神奈川・三浦市の特養に入所していた85歳の男性が、肋骨や尾骨の骨折や顔のあざなどを負う虐待を受けた疑いが浮上し、容疑者不詳のまま刑事告訴するとともに、法人および介護担当の男性介護福祉士を相手取って慰謝料など計約1,680万円の損害賠償を求める民事訴訟を横浜地地方裁判所横須賀支部に提訴した。

この件に関する報道記事をリンク先からご覧いただきたいが、リンク先の記事が消える可能性があるので、要旨を抜粋させていただく。
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訴えを起こした男性は、昨年11/24の施設入所。12/24に右目の腫れや左腰打撲のけがをしたということで、ホーム側から家族に「男性が転倒したのでこれから医師に診せる。骨折などはないが、身体中に痛みがあり、車いす生活になるかもしれない。ただしベッドからの転落は今回なかった」といった主旨の電話連絡をしたとされる。そのご医師の往診をうけてホーム生活に戻り、同30日に家族側が男性への面会に訪れようとしたが、「男性の状態が悪い」との理由で会うことを拒否されたという。

今年1月1日になって再び家族が面会に訪れると、車いすに乗ってホーム職員に連れられてきた男性利用者は、両目まぶたや頬・手にあざが出来ていた。男性の状況に驚いた家族側が救急車を呼び、別の病院に緊急搬送。搬送先の別病院による診断では、新たに左右の肋骨計7本の骨折と尾骨骨折、さらに両目・後頭部・腹・背中などが皮下出血していることも確認された。

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そのほか記録の改ざんが疑われる内容などが記事に書かれているが、怪我の程度や部位を考えると、単なるt転倒であるとは考えにくく、暴力的行為が行われていた可能性が高い。しかし被害者である元入所男性は軽度の認知症もあるそうだから、何が起こったかという真実は明らかにされない恐れもある。

しかしそうであったとしても、この施設が不適切運営を行っていることは明らかだ。感染症の発症などの正当な理由もなく、家族の面会を拒否しているからだ。この一点をもってして糾弾されてよいものだ。

恐らく怪我をさせていた事実を覆い隠そうとして、面会拒否につながったものであろうが、生活施設において本人の拒否がない限り、それ相応の正当な理由なく家族の面会を拒むことはできないはずである。「男性の状態が悪い。」との理由は、正当な理由に当たらず、状態が悪いなら、その状態を確認していただくのが、本来必要な対応である。

過去にも面会を拒否するケースについて批判記事を書いたことがある。例えば2006年に指定取り消しになった札幌のグループホームのケースについて、『介護サービスの「割れ窓理論」再び』で論評したが、このグループホームでは、日常的に家族の面会拒否が行われていたことが後に明らかになった。ホーム側の言い分は、「会うと自宅に帰りたくなる。」というものであった。まったくひどい理由だ。このグループホームでは面会を断られ続け、一度も会えないまま、やせ細って入所〜2月に入院したとの連絡を受けたというケースも報告されている。

面会を拒むというホームには、隠したい何かがあると考えてよいだろう。そんな施設やサービス事業所に、大事な家族を任せてはならない。

そもそもこれからの介護経営リスクマネジメントには、組織力の強化が欠かせないが、その組織力とは、組織内部で行われたことを包み隠す力ではなく、すべてを公にして恥じない状態を作り出す組織力である。組織にとって不都合な状態が生じた場合も、その情報を公開して、改善するという自浄作用を高める組織力である。

これからの時代のコンプライアンスとは法令の遵守を含めた「社会的要請」へ応えることである。法令に違反しているのか、いないのか、のみを基準として画一的に考えるのではなく、介護サービス事業者に社会が期待していることに応えられるように事業運営することが生き残っていく事業者につながる。

そのためには法令に精通した管理部門が内部監査等を含めて違法性をチェックするとともに、サービスの質を管理する必要がある。そうした安全と安心の担保がない事業者は、介護給付費が削減される波の中で、利用者の選択肢が広がり、選ばれて使ってもらえる事業者しか生き残れない時代に、消滅の危機に瀕していくだろう。

事業者のビジョンに反する行為や疑いが生じた場合は見過ごさずに素早く対応し、発生した問題とそれに関連する事実を全面的に把握し、その原因を究明して再発予防の是正措置をとるという治療的コンプライアンスの視点がない事業者は、生き残ることができない事業者になっていくのだ。不適切サービスを密室化させる事業者からは、利用者だけではなく、従業者も消えていなくなっていくだろう。

そうならないために、対人援助サービスの使命を感じ、介護業務にプロとしての誇りをもって従事する人材を育てていく必要がある。

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