多職種連携が機能するために必要なことより続く)

多職種連携は、協働作業のための連携なので、チーム内での協力が必要になる。

しかし協力とは、誰かの力を借りる前に、自分の担当領域を自分自身の力でしっかりカバーするという前提によって成り立つ。その上で自分と異なる専門性をもった人に、自分がカバーしきれない領域のコンサルテーションを受けるという意味として協力を仰ぐのである。

連携してより良い方法を手に入れるために、他の専門職の力を借りるという意味は、自分がすべきこともせずに、人の力を借りるという意味ではないことに注意が必要である。

※コンサルテーションとは、異なる専門性をもつ複数の者が、援助対象である問題状況 について検討し、よりよい援助の在り方について話し合うプロセスをいう。対人援助におけるコンサルテーションとは、ある専門職が、関連機関や関連領域の他の専門家等に的確な情報と意見を求め、援助に役立てることである。

そうであればチームメンバーは、自分以外の専門職の領域についても、ある程度の知識を持っていなければならない。他職種や他領域のことをまったく知らないと、所属意識の弊害が発生して、思考が自分の専門領域のみの利益に偏る恐れがあるからだ。

そういう意味では、「自分のことを他のメンバーにわかってほしい」と思ったり、「自分のことを他のメンバーがまったく理解してくれない」と嘆く以前に、「自分が他のメンバーの役割りや思いを理解しよう」とすることが重要となる。

そうしないと意見の食い違いの原因を、相手の理解不足だと決め付けてしまい、共通する価値観や目的、目標を捉える議論にはならないのである。それは新しい要求に応じられない状態を生み、「慣れた仕事の手順だけを続けたい」という保守的な考え方から抜け出せない状態を生む。

医療職や看護職が、チームメンバーである介護職員に求める要求として、「医療分野の専門家とコミュニケーションを図れるようになってほしい」という意見が多いが、それは介護職員に対する上から目線と捉えるのではなく、介護職員に自分たちの役割りを理解してもらう前提として、最低限の医療知識や看護知識は必要とされるという意味でポジティブに捉えてほしい。

分からないことは聞けばよいのだ。その替わりに一度尋ねたことはとことん理解できるまで疑問を正し、理解して忘れないように努めることだ。その際にあまりにも分かりにくい専門用語があれば、「利用者やその家族は、そのような用語は理解できないと思います。」というふうに、利用者の立場から代弁することがあっても良いだろう。

ところで対人援助チームの連携に際して、チームの中で介護職の役割りは何かと考えたとき、介護職の立場はなかなか難しいことが分かる。

なぜなら医業は医師ではないとできないし、医療行為は医師や看護師等しかできないが、介護は誰が行っても良い行為である。その中で専門性を探すのは難しいとも言える。

勿論、介護ができることと、介護技術に長けていることには大きな違いがあるし、介護知識や介護技術に長けていることは、介護の専門性であるといってよいとは思うが、それは目に見えにくいものである。

そうであるがゆえに介護職員のチーム内での役割りを考える場合、しっかりとした介護技術を持っていることを前提として、さらに他職種から期待される役割りを意識する必要がある。

他職種連携チームの中で、医療職・看護職が介護職に求める役割りは、しっかりとした介護技術を基盤にした身体介護と生活援助(家事支援)のみならず、「家族や他の人には言えないことを引き出す能力」であったり、「その人の今を深く知る他者、声を拾う専門職」・「細かな変化に気づける観察力」・「他職種(医師、PT、看護師等)が知りたいと思うことを、介護を通じて情報収集すること」であったりする場合が多い。

つまり他のメンバーは介護職に対して、「利用者の一番近くで気づく人」という役割りを求めており、利用者の真情を代弁することを求めているわけである。

勿論、利用者の代弁機能は、連携チームメンバーのすべての人が意識すべき大切な機能であるが、介護職は他の職種と比べ、利用者と密接にかかわる場面が多い職種であるがゆえに、他の専門職が気づかないような利用者の訴えや思いをくみ取り、それを本人に代わって周囲に伝えていくような行動が、他の専門職からより強く求められるわけである。

その期待に応えることも、介護職の専門性を発揮するということにつながるのではないだろうか。

なぜなら介護職とは「暮らしを支援する専門職」であり、暮らしの中でのちょっとした微妙な変化に気づくことが出来、利用者の「声なき声」を聞く事が出来る職種だからである。そしてこのような介護職員の「声なき声を聴く利用者の代弁者」としての役割は、対人援助の連携チームの中では非常に重要ではないかと思われるのである。

利用者の一番近くで気づき代弁する専門職。それが多職種連携において介護職員に求められるのではないだろうか。

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