本で育った日本人の若者たちの中で、介護の職業に就きたいと思う人たちをもっと増やす対策が必要だ。そのための啓もう活動が必要だ。それもきめ細かく全国津々浦々で、そういう啓もう機会を設けなければならない。

例えば他業種と比べて待遇が低いと言われている介護の職業であるが、介護保険制度以後、小規模の民間事業者が増えた結果、給料表もない待遇の低い事業所が増えて、全体の平均を押し下げているという実態がある。しかしもともと国家公務員準拠の給与基準を指導されていた社会福祉法人の場合は、現在でもその給与ベースは高いところが多いし、そうした法人が経営する介護事業者の職員待遇は、地域の中の優良企業とそん色のないところも多い。

経営体力にない零細事業者で、パート勤務者が労働者の主力をなしている事業者と、経営体力があって多角経営し、人材豊富な事業者間での待遇格差は、介護業界内部でもあるのだということも含めた情報提供が必要だ。

そうした細かな情報を正しく伝えながら、同時に介護の職業に就いているからこそ得られる充実感や喜びを、経験談や実務論として若い世代に伝えていく必要があると思う。

僕の全国のいろいろな組織・団体から依頼を受けて、そうした人材育成・人材確保のセミナー等で、介護という職業の奥深さや面白さを伝える活動に協力をしているし、今後もそうした活動への協力は惜しまない。

近直では、9月9日(土)北海道北見市の北見工業大学で開催される、「社会福祉法人北見市社会福祉協議会 北見市福祉人材バンク主催 『福祉人材フォーラム』〜福祉の魅力を知ろう!伝えよう! 福祉就職相談会同時開催! 」というフォーラムで、100分間の基調講演「それぞれの生きるを支える〜対人援助職の使命と誇り」を担当することになっている。

ここでは介護という職業の中で得られる喜びを伝え、その社会的意義を伝えたいと思っている。

若者たちが介護の職業を目指すと同時に、今介護サービスの場で働いている仲間が、働く意義や喜びを忘れてし増さないように、働き続ける動機づけを今一度思い出してもらえるように、自分の体h¥県から得た思いを伝え続けたい。

そんなお話でよければ、全国どこでも足を運んで話させていただくので、ご希望者は「北海道介護福祉道場 あかい花」からお申込みいただきたい。


新刊「介護の誇り」出版記念セミナー・感覚麻痺・不適切ケアの芽を摘む!〜介護保険施設・事業所で虐待を発生させない〜介護サービス質向上の具体策の詳細と申し込みはこちらからダウンロードしてください。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・masaの最新著作本「介護の誇り」は、こちらから購入できます。
・「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
・「人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。