2015年の報酬改定で、通所介護については、小規模型の高い報酬を算定できる事業者は、定員18人以下の地域密着型サービスに移行した事業所のみとされた。
地域密着型通所介護に移行した事業者は、それにより報酬単価は守られたものの、定員が最大18名とされたことにより、それ以上の顧客ニーズがあっても利用をお断りせねばならなくなって、収益が減る事業者が多くなった。
収益を挙げて事業継続に支障がないようにするためには、できる限り加算費用を算定する必要があるものの、定員が18人までとされている地域密着型通所介護は、加算費用の上限も少ない定員上限の範囲までしか算定できないという意味になり、そこで挙がる収益もたかが知れており、非常に厳しい経営が迫られている。
その影響を受けて、小規模通所介護事業から撤退する事業者もあるが、関係者からは、周囲を見ると確かにそのような事業者もあるが、その数はさほど多くはないという声も聞かれる。
しかし事業所名が変わらず、従業員もほとんど同じで運営を続けている小規模通所介護事業所の中には、いつの間にか管理者が変わっている事業所がある。そしてその管理者が、実際には事業経営者と同じであった場合、その事業者は知らぬ間に身売りして、経営母体が変わって運営しているということになる。
つまり現在巷に発表されている倒産数より、実際には数多くの小規模通所介護事業者の事業撤退はあるわけで、そうした事業所を丸ごと買い取る法人とは、経営体力があり事業拡大を図ろうとする大きな法人である。地域によってはそうした法人の介護事業の寡占化が進んでいる。
地域密着型通所介護については、来年度にも公募制で新規参入が難しくなり、既存事業所にとってそのことは逆風ではないことについては、「地域密着型通所介護に吹く風は順風?逆風?」で解説したところである。
だが30年度からの新報酬については、相当厳しいものになると予測される。例えば国が公開した、27年度決算の介護サービスの収支差率では、通所介護について、26年度決算より下がっているとはいえ、6.3%の黒字決算となっている。この数字は、一般の中小企業の平均2%と比較して、まだ高い収支差率とされることから、報酬単価の高い地域密着型通所介護費の、さらなる引き下げが検討されることは間違いない。
特に国は、レスパイトケアに関する報酬は、もっと削減されてしかるべしという考え方なので、基本サービス費を大幅カットして、機能訓練や認知症の個別ケアや、重介護者のケアについての加算で通所介護を評価しようとする流れが強まる。しかし前述したように、加算による評価は、定員が18人までで打ち切られてしまう地域密着型通所介護には厳しい構造である。
しかも軽介護者(要介護1と2)について、地域支援事業に移行しようとして、次期改正ではそれを見送った流れからすると、これらの対象者の報酬は、相当下げられると覚悟した方が良い。
通所介護の収益は、その規模が大きければ大きいほど、スケールメリットが働き、収支差率がプラスになることがわかっており、小規模事業を返上し、都道府県指定の通所介護に鞍替えして、大規模化を計るべきだという意見がある。その中で重度者への対応シフトを敷くことができればさらに良いと考えられている。
しかし大規模通所介護事業を経営するためには、ある程度の資金を持ち設備を大規模に整備でき、それだけの利用者を集め、それに対応できる人員を配置できる経営体力が求められる。つまりそれは大法人モデルであって、そうした経営が可能となる事業者数はそほど多くなく、現在地域密着型通所介護として運営している事業者が簡単に移行できるものではない。
その結果、今後の通所介護事業については、小規模事業者が徐々に減っていき、比較的規模の大きな法人による地域での寡占化が進んでいくのではないかと予測される。
小規模通所介護事業所として残っても、大きな法人のサテライト事業所として傘下に吸収される事業所も多いのではないだろうか。そのことは地域包括ケアシステムとして考える際に、どのように影響してくるのだろうか。
そもそも小規模通所介護を経営する人は、資金がないから小規模の事業所を立ち上げるという以外に、集団処遇的な通所介護サービスではなく、個別ニーズに対応したきめ細やかな対応がしたいという動機付けから、大きな法人に所属する職員という立場を捨て、自ら小規模事業所経営に乗り出す人が多いのである。
認知症の人とじっくり向き合って、行動・心理症状を軽減する通所介護事業所の取り組みが、いかに自立支援に結び付き、家族による在宅介護を支えているかは枚挙にいとまがない。
しかしそうした対応や結果も、制度改正議論の中では、単なるレスパイトケアとして切り捨てられる。認知症の人の行動・心理症状を軽減する対応も、サロン的サービスでボランティアでもできるサービスとして評価されない。だが・・・そんなものボランティアで対応できるわけがない。そしてその精神は、通所介護事業の寡占化、大規模化が進む中で失われてしまうのではないかということを、僕は一番心配している。
志を高く持ち、小規模の通所介護事業所を立ち上げて、利用者のニーズに対応した高品質なサービスを提供してきた経営者の方が、介護業界の第一線から去って行きつつあるのが、現在の制度改正の結果である。素敵な人々が、お別れの挨拶に来るたびに、僕の心は深く傷ついている。
それらの方々が、再び活躍できる舞台があることを願ってやまないし、できればまた介護の業界の中の舞台で活躍してほしいと願っている。

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市に求められるようなデイサービスの事業計画を立てましたが、やはりボツでした。総合事業の単価が低すぎるのです。
地元では、社会福祉協議会が通所介護(10人以下)の営業日を減らすなどで、通常規模や大規模デイに利用者さまが流れ出そうです。
デイの難しいところは、予定が100%近い稼働率でも実際は、85〜90%あたりになってしまうところです。
いくら通所介護の利益率が良いとはいえ、もともと介護職員に配分をきちんとしている事業所はたまったもんじゃないんです。2号店 3号店で勝ち抜くしかないと考えています・・・。初期投資を少なく開業するしかないのか・・・。