平成27年の介護保険制度改正では、特養の入所条件の厳格化として、入所対象者を原則要介護3以上とルール変更した。

しかしこのルールには例外があって、要介護1と2の対象者でも、一定の要件に該当する場合は、特例入所として、入所を認めることになっている。

その要件は以下のいずれかに該当する場合である。

・認知症で日常生活に支障をきたす行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられる

・知的障害・精神障害などを伴い、日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられる

・深刻な虐待が疑われることなどにより、心身の安全・安心の確保が困難

・単身、あるいは同居家族が高齢、または病弱で支援が期待できない。かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分


しかし市町村によっては、このルールがまったく機能していない状況がみられる。場合によっては、入所申込の段階で、要介護2以下であるという理由だけで申請を受け付けず、特例入所の検討もしていない施設も見られる。それは運営基準違反である。(参照:特養へ入所できる対象者の変更について

こうした不適切な申請不受理が行われている理由は二つあって、利用者確保に困っていない地域では、給付費単価が低い特例入所対象者を忌避する傾向があることと、そうでない場合は、そもそも特例入所ルールの理解が十分ンされておらず、特例入所を判断するシステムが機能していないということだろう。

そのような背景があり、特例入所すべき人の行き場所がなくなっているケースがみられることから、国は3月26日に、『指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成 26 年老高発 1212 第1号厚生労働省老健局高齢者支援課長通知) 』を改正し、介護保険最新情報Vol.587で周知している。

それによると、特養の入所申請用紙に、特例入所の要件となる4点のいずれかに該当するかどうかを本人や家族が簡単に伝えられるチェックボックスを設けるよう要請している。チェックの付いた書類が帰ってきた際には、「申し込みを受け付けない取扱いは認めない」と明記。この場合は市町村と速やかに情報を共有し、その人の置かれた状況を客観的に捉えたうえで決めるよう求めた。なおチェックが無かったら各施設の判断に委ねるとも付記している。

特例入所のルール自体は変更されていないが、この通知改正により、特例入所というルールがより周知されやすくなったと言えるし、それに該当する人の申請がしやすくなったと言えるのではないだろうか。よって今後は、特例入所ルールを使った、要介護1と2の人の特養入所が増える可能性が高い。

どちらにしても、門前払いがなくなること自体は良いことだ。

しかし今この時期にこのような通知が出されたということは、要介護1と2の方々が、実際に門前払いをされているという事実があるからにほかならず、特例入所が機能していないという意味である。

特養の関係者ならば、要介護状態区分に関係なく、軽度認定者であっても事情により在宅生活が難しいケースがあることは十分わかっているはずだ。その時、特養の門が完全に閉ざされていれば、行き場のない高齢要介護者が制度の陰で、悲惨な状態になることも承知しているはずだ。そのことに特養関係者が真っ先に対策しようとせねばならないはずだ。

確かに要介護1と2の介護報酬単価は低く、そういう方々を受け入れるのを経営上の視点からためらうのも理解できるが、我々の職業は、まず第一に人の命と暮らしを護るべき使命があることを忘れてはならない。せっかく特例入所というルールがあるのだから、そのルールを活用して、制度の陰を払う努力をすべきなのに、光を指すことを拒む関係者がいることは大いに問題にすべきことである。

このようなルールを設けないと、特例入所のルールが徹底しないという点に関していえば、特養関係者は、大いに反省してほしいものである。
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