規制改革推進会議が25日の会合で、次期介護報酬改定で「混合介護」を認めるために、「生じ得るデメリットを極小化する制度上の工夫」として次の4点を提案した。

・多職種によるアセスメントを経たうえでのケアプラン策定を促進する
・ケアマネジャーが自立支援・重度化防止の観点を踏まえて保険外サービスをケアプランに位置付ける
・事業者が契約時に説明すべき事項や契約解除について留意すべき事項を明示する
・苦情処理の体制などについての一定の条件を満たした事業者のみに保険外サービスの柔軟な組み合わせを認める


混合介護とは、介護保険給付対象サービスと保険外サービスを同時一体的に提供しようというものだ。例えば訪問介護で、要介護者の生活援助(家事援助)を行いながら、同時一体的に要介護者以外の家族の食事や掃除等を行い、「介護報酬+保険外の自由設定価格」の料金を徴収するという形が考えられている。

高齢者夫婦世帯で、妻が要介護状態で食事作りができず、介護を必要としない夫に家事能力がない場合がある。この時食事作りなどは、妻の分だけ別に作るのは食材費や光熱費を考えると決して合理的とはいえず、夫の分も同時一体的に作ることのほうが合理的なわけだし、そのことでヘルパーの手間が増えるわけではない。

その際に混合介護が認められておれば、夫の食事作り分については、+α(保険外の自由設定価格)として保険サービスに上乗せできるわけだから、介護報酬が下げられる状況が続いている事業者にとっては、新たな収入源となり歓迎する向きもあるだろう。

もともと混合介護が提唱されるようになった理由は、超高齢社会の中で多様化する高齢者のニーズのすべてに、介護保険制度が対応できるわけではなく、保険外サービスを上手に使うようにしないと、必要なサービスを受けられない人がたくさん出てくるという意味だ。

保険外サービスを、保険給付サービスと一体的に提供できるようにすることで、きめ細かい高齢者ニーズに対応したサービス提供が可能になるという理屈である。

しかし口当たりのよい言葉に踊らされていると馬鹿をみるのがこの制度である。

混合介護の推進の先には、混合介護で対応できるのだから、生活支援(家事援助)はすべて保険外にすべきであるという理屈が透けて見えるのだ。

軽度者の通所介護もしかりである。買い物サービスを保険給付の通所介護と一体的に提供する事業者が増えていくと、そのような買い物支援に時間をかけている部分に保険給付されて良いのかという理屈がひねりだされ、それは趣味的活動に近いからと給付除外されていくのである。

このように、財源に限りがあるという理由で保険給付サービスをどんどん削るための方便に、混合介護が使われかねない。

そもそも現在でも、お金さえ出せば保険外でサービスは利用できる。そうであるのにわざわざ混合介護という形で、保険サービスと同時一体的に提供できるようにしようというのは、一つには事業者の収入を保険外で確保するために、人員配置を増やさず合理的方法でサービス提供できるように考えられたものであろう。

同時に混合介護という新たなサービス体系を創造することで、給付削減という国民批判を避けるのが目的である。

強制加入で掛け捨て保険料を支払う義務を国民に負わせている介護保険制度であるにもかかわらず、要介護認定を受けただけではサービスが使えないという批判をかわすために、使える保険サービスと一体的に保険外サービスを使えるようにして、保険外の国民負担増という印象をぬぐい、なにか新しい形のサービスが生まれた印象を与え、それは国民にとっての利益であるかのような心理に誘導しようというものだ。

今回示されたデメリット極小化案にしても、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの仕事を増やすだけで、実質効果の期待できるものはなく、「保険外サービスを使える人ばかりが優遇される」・「お金のない高齢者にサービスが行き届かなくなる」という批判に応えられる対処法とはなっていないといってよい。

ただ、混合介護を推進する考え方には、限られた財源の中だけのサービスから得る収益では、事業経営が難しくなるから、それ以外の収益を得られる方策を事業者に与えるというものもあり、そうした考え方には一理あるといってよく、デメリットをどう克服していくのかという議論は続ける必要があるだろう。

厚労省は、公の会議等では混合介護について慎重姿勢を示しているものの、省内には推進派もいるといわれており、今後どう折り合いがつけられていくのか注目する必要がある。

混合介護の案の中には、訪問介護員を特定の人が派遣されるように指名した場合や、サービス提供時間を指定した場合に、「指名料」、「時間指定料」を徴収できる案も浮上しているが、それはともかくとしても、保険外サービスを保険給付サービスと一体的に提供することで、利用者ニーズに対応したサービス形態に近づくケースもあると思え、自己負担できる人とそうでない人との格差などを含めた建設的議論が必要だろう。

どちらにしても国民ニーズと混合介護が、どうかみ合っていくのかが課題となろう。

日総研看取り介護セミナー
日総研出版社主催・看取り介護セミナーのお申込みは、こちらからダウンロードしてください
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。