総務省が7月28日に公表した、「労働力調査(基本集計)」の2017年6月分(速報)によれば、就業者数は6,583万人と、前年同月比61万人増となり、54カ月連続で増加しているにも関わらず、産業別では医療・福祉の就業者数は836万人と9万人減となっており、この分野の人手不足が顕著になっている。

当然介護サービス事業者も深刻な人手不足に悩まされているところであるが、それを補うための国の対策は的外れなものばかりである。(参照:またも的外れな国の人材確保対策

リンク先を張り付けた記事でも触れているが、介護サービス事業において、特に施設サービスで人員不足が生じている原因は、夜勤業務などを含めた業務負担に比して報酬が低いと思われているためである。

介護職員処遇改善加算などといういびつな報酬体系で介護職員の給与いくばくか上がっても、事業経営を危機的にする介護報酬体系化で、介護事業の将来に不安を感じて他業種へ転職する職員も多い中、常に人手が足りないことで、介護職員の業務量が増え続けることに、現場で働く介護職員が疲弊している現場の状況が、人手不足にさらに拍車をかけている。

滑稽なのは、国が新たに創設しようとする入門資格制度が、介護現場で働く高齢者の健康維持や介護予防につながることも期待しているという点である。

介護の経験がない人を対象にした全国共通の『入門研修制度』を創設したからといって、そのことが高齢介護者の健康維持や介護予防につながるなどという理屈は成り立たないし、そもそも介護現場の人員不足問題が、今働いている職員の健康維持と介護予防が課題とされ、高齢者を高齢者が介護することで解決を図らざるを得ないというふうに考えなければならないことが大問題ではないのだろうか。

そもそも廃止したヘルパー3級資格のような入門研修をなぜ今作らねばならないのか?過去の施策との整合性も問われてくる問題である。

必要とされているのは、補助的業務をこなす職員ではなく、夜勤を含むすべての業務を行うことができる職員を一定数以上確保することだ。そのために若者が介護の職業を選んでくれるという社会的基盤をしっかり整備することだ。

深刻化する介護現場の人手不足問題の背景には、介護福祉士の養成校に生徒が集まらず、養成校の数やクラス数が減り続けているという問題がある。

その原因は過去のネガティブキャンペーンの影響で、介護職員の待遇が劣悪であるかのような、過度なイメージ低下により、高校の進路指導の担当教員が、生徒に介護の職業を勧めないだけではなく、介護職を目指す生徒に、そのことを思いとどまるように進路指導しているという実態がある。

このことにメスを入れる対策がまず必要で、高校の進路指導担当教員に対する、介護側からの正しい情報提供の研修機会などを設けることが一番必要ではないのだろうか。

そのためには巷間で言われているように、介護の職場のすべてが待遇が劣悪であるかのような印象は間違ったもので、給与面を含めた労働環境の整った職場も多いということと、介護の職業に誇りを感じて働いている先輩たちの実例を伝え、進路指導担当教員が自信をもって生徒を送り出せる職場が、全国の介護事業者には数多くあることを伝えることではないだろうか。

勿論その反面として、待遇が低い職場や、ブラックな職場があることも事実で、そのことも一面の真実として伝える必要はあろうが、それは介護の職業のみならず、全職業にあり得ることだし、そうではない職場の実態がマジョリティーであることを正しく伝えることで、介護を職業として選択しようとする若者は増える可能性があるのではないだろうか。

全社協とか、全国老施協とか、福祉医療機構とか、日本介護福祉士会とかで、そういう研修を企画・主催できないものだろうか。

もちろんその際に、僕の協力が必要ならば、その労を惜しむつもりは全くない。是非協力したい。


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