日本認知症グループホーム協会が8/9、会員向けの「権利擁護・虐待防止に関するアンケート調査」の結果を公表した。
それによると「不適切なケア」に及んでしまったケースが「ある」と答えた施設が、全体の60.1%だったと報告している。
※「たまにある」は47.6%。「時々ある」は11.6%、「よくある」は0.9%で、「ない」は37.0%・・・「たまにある」と「時々ある」の違いはよくわかりません・・・。
ここでいう「不適切なケア」とは、強い言葉で利用者の自由を奪う「スピーチロック」や心無い発言、プライバシーの軽視などを想定しており、深刻な虐待の一歩手前の行為としている。
それらの不適切な行為が全体の6割強のグループホームで発生しているというわけだ。しかもそのうち11.4%の施設が、虐待があると報告している。これは由々しき事態である。
このブログ記事で何度も指摘しているが、職員が意識して行う虐待にしても、無意識のうちに行われてしまう虐待にしても、それは日常の何気ない行為の中で、慣れと惰性が生まれることで生ずる、「感覚麻痺」が原因となっており、それは多くの場合、職員の利用者に対する「言葉の乱れ」から発生している。
顧客である利用者に対して、無礼な馴れ馴れしい言葉遣いが、親しみやすさだと勘違いした職員は、顧客に対するサービスマナーを意識することもなく、ため口で日常会話を行うことにより、調査結果でいうところの「心無い発言」が頻発し、それが「心無い行為」につながる例は枚挙にいとまがない。
そんな場所で、利用者に対するホスピタリティの精神など生まれようもなく、いくらサービスの質を上げようと声を高めて定期研修を行おうと、それらはすべてアリバイ作りにしか過ぎない、職員の自己満足に終始するだけである。
僕が唱える介護サービスの割れ窓理論とは、こうした意味のない研修より、日常の実践の質を上げるための実践が何より大切であるという意味で、言葉の乱れが常識ではない感覚麻痺を促進させ虐待に繋がるとして、言葉を正しくすることで心の乱れをある程度までは防ぐ効果もあることに着目して、ホスピタリティの基盤として、職員が利用者に対して日常会話を行う際の言葉遣いを、丁寧語に統一すべきという理論である。
このことが徹底されていない職場では、職員に悪気があるわけではないが、結果的に利用者を傷つける行為が日常化してしまう。しかし「悪気がない」ということは何の免罪符にもならない。
例えば僕が経験した実例を示そう。
その介護施設では、掛け声としてよい介護とか、接遇とか言われていても、具体的に言葉遣いを正しくするという教育が行われていなかったため、職員間で日常の言葉遣いの「差」が激しく、丁寧語で会話ができる職員がいる反面、ため口が当たり前という職員も大勢いて、そのうちの幾人かは、まるで利用者を罵倒するような言葉遣いだった。
そういう職員は、冗談も冗談に聞こえず、ある利用者がトイレ介助を求めたときに、「○○円かかります。」などと言って、利用者を傷つけ泣かせていた。本人は冗談のつもりで言ったのかもしれないが、その言葉で傷つく利用者は、その後、トイレ介助を誰かに頼むたびに、そのことを思い出して嫌な気持ちになったり、職員に声をかけるのをためらってしまったりしていた。これはもう不適切行為というより虐待と言って過言ではない。
いくらカンフォータブルケアという新しい介護を取り入れたとしても、そのことの研修を行ってよい気持ちになっていたとしても、特定の職員だけがそのことを実践するだけで終わっては意味がなく、それ以外の職員の汚い言葉遣いや、乱暴な態度に、深く傷つけられる利用者がいつも存在している実態は、なんのための研修なのかと言いたいところである。
こんなふうに介護サービスの場では、まだまだなくしていかねばならない負の遺産がたくさん存在する。特に利用者を傷つける、配慮に欠けた言動が無意識に行われる状況を何とかせねばならない。
そもそも悪意のない不適切サービスは、自覚がないから厄介だ。そうしたプロ意識に欠ける状況をいつまでも放置してはならない。
まずはすべての職員が言葉遣いを正して、顧客でもある年上の利用者に、ため口で会話することの恥を知らしめなければならない。プロとしても矜持として、言葉遣いに気を遣うスキルを持たねばならない。
そして対人援助の仕事は、自分自身の感情の表し方や感じ方をコントロールしなければならない、「感情労働」という側面があるという理解が必要で、「感情のコントロール」という、意識的かつ持続的な労力が求められることを知らねばならない。普段の生活では、怒りっぽい人でも仕事中は笑顔を振りまかなければならないのだ。それが介護のプロとしての使命と責任なのである。
冒頭で紹介した調査結果を受けて、グループホーム協会の担当者は、「事業者・職員の研修も重要。引き続き力を入れ、さらなる改善につなげていきたい。」と話しているというが、研修内容自体が問題で、ホスピタリティにつながるサービスマナーの教育として、ため口が割れ窓になるという教育をきちんとしなければ何も変わらないだろう。
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