4月26日に2018年度介護報酬改定に向けた議論をスタートさせた社会保障審議会・介護給付費分科会は、今後月2回のペースで議論し、12月中旬には報酬・施設基準についての基本的な考え方をまとめる予定とされている。

来年の報酬改定時に、僕は再び特養の業務に携わっていると思われ、特養の報酬体系がどうなっていくのかが気になるところである。

今のところ議論されているのは、看取り介護を実施していない(看取り介護加算を算定していない施設という意味)特養が、約1割ある原因を精査しながら、全ての特養が看取り介護に取り組むための環境整備が議論されていく。

看取り介護については、僕自身がそれをテーマに全国で講演を行っているという経緯もあり、その議論の行方に注目するとともに、それに対して積極的に意見を述べていきたいと思う。僕は新しい環境で、看取り介護の実践の取り組みにも関わっていくことになろうと思え、そこで安心と安楽な人生の最終ステージの生き方がどうあるべきかを問い直していく所存である。ここは大いに力を発揮したい部分である。

また特養が原則要介護3以上の方を受け入れる施設になっていることで、医療依存度の高い利用者が増えていることを踏まえ、特養の医療の在り方が議論の俎上にのぼってくる。平成30年度は、診療報酬と介護報酬のダブル改定なのだから、例えば特養への訪問診療のあり方のルールが変えられ、現行では末期の悪性腫瘍と死亡前30日のみしか認められていない特養利用者の訪問診療について、対象範囲の拡大が検討される可能性がある。(参照:特養利用者に対する訪問診療問題に決着

ただし特養への外部医療の導入拡大については、指揮系統の混乱や過剰な医療提供を回避するため、認めるべきではないとの意見もあり、今後の議論が注目されるところである。

そのほか総論部分で、2018(平成30)年度介護報酬改定から、自立支援に向けたインセンティブを検討するという部分が気にかかる。

第7回未来投資会議(平成29年4月14日) 資料5 厚生労働大臣提出資料では、「科学的介護の実現」として、科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護を実現するため、科学的分析に必要なデータを新たに収集し、世界に例のないデータベースをゼロから構築し、データベースを分析し、科学的に自立支援等の効果が裏付けられたサービスを国民に提示するとしている。

高齢者個々人に関するデータとしては、従前から収取している• 要介護認定情報 • 日常生活動作 (ADL) • 認知機能• 介護サービスの種別に加え、あらたに• 身長、体重 • 血液検査 • 筋力、関節可動域 • 骨密度 • 開眼片脚起立時間 • 握力計測 • 心機能検査 • 肺機能検査• 医療、リハビリテー ション、介護の具体 的なサービス内容を取得し、国立長寿医療研究センター等の研究機関を活用して、 サービスが利用者の状態に与えた効果を分析したうえで、科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護の具体像 を国民に提示するとしている。

具体例として、脳卒中に伴う左脚の 麻痺により3m しか自力で歩行できない人が、杖を用いれば20mの歩行が可能になるにはどのようなサービスが有効か科学的に分析、提示し、介護報酬上の評価を用いて、科学的に効果が裏付けられたサービスを受けられる事業所を、厚生労働省のウェブサイ ト等において公表するとしている。

しかし本当に「科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護の具体像 」を示すことが可能になるのだろうか?医学的リハビリテーションエクササイズの効果も、人によって様々な結果につながり、万人に等しい効果が示されているわけではないと思え、ここをどう標準化するのかがはなはだ疑問である。

まさか「科学的介護」というものが、あの悲惨な状態を生んでいる竹内理論とされるわけではないのだろうな。そうなったら介護の世界は真っ暗闇である。

人の自立を要介護度の軽度化という現象でしか評価しない矮小化が、この部分で行われないように監視する必要があるだろう。

どちらにしても、ますます複雑でわかりにくい報酬体系になる方向に議論が進んでおり、関係者の悩みは深まるだろう。困った問題である。

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