6月21日に行われた第141回社会保障審議会介護給付費分科会において、厚労省は要介護高齢者の自立支援を促すため、心身機能の訓練に消極的な通所介護(デイサービス)事業所への介護報酬を引き下げる方向を示した。
その意味は、個別機能訓練加算を算定していない事業所の報酬を大幅に削減するという意味だから、基本サービス費を事業所規模に関わらず下げたうえで、個別機能訓練加算については、算定要件の見直しを行ったうえで、引き上げるという結論になるだろう。
もともと通所介護については、前回の報酬引き下げ後も、収益率が一般企業より高いとして、特にレスパイトケア部分の単価はさらに下げられる余地があるとされて、その方向性がありきの議論が進められていたので、この結果は予想の範囲ではある。
今回の資料にも記載されているが、社会保障審議会介護保険部会 の意見書(平成28年12月9日)においても、 『通所介護事業所間で見ても、リハビリテーション専門職の配置と 個別機能訓練加算の算定の有無によって、機能訓練の効果(日常生活自立度の変化)に差がみられ た。』と、その方向性を正論化する意見がかかれていたし、、財政制度等審議会財政制度分科会(平成29年4月20日提出資料)において提出された資料 でも、 『機能訓練などの自立支援・重度化防止に向けた質の高いサービス提供がほとんど行われていない ような場合には、事業所の規模にかかわらず、基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化を図 るべき。』とされていたこともあり、今回の厚労省の見解に今更驚いている関係者はいないだろう。
しかし収益率が高いという点についえば、前回報酬改定後に事業撤退した数多くの小規模通所介護事業所の存在を無視したデータ集めというそしりは免れないし、機能訓練効果の有意差についても疑問符が付く。しかしどのような批判があるとしても、基本サービス費の削減方向は変わらないのだろう。
しかも一連議論や、今回の資料を見てわかるように、レスパイトケアの単価を引き下げるのと同時に、レスパイトケア自体は否定しないという矛盾が見て取れる。
どういうことかというと、今回の資料の3ページには、『介護支援の充実を図り、介護をしながら仕事を続けることができる「介護離職ゼロ」に向け、現 役世代の安心を確保することが重要であり、総合的に取組を進めて行くこととしている。』・『こうした中、通所介護の開所時間について、保育所との比較で指摘がある他、仕事と介護の両立 の観点から、一億総活躍社会の構築に向けた提言(平成29年5月10日自由民主党一億総活躍本部)に おいて、通所介護について、 「特に夜間帯のデイサービス提供体制を充実させるため、平成30年度介護報酬改定において夜間帯 の加算措置を十分に検討すること」 とされている。』と書いてある。
つまりレスパイトケアは単価は低くするけれど、保育所並みに時間を延長するという意味で、現在最長7-9の時間単位をさらに長くした区分の単位を創り、延長加算は新区分のサービス提供時間を超えた部分から算定せよという意味である。
場合によっては9-12時間というサービス単位がつくられて、延長加算はサービス提供時間が12時間を超えた場合に算定ということになるやもしれない。これはもうデイサービスではなく、ナイトサービスを含んだサービス事業ということになる。
それでは基本サービス費の単価が下がった分を、機能訓練加算の算定で補ったり、時間延長で収益確保をできるかというとそうたやすい問題でもない。
個別機能訓練課加算を算定しても、小規模事業所の場合最大18人/日であり、上限がそこまでの事業所で、将来にわたって職員を昇給させながら事業運営を続けられるかを考えたとき、地域密着型通所介護として事業運営を継続するには限界が見えてくる。しかも現在個別機能訓練加算を算定している事業所については、そこで収益をアップする方策はない中で、基本サービス費が下がるのだから死活問題だ。
それじゃあ新たに設けられる9-12?サービスと延長加算で収益を確保するのかといえば、そんな長い時間に対応する職員をどう確保するかという悩まし問題が出てくる。現在デーサービスが、施設サービスに比べると人員確保がしやすい理由は、夜勤がない、遅出や早出がないという理由によるものなのに、12時間サービス+延長サービスであれば、これはもう夜勤と変わらない職員配置が必要で、そこまでの職員確保をするためには、人件費は現在の水準より高くなるだろうし、人集めはますます難しくなる。経営母体の規模が大きな事業者しかできないサービスだろう。
それらを考えると、小規模事業者の通所介護経営はかなり限界に近づいていると言わざるを得ない。
従業員の立場を考えると、そこで将来にわたって昇給されながら、事業経営が続けられていくのかを考えると不安しかないだろうから、今から大規模事業者への転職や、他業種への転職を考える人も増えるだろう。そういう意味でも次期改正は、通所介護事業者、とくに小規模事業者にとって極めて厳しいものだと言わざるを得ない。


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家での介護を休むレスパイトケアの効率的な活用と
家を出て生活をするという、閉じ込もり防止を支援
この二つを長く担って来たデイサービスの役割は大きいはずです。
ここに、機能訓練の有無というものを持ち出して、そこだけで評価する理由が分からない
この報酬調整ありきの流れは断ち切らないと、在宅生活の担い手が消えていく事になってしまう。