保健・医療・福祉・介護の分野で、多職種連携が求められる理由は何だろう。
医療機関に求められるものが、急性疾患の治療のみであれば、病気の治療は医療機関完結型となり、医師を中心にした医療機関内のメンバーだけで問題は解決する。そうであればことさら多職種連携が求められる理由はなくなるだろう。
だから感染症や急性期疾患で多数の死者が出ていた時代であれば、医療機関で疾患を治すことが最大の課題で、多職種連携は主要な課題にはならなかった。
しかし現代社会は、感染症や急性疾患で簡単に死ぬような時代ではなく、長寿化がすすみ高齢者の数が増える中で、医療ニーズも多様化し、生活習慣病を含む慢性疾患を抱えて生活する人が増えている。
例えばインスリンの自己注射が必要な糖尿病の高齢男性が、一人暮らしもしくは病弱で高齢の妻との二人暮らしである場合、医療機関に定期通院していたとしても、それだけでこの男性の疾病管理が可能になるだろうか。それは極めて難しいことだろう。
ましてや慢性疾患を持つ高齢者の暮らし全体を支える視点が必要とされるとすれば、一領域の専門家のみの関わりでは問題が解決しないケースが増えてくる。
高齢化が進行し、慢性期疾患の対応が求められる社会では、医療支援と生活支援の区別がつきにくくなるために支援領域が大きく広がらざるを得ず、一人の専門職での対応というのは現実的に不可能となるのである。そのため関連する多様な機関や職種の連携による、協働が求められてくるのは当然の帰結といえるわけだ。
その状況に拍車をかけているのが医療制度改革である。
例えば平成26年度からの診療報酬改定では、病床区分の変更が行われ、急性期病床と回復期病床及び慢性期病床の区分の明確化がされただけではなく、入院期間の短縮と、一定割合以上の在宅復帰率の達成が求められた。28年度の診療報酬改定では、急性期病床からの在宅復帰率が75%〜80%に引き上げられもした。
つまりこれからの社会では、疾病を完全に医療機関で治してから退院するという考え方ではなく、疾病を抱えた高齢者を地域で支えるという考え方が求められているわけである。
そのためのキーワードが、「病院完結型の医療から地域完結型の医療へ」であり、「治す医療から、支える医療へ」ということになる。
このように入院しても円滑に退院が可能となる仕組み必要とされ、医療が必要な高齢者についても、可能な限り地域で生活できるよう支える仕組みが必要になるわけである。その仕組みが、「地域包括ケアシステム」である。
地域包括ケアシステムとは、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみな らず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常 生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制なのだから、ここには医師や看護師、セラピストやソーシャルワーカーなど多様な職種のかかわりが求められてくる。
当然介護の専門家も必要とされるわけである。それはある意味、利用者の日常の暮らしを支えるという意味で、大変重要な役割りを持つといえるだろう。
そこでは介護福祉士などの資格が求められるわけではなく、介護の専門職としてのスキルが求められてくる。
では多職種連携が機能するためには何が必要だろうか。
また多職種連携ににおける介護の専門職に求められる役割りとはなんだろうか。必要とされるスキルとはなんだろうか。
そんなことを明日以降、記事にしてみたい。
(明日に続く)


日総研出版社主催・看取り介護セミナーのお申込みは、こちらからダウンロードしてください。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
新刊・「介護の誇り」好評発売中。
「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
「人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。)