僕が始めて入職した特養は新設の施設で、昭和58年4月1日に開設であった。そこで僕は、当時生活指導員と呼称されていた相談援助業務に従事し、入所調整に関わった。その際、オープンから2週間で50床のベッドは満床となった。それでも待機者はなくならなかった。

介護保険制度が開始される前年の平成11年、その特養はベッド数を100床に増床したが、そのときもほぼ2週間で増設ベッドは埋まり、さらに待機者もまだいる状態だった。

しかし現在、特養の待機者は大幅に減っているだけではなく、空きベッドが出来るという事態が生じている。

みずほ情報総研が、6日に公表した調査結果では、特養の25%以上に空床が生じているとされている。

その詳細は、こちらのネットニュースから確認してほしいが、空床の状況には、大きく分けて二つの要因がある。

一つは利用者ニーズはあるのに、介護職員等のスタッフ不足から、利用者を受け入れられないために、定員までベッドを稼動できないという事業者側の理由である。

特にこの状況は都市部に多くみられる。僕は何度か、特養の職員向け研修として招待を受け、施設内でお話をさせていただく機会があるが、そういう施設の中でも都市部の特養では、スタッフ不足から一部のユニット(あるいはフロア)が開店休業状態の施設も複数あった。

一般入所は定員まで受け入れているが、ショートステイの対応ができないとして、ショート専用ベッドがあるのに、指定返上した施設もある。都市部を中心に人手不足は深刻な状況を招いている。

一方、都市部を除いた地方では、そもそも特養入所を希望する人がいないために、空きベッドが埋まらないという現象が起きている。その理由は、その地域ではすでに高齢化のピークが過ぎ、高齢者の数自体が減っているという場合もあるし、もっと便利な生活が送れる周辺年のサービス付き高齢者向け住宅などへの住み替えがすすんでいる場合もある。

このことに加えて、特養の入所基準が、原則要介護3以上となって、要介護1と要介護2の方が入所出来る、特例入所のルールも余り機能していない地域も多く、入所対象者が探せないという地域も多い。

前者の場合は、少ないスタッフに対応した利用者受け入れということで、収益上の問題はあまり生じないだろうと考える向きがあるが、費用対効果を下げることにもなり、事業経営リスクであることは間違いないし、後者の場合は、深刻な収入不足を招いて、事業経営そのものを危うくするかもしれない。

ただしこの状況は、今のところ、「極端な稼働率低下」にはつながっていないことが唯一の救いである。

今後報酬改定でも、施設サービス費は基本報酬のアップが見込めない状況で、介護職員処遇改善加算のみアップされるという中で、人件費率はさらに上がっていくことが考えられ、その他の加算算定と稼働率アップによる収益確保が命題となるために、スタッフの数と質はさらに求められてくるわけである。

そのような中で、スタッフ不足がベッド稼働率を下げている地域でも、きちんとスタッフが確保できて、ベッド稼働率の高い施設もある。

利用者確保が困難とされる地域の中で、人気が高くて待機者が多い施設もある。

特養を経営する事業者は、この違いについて何が原因で生じているのかを深く分析して、就職希望者と利用者に選択される法人体制を真剣に考え、組織改革していく必要がある。空きベッドが生ずる要因を、地域課題、施設の個別課題に分けて分析する必要もあるだろう。

ただし今後を予測すると、2025年に団塊の世代が後期高齢者となる中で、ますます介護需要は増え続ける中で、人手不足は深刻化するが、同時に政府は、病院ベッド(病床)数を115万〜119万床と、現在よりも16万〜20万床減らす目標を示しており、そこでは慢性期のベッド数が大幅に削減されるのだから、人手不足による空きベットはさらに増えるが、特養の入所希望者は増える可能性がある。この見極めも大事になる。

どちらにして指定されたベッドが稼動していない状況は、各地域の介護保険事業計画の達成に齟齬をきたすだけではなく、そこにかけられる補助金等の財源の無駄が生じているということになるのだから、財源不足が給付制限を招いている現状で、国としても、各法人・各自業者の問題として傍観しているわけには行かないのではないだろうか。

指定権者も、単に計画に応じた法人が手を挙げて認可するのではなく、職員を確保して定員を満たす利用者を受け入れてサービス提供が可能か、あるいは利用者の恒常的確保の目途が立つのかなどの判断が必要ではないのだろうか。

そういう意味では、事業指定のありかたの見直しという方向性が論じられても良いのではないのだろうか。

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