年度末の週である。この週が終わると来週月曜日には、たくさんの事業者に新入社員が入職してくる。今年ももうそんな時期になった。
我々介護サービス事業者にも、新卒者をはじめとした新しい仲間が数多く入職してくる。その中には、この春に介護福祉士養成校を卒業して、介護の職業に自分の夢を託して、心弾ませて入職してくる若い人々も含まれている。そうした貴重な人材が、将来介護業界を背負って立つことができる人材へと成長させうるかどうかが、我々の手にかかっているということになる。
先輩職員の皆様は、その責任を忘れないでほしい。
僕が2年間、介護福祉士養成校で教えた生徒たちは、今頃どんな気持ちで新しいスタートラインに立とうとしているのだろうか。介護の道を志すように教えてきた教師という立場で言えば、彼ら、彼女らの志が報いられる職場であってくれと祈るのみである。
見習うべき先輩職員がいて、しっかりとした教育をしてくれる職場だと、数年もしないうちに学生は見違えるように成長してくれるが、当初の志を失って、どうして短期間にこんなにも堕落してしまったんだろうという卒業生に出会うこともある。教育に携わったものとして、それは非常に哀しい現実である。
職場の雰囲気、先輩となる人々の態度は、それほど大きな影響があるものだ。
この時期の入職者は、真っ白いキャンパスのような心に、いろいろなものを吸収していく。しかし彼ら、彼女らは、良いものだけを選んで吸収する能力を持つ段階には至っておらず、悪いものさえも「素直に」受け入れてしまいがちである。
志を高く抱き、利用者の幸福な暮らしに寄り添いたいと思っているはずの学生が、笑顔と丁寧な言葉で対応していたにもかかわらず、職場の全体の雰囲気が、サービスマネーに欠け、ぞんざいな言葉が飛び交い、横柄な態度が許されているようならば、ものの一月もしないうちに、新入職員の感覚は麻痺して低きに流れ、無礼ななれなれしい言葉と、横柄な態度をなんとも思わなくなり、彼ら・彼女らが学生時代に批判していた醜い対応を平気にとるようになってしまう。
それを自己責任という言葉で切り捨てないでほしい。人は誰しもそんなに強くはないのだ。この時期にしっかり基礎をつくり、護るべきものは何かということを噛み砕いて教える必要があるのだ。
それもこれも先輩と呼ばれる職員の対応にかかっているのだ。
職場全体で、サービスマナーの意識が高く、横柄な言葉を注意する土壌があるなら、そうした職場で「タメ口」で利用者に話しかける新入職員は居なくなる。それだけでも職員教育の初期目標は達せられるのだから、いかに職場環境がその水準に達していることが、教育にかける時間を削減できるかという証明にもなる。そうした職場で、燃え尽き症候群は発生しにくいし、職員の離職率も減り、常に職員募集と、新人教育・OJTに振り回されるということもなくなる。
サービスマナー意識と、ホスピタリティ教育は、そういう意味でも大事なのである。そしてその基礎を成すものが「介護サービスの割れ窓理論」であり、言葉は運命になるという教育なのである。
厚生労働省が、介護サービス従事者の虐待が増加しているという調査結果を公表し、関係者向けの研修会の開催などを促していく方針を示しているが、すべての職場で顧客意識を持ったサービスマナーの教育がされておれば、この状況は大幅に改善されるのではないかと思っている。
介護現場の不適切なサービスを、介護という職業にまつわるストレスに結び付けても始まらない。ストレスとは関係のない感覚麻痺による不適切サービスが虐待につながっていることを考えると、その原因は、親しみやすいという意味を間違って捉えている顧客意識のない職員対応であることに気がつかねばならない。
わずか数ケ月しか働いていない新入職員が、年上の高齢者に対し、タメ口で話しかけるようになる環境を変えなければ、感覚麻痺や不適切サービスから虐待につながるケースは、なくならないのである。
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