19日に行われた社保審・介護給付費分科会では、居宅介護支援事業所、特養、特定施設の報酬改訂議論が行われた。

議論の中心となったのは、居宅介護支援である。その論点はすでに5日の分科会資料で示されており、以下の4点である。

1.居宅介護支援事業所における人材育成の取組を促進する観点から、居宅介護支援事業所の管理者のあり方についてどのように考えるか。
2.公正中立なケアマネジメントを確保する観点から、特定事業所集中減算のあり方や利用者やその家族に対する説明・同意プロセス等についてどう考えるか。
3.退院後に円滑に必要な居宅サービスを受けられるようにするために、入院時を含めた医療機関と居宅介護支援事業所との更なる連携に向けた取組みについてどう考えるか。
4.末期の悪性腫瘍の患者に係るケアマネジメントについてどう考えるか。


1については、「7/5開催の社保審・介護給付費分科会の論点」で解説した通り、管理者要件を主任ケアマネに限定したい国の意向が強くにじみ出ている。

その根拠として「厚労省の昨年度の調査結果によると、主任ケアマネが管理者に就いているところは全体の44.9%。そうでないところと比較して、事業所内の検討会を定期的に開催していたり、後輩の相談に乗る時間を設けていたりする割合が高い。」と報告されているが、データをどこから求めているのか首をかしげたくなるような理屈だ。検討会の定期開催などほとんどの事業所で行っているだろうし、上司が部下や後輩の相談に乗るのも当たり前のことではないか。ことさら主任ケアマネが管理者の事業所がそれを行っているというデータを出されても、こじつけとしか思えない。

これに対して委員からは、「主任ケアマネには研修を受ければ誰でもなれる。資質や技能のない人を排除する仕組みが必要。」(日本医師会・鈴木邦彦常任理事)という意見も出されているが、国はこの意見を逆手にとって、「主任ケアマネの資格試験導入」の動きを見せている。

管理者を主任ケアマネに限定〜主任ケアマネ資格取得試験の導入と、それに伴う研修の実施〜資格更新研修という形の集金システムがますます充実するというわけである。しかもこうした変更が、居宅介護支援費の額を据え置いたまま行われる可能性が高い。居宅介護支援事業所もしくは、そこに所属する介護支援専門員は、収入が増えないのに義務支出がおのずと増えざるを得ないというわけである。この矛盾が介護給付費分科会の中で全く議論されていないのはどうしてだろう。介護支援専門員の職能団体はいったい何をしているのだろうか?

それとこの問題で、もう一つ気になることがある。仮に居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネに限定された場合(もちろん経過期間は設けられるのだろう)、一人ケアマネの事業所の場合、例外なく主任ケアマネの資格を取得しなければならないことになる。しかし国が主任ケアマネを管理者とするメリットとして挙げている、事業所内の定期検討会とか後輩の後輩の相談に乗るという事柄は、一人の事業所であるがゆえに、事業所内ではその機会はないと言える。そうであれば一人ケアマネ事業所にとって、管理者が主任ケアマネに限定されることは、(仮にその資格取得がスキルアップにつながるとしても)費用負担の増加というデメリットにしかならないわけである。それをどう考えるのかということを見据えると、一部の情報として、「一人ケアマネ事業所は廃止し、統合再編する」という考えがあるとされている。

独立・中立のケアマネジメントを行っている一人ケアマネ事業所にとって、これは由々しきことだ。しかし僕自身も、厚労省の関係者とお話をする機会がある際に、よく聞く話は、「一人ケアマネ事業所が、いくら頑張っているといっても、その人が病気や怪我で、仕事ができなくなったらどうするの」ということである。

このように管理者兼務の一人ケアマネ事業所に対し、国は極めて冷たいのだ。加えて居宅介護支援については、特定事業所加算を算定できる規模の事業所をスタンダードとするために、居宅介護支援費自体の引き上げは行わないという国の基本姿勢が垣間見える。

となると居宅介護支援事業所は、一定規模の事業所に向けて、強制的に統廃合が進められていく可能性があるということだ。この辺りは注視していかねばならない。

2については、特定事業所集中減算の廃止議論が中心であるが、その方向性は支持する意見が多いものの、「何らかの歯止めは必要。より効果的な手段を抜本的に考え直して欲しい」(全国市長会の代表・大西秀人高松市長)という意見もある。このことは市町村のケアプランチェックの強化という形で行政機関の介入強化が図られ、自立支援の名のもとに事業者への縛り強化と介護サービス事業所の選別へとつながっていく恐れがあり、その阻止を図るための行動が求められるところである。

さらに適切なケアマネジメントという部分では、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームで暮らす高齢者のケアマネジメントを適正化する必要性が唱えられている。「自分の施設の入居者を囲い込み、儲けを増やす目的で過剰にサービスを提供している事業者が後を絶たない 」という意見と共に、厚労省は、サ高住などに併設されているケアマネ事業所はそうでないところと比べて移動時間が短いとのデータを提示しており、居宅介護支援費の「集合住宅減算」が新設される可能性が高まった。

3については、診療報酬とのダブル改定なので、さらなる連携強化の加算が、介護・診療両報酬で検討されることになる。

4については、スピード感を持った支援がより求められてくるわけであるが、2号被保険者の場合、がん末期は特定疾病として介護保険サービスの導入が可能という意味で、それは患者にとっては、介護サービス利用=がん末期の告知(宣告)という意味になる。よってこの部分での精神的負担との兼ね合いが必要となり、デリケートな議論とならざるを得ない。がん告知と余命宣告が当たり前になりつつある時代だからこそ、慎重な議論が求められるとことである。

どちらにしても居宅介護支援事業者にとって、さらに規模しい縛りが、介護給付費を据え置いたままで行われるという厳しい方向性しか見えない議論である。
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