医師が常駐していない特養で、看取り介護を行う場合に、死亡診断がネックになっているという施設がある。
義務配置されている医師が常駐ではないからといって、死亡確認に支障をきたすという状態はいかがなものかと思うが、実際に医師が何らかの事情で死亡確認・死亡診断に訪れることができず、長時間遺体を施設にとどめ置いたり、死亡確認のために救急車を要請し、それに死体を乗せて医療機関に搬送する不適切事例も見られる。(参照:看取り介護講演で考えたこと)
そんなこともあってか、自宅や介護施設で患者が亡くなった際の死亡診断を、遠隔地にいる医師が看護師を通じてできるように、厚生労働省が月内にも規制を緩和する方針が示されている。準備期間を経て、九月以降に新制度が始まる見通しとのことだ。
具体的には、医師が遠隔地にいる場合など、日ごろから死亡対象者の訪問看護を担当する看護師等が、患者宅で心停止や呼吸停止、虐待が疑われる外傷の有無など体の状況を観察したうえで、タブレット端末のような情報通信技術機器を活用して画像やデータを医師に報告し、医師はそれを基に死亡診断を行い死亡確認後、遺族にテレビ電話などで状況を説明し、看護師に死亡診断書の代筆を指示するというものだ。
遠隔死亡診断を認める前提として、患者の死期が近いことを想定したうえで、以下の条件にするとしている。
1.終末期の対応を医師と看護師が事前に十分連携しており患者や家族の同意がある
2.医師がすぐに訪問できなことが想定できる
3.看護師が医師の判断に必要な情報を報告できる
看護師が遠隔死亡診断を担当するには、5年以上の勤務実績に加え、3年以上の訪問看護の経験などが必要とすることも検討している。早ければ九月ごろ、希望する看護師に患者の状況把握に必要な法医学分野の研修を実施し、研修後すぐに現場で活動を始めるそうである。
これは多死社会を迎える中で、医療機関のベッド数が減る現状を踏まえ、在宅での看取り介護、介護施設での看取り介護・ターミナルケアをより増やす取り組みの一環である。
しかしこれによって安易に機械的に、遠隔からの死亡診断が行われるようになり、死亡確認のためだけの施設訪問を行わないことを原則にする施設医師が多くなっても困るわけである。
医師が直接遺体を確認しないことで、不審死が深い闇に隠されてしまっては困るわけである。
例えば別事件ではあるが、千葉県の老人ホームに勤務していた准看護師が、同僚に睡眠導入剤を混ぜたお茶を飲ませ、交通事故を起こさせたとして逮捕された事件で、施設に保管されていた睡眠導入剤を含む薬は、准看護師が、ほぼ1人で管理していたことが明らかになっている。
こうしたニュース報道を目にすると、看取り介護・ターミナルケアに唯一の医療専門職として一人の看護職だけで関わって、その職員が死亡診断の実質的な判断にも関わるということに、危うさも感じるのは僕だけだろうか。それは考え過ぎなのだろうか。
どちらにしても死亡診断に対する医師の社会的責任、道義的責任を果たすという意識を重ねたうえで、多死社会における様々な死亡場所に対応した新基準という意味では、このことは求められる対応なんだろう。
現在、死者を救急車で搬送して死亡確認しているような特養は、早急に新基準に備えたシステム作りに取り掛かる必要があるだろう。
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