企業のストレスチェックについて(その1)より続く
メンタルヘルス不調になりやすい性格というものはあるのかという質問を受けることがあるが、その場合、『あるともいえるし、ないともいえる』と答えるしかないように思う。

一般的には、一人で頑張りすぎる人にも注意が必要であるし、几帳面でまじめな人、完璧主義で責任感が強い人は、ストレスを感じやすいタイプといわれるが、それにしてもストレスに耐えられる量の個人差は大きいといえ、性格やタイプだけで判断することは危険である。

よって事業管理者は、従業員の普段と違う状態には敏感になる必要があるし、ストレスチェックを活用して、メンタルヘルス不調を未然に防ぐという視点が必要になってくる。

過去の流れを見ると、1999年に旧厚生省が職場のストレスがメンタルヘルス不調の原因となることを認めている。さらに近年の状況をみると、過労による自殺などの企業の賠償責任を問う裁判が増えるのと同時に、企業側が賠償命令を受ける判例が増えている。つまり自殺やメンタルヘルス不調の責任は会社側=経営層と管理者にあるというコンセンサスが出来上がっているといえるのである。

よってメンタルヘルス不調に対処する3つの意義があると言える。

1.リスク管理→労災申請や訴訟のような事態を生じさせない

2.コンプライアンス遵守→不調者対応のガイドラインに沿った対応を行う

3.損失の最小化→不調者個人と同僚、職場への影響を少なくする


ストレスチェックの義務化は、この意義を具体化する方法論であると感がえるべきである。

さてストレスチェックで高リスク状態と判断された場合は、次のような流れで対策することになる。

(医師・保健師等から)医師による面接指導を勧める→(受検した従業員から)面接指導を受けたいと申し出る→(会社から)医師に面接指導を依頼する→(医師が)対象者に面接指導を実施する→(会社が)面接した医師から意見を聴取する→(会社が)意見に基づいて、就業に関する措置を行う

しかし上記の各段階で、従業員には会社から不利益を受けるリスクが生ずるわけである。例えば医師の意見も出ていないのに、高リスク状態と判定されただけで、降格や配置転換を余儀なくされるようなケースも考えられるわけである。

受検者がそうした不利益を受けることがないように、1.ストレスチェックを受けるかどうか、2.面接指導を申し出るかどうか、3.ストレスチェックの結果を会社に知らせるかどうか、4.ストレスチェックに関する相談をどこで受けるかの4点については、ストレスチェックを受ける人の自由な判断が認められているわけである。

一方このことは、経営者・管理職にとって従業員のストレスチェックの結果がブラックボックスになってしまうという側面があることも事実で、ある日突然、従業員が医師の意見をもとに、休業を申し出るようなケースもあり得ることになるのである。

そうしたことも含めて、ストレスチェックは課題が山積ではあるが、ストレスチェック制度の義務化によって、経営者や管理者には、一部の不調者だけではなく、すべての従業員のストレスの状況やメンタルヘルスに心配りする必要があるという新しい時代に入ったという事実を受け止める必要がある。

そうであるがゆえに、これからの経営者や管理職は、従業員のストレスやメンタルヘルスに向き合い、常に改善を心がけていく必要があることを十分理解すべきである。

その際、経営層や管理者が、不調者対応で心がけることは次の4点である。

(1.ルールを守る→個人判断・個人対応ではなく職場のルールに従う
2.感情的にならない→善悪の判断に偏らず、終始、客観的で冷静であり続ける
3.労務管理の一環として取り扱う→放置せず、当事者意識を持ち、問題を先送りしない
4.日々の対話を心がける→日ごろから従業員や部下との信頼関係を築いておき、もしも不調になった場合に、それに伴う課題と解消努力への共通理解が持てる素地を作っておく


特に2に関していえば、経営層・管理者自身がパワーハラスメントの元凶になって、ストレス要因になってしまうことがあるので注意が必要だ。

7月と8月に、愛媛県老人福祉施設協議会・管理職研修で、『管理職のストレスマネジメント』をテーマにした講演を予定しているが、このことも具体的に話してきたいと思っている。
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