最近テレビを見ていると「昔は世界とはつながっていなかったけど、近所の人とはつながっていた。」というフレーズを耳にする機会が増えた。

なるほど、確かに以前のほうが近所とのつながりは強かったように思う。そこかしこに『向こう三軒両隣』の関係性が存在していた。

それに比べ現在は、インターネットを通じて世界と繋がっている人が増えているけれど、それらの人々が近所の人とつながっているとは限らない。むしろ隣や向かいの家に誰が住んでいるかを知らない人も多く、逆にそのことを知ろうとすれば、怪しい人に思われかねないのが現代社会といえるかもしれない。

こうした社会で、要介護高齢者が暮らし続けることは簡単ではない。家族などのインフォーマルな支援者がいるならば良いが、一人暮らしの高齢者で、自分が気づかぬうちに徐々に心身の機能が衰えてきた場合、そのことに気づいてくれる誰かが必要だ。

その状態に気づかぬうちに、誰からも知られない場所で、心身状況が悪化し続けて、住み慣れた地域社会で暮らしを維持できなくなる人が増えている。

地域包括ケアシステムは、こうした人々を発見する地域社会を実現するためにも必要なシステムである。

そのために現代社会のような、つながりが途切れがちの地域社会の糸を、結びなおそうという目的も持っているのだと思う。いつ切れるか分からない糸のような細いつながりを紡いでいく先に、決して切れることのない関係という強固な繋がりをつくりあげるのを目的としたシステムでもあろうと思う。

近隣住民がお互いに関心を向けて、そこで何かあった際にしかるべき機関につなげる関係性がないと、高齢者が増え、様々な生活課題と、そのことに対応するためのニーズを持った人々が、住み慣れた地域社会で「暮らしの場」を確保することが難しくなる。そうしないためのつながりが根底にないと、行政中心のシステムは機能しなくなる。

だから本来このシステムの主役は、地域住民であるはずだ。

しかし医療制度改革や介護保険制度改革で高らかに唱えられる地域包括ケアシステムの構築に必要とされる、保健・医療・福祉・介護のネットワークに、地域住民の姿が見えてこないことが多い。それは本来まずいことだろう。

そういう意味では、今後求められる地域ネットワークには、多職種連携だけではなく、職種を超えた多住民連携の視点も求められるのではないだろうか。

少なくとも住民代表の立場である、町内会などをどのように巻き込んでいくのか、あるいは住民活動に興味を持つ人が、地域ネットワークに参加できる機会を、どのように確保することができるのかということが、『地域ケア会議』等の議題になるべきである。

そこに力を注ぐだけで、地域の社会資源は増える可能性がある。

なぜなら地域包括ケアシステムを支える力の一つは、住民同士がお互いを支えるという力だからである。

住民同士のそうしたつながりを、どのようにつむぐのかが大きな課題だ。

そしてそのときに注意が必要なことは、インターネットで様々な人と繋がっている人が、必ずしも人とつながることを得意としているわけではないということだ。ネット上の仮想世界で饒舌な人が、実際の人間関係の中で、コミュニケーションが上手にできない場合もある。チームワークが必要な機会に参加する経験が少なく、自分や他者の役割りが理解できない日ともいるだろう。

そういう人たちをも排除せず、どう導くかが専門職に問われてくるのだろう。そのためには、専門職であっても、一地域住民であるということを忘れずに、住民目線でものを考える必要もあるだろう。

専門職である以前に、地域住民として、他の地域住民とつながりを持つという意識も必要なのかもしれない。

人と人のつながりが、地域を変えることを信じて、その繋がりを尊く思うことから、真の地域包括ケアシステムは始まるのではないだろうか。

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