特養などの居住系施設が新設される際に、多目的な活動に活用できる利用料無料の開放スペースとして、「地域交流スペース」を設置する施設が多い。

しかしその利用実態は千差万別で、地域住民の方々が全く利用していないどころか、その存在さえ知らないというケースも多い。そうした場合、そのスペースはまったく使われない空き部屋になっているか、いつの間にか荷物の置き場所となり、倉庫化している施設もある。

これは極めてもったいないことだ。そもそも多目的スペースにも、国などの建設補助金が使われているとしたら、それこそ無駄な費用で、財源不足を助長させていると言われかねない問題である。

地域交流スペースがあって、地域住民が無料で多目的に使えることをホームページで告知しているといっても、そもそもそのサイトのアクセス数が、1日一桁であっては、それは関係者しか見ていないという意味で、広報の意味はまったくないといっても過言ではない。広報を形骸化させるホームページは百害あって一利なしである。それはホーム管理者の自己満足でしかない。

場合によっては広報の方法をもっとアナログ化して、紙媒体で地域住民に伝える必要もある。

そもそも多目的利用の下駄を、地域住民に預けっぱなしでよいわけがない。むしろこうしたスペースで何ができるのかを施設側が提案することも必要だ。地域交流スペースを積極的に使っていただけるようにアイディアを示すべきなのである。

バザー会場や、作品展示会などとして利用するためには、利用する人だけではなく、そこに訪れる来場者にとっても敷居が高くてはならない。まずは施設側が、そのスペースに地域住民を招いて、施設側主催のイベントを行うなどの関わりが必要なのではないだろうか。会議場として使う場合は、会議に必要な設備も貸し出せるようにしておかないと、利便性は低いといわざるを得ない。

そしてできれば多目的スペースを、イベント的に使う場所という概念を飛び越えて、日常のサロン的な使い方ができ、毎日のようにそこに誰かが訪れて何かができるスペースにすることが大事である。

このことは単に、多目的スペースがあるからという意味ではなく、介護施設が地域包括ケアシステムの中で、住民が日常的に利用できる場所であると意識づけるためにも大事なことだ。それは介護施設が、住民の住み替え場所の選択肢の一つとして、広く認知される第一歩といえるし、ケア付き集合住宅としての品質管理のための、地域住民の目線を感じ取るためにも求められることである。

施設サービスの品質管理を考えるならば、実践水準は内部的に更新するとともに、外部情報が取り入れられて更新されなければならない。住民の目が施設内に常に存在するということは、常に外部情報が取り入れられる環境にあるということであり、そういう意味でも地域住民が日常的に施設を利用することはもっと推奨されるべきである。

地域によっては特養などの介護施設に空きベッドが生じている。そしてその理由が、利用者がいないというケースもある。そうであれば地域交流スペースを活用した地域住民との交流は、将来の顧客確保にもつながる条件の一つにもなり得る。

たくさんの地域住民が、なじみの場所として施設のスペースを使うことは、将来的に長く施設とかかわりを持ちたいという動機付けにもつながるだろう。つながりが存在する限り、そのつながりの幅は広がり、その長さは時間軸を超える長さになっていく可能性がある。

予測もしない輪がそこで生まれる可能性も含めて考えると、地域交流スペースという場所には、無限の可能性があるということになる。その活用の手段を、固定観念を取り払って考えていく必要があるのではないだろうか。

使われておらず、がらんどうと化した地域交流スペースを見るたびに、そんな思いがかずめるのである。
新刊「介護の誇り」(5月末刊行予定)の紹介ページはこちらをクリックしてください。

看取り介護セミナー
日総研出版社主催・看取り介護セミナーのお申込みは、こちらからダウンロードしてください

※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。