僕は昨日の勤務をもって老健実務から卒業したが、約一年間老健施設で実務を行う機会を得たことで、老健という施設の実情・実態を理解できただけではなく、特養という施設を外から見ることによって、特養に対する見方も変わったような気がする。

特養が暮らしの場として、老健より優れた面が多々あることが改めて理解できたが、その反面、暮らしの場とか生活施設という冠に胡坐をかいて、日がな一日天井を睨んで暮らす生活を利用者に強いている特養もあったりする。そこに本当の意味での暮らしはあるのだろうか?

そう考えると、介護施設を選ぶ際には、施設種別だけで選択するのではなく、個々のサービス内容を精査して選ばないとベストの選択には結びつかいことを改めて強く感じている。そうであるがゆえに、今後特養の経営にかかわっていく際には、誰からも選択される高品質なサービスを提供できる暮らしの場を目指そうとする一人一人の職員の意識づけが大事になると、改めて強く感じている。

ところで老健は、在宅復帰を目指すリハビリ施設であるが、実際には在宅復帰が難しく、サ高住やグループホーム、特定施設、特養などへ入所する間のつなぎの施設として利用されているという側面がある。

よって老健から特養へ入所する際の調整業務も多くなるわけであるが、その際に法令ルールに沿っていない、特養側の勝手なルールの押し付けと思われる場面に遭遇することがある。

例えば日常の移動に車椅子が必要な人であっても、自分専用の車いすを持っているとは限らない。老健に入所している人の場合、老健の備品である車椅子を使っている人が多いが、特養に入所する際に、個人専用の車いすを持参するように求められることがある。これは明らかな法令違反である。

一般型の車いすは、介護用品として施設側が備えおく必要があり、数が足りないから持参させるなどは許されていない。個人専用の特殊な車いすが必要な場合は、個人負担で車いすを購入・持参していただいても良いが、それ以外の理由で、車いすの個人購入やその持参を求めることは許されていない。このような基本的なルールをなぜ護ろうとしないのか、それともそのようなルール理解がないというのだろうか。

どちらにしてもこうしたやり取りを行う調整役は、相談援助職であり、施設の頭脳ともいえる相談援助職が、ルールを無視したり、ルールを知らずにおかしな取り扱いを押し付けたりするのは恥ずかしいことである。

このことは老企第54号通知で考え方が示されているが、この内容をさらに詳しく解説した北海道の通知文によれば、徴収できない費用例と、徴収可能な費用例が以下のように示されているので、参考にしていただきたい。

保険給付の対象に含まれるものの具体例 (徴収不可) 】
・車椅子、歩行器、杖、ポータブルトイレ、しびん等
・寝具類(ふとん、シーツ類)、失禁シーツ、エアマット、体位交換用クッション等
・おむつ、おむつカバー等
・食事用・介助用のエプロン、おしぼり、ティッシュ等
・清拭タオル
・私物以外の洗濯代(おむつ、寝具類に係るもの等)
・おやつ代(入所者全員を対象に提供するもの)
・機能訓練に係る材料費等
・健康管理費用(定期健康診断等)
・通院の際の交通費
・行事関係経費(レクリエーション、入所者全員が参加する定例行事等)
・作業療法等機能訓練の一環として行われるクラブ活動
・教養娯楽関係(談話室にあるテレビ、ビデオ、カラオケ、CD等の設備及びソフト、新聞、雑誌等)

その他の日常生活費の具体的な範囲について徴収可能
・入所者の希望によって、身の回り品として日常生活に必要なものを施設が提供する場合に係る費用
・入所者の希望によって、教養娯楽として日常生活に必要なものを施設が提供する場合に係る費用
・健康管理費(インフルエンザ予防接種に係る費用等)
・預かり金の出納管理に係る費用

その他の日常生活費とは区分される費用(サービス提供とは関係のないもの)※その他の日常生活費とは別に徴収可能
・冷蔵庫、電話、テレビ使用料
・個人専用の家電の電気代、電話代
・洗濯機、乾燥機使用料(コイン式)
・クリーニング代(業者への取り次ぎ)
・嗜好品(菓子、酒、タバコ等)
・個人用の新聞、雑誌等
・入所者(個人)の趣味活動に係る材料費等
・希望者を募り実施する旅行等の実費

以上である。基本法令は理解した上で、しっかり守らなきゃあだめだからね。齟齬を指摘したり、変えるためのソーシャルアクションが受け入れられるには、法令を守ったうえでのアクションが必要になることを忘れてはならない。

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