昨日書いた、「洗脳介護から抜け出せない人、抜け出ようとしない人」を読んだ人が、僕のフェイスブックに質問を寄せてきた。それに対して次のような、やり取りをした。
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(フェイスブックでのやり取り)
質問者:実際水分補給が大事でして、飲んでもらわないとイケないとも思ってます。あれこれ声かけて優しく。優しく。傷つけないように。結果、毎日500ぐらいしか飲んで頂けません。医者からは1800飲んでもらうように言われたが無理です。あれこれ声掛けを工夫しながら無理ない範囲で無理して飲んでもらうのはイケないこと何でしょうか?

個別アセスメントが必要だといっているでしょう。先ずその1800の根拠は何ですか?1800必要な人に頑張ってその量を飲んでもらうことは必要だけど、1000でも多すぎる人がいるんでしょう。そういう知識や計算式を知っての質問ですか?

質問者:要するに根拠のある個別アセスメントあれば無理ない範囲で飲んで頂くような支援はよくて、根拠もなく無理に飲ませるのはダメとゆーことですね。当たり前のことなんですね。

必要な人に必要な量をという当たり前のことなんです。
(以下略)
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何事も個別アセスメントが大事ということだ。根拠に基づいた介護実践が必要だということなのだ。そして必要量を飲んでもらうためには、それなりに工夫が必要だ。シールコップやペットボトルに入れたままの、温いまずい水を飲めといわれて、ハイそうですかと、簡単に全量飲んでくれる人は少ない。お茶が好きな人でも、それをゼリーにして全量食べてくれるとは限らない。必要量を摂ってくれないことにも、それぞれの理由があるのだ。そこには工夫が求められるのだ。

水分摂取支援の必要性と重要性は否定していない。しかしその際に、個別アセスメントなしに、一律全員に食事以外の水分補給を、1.500ml/日以上強制的に行うという考え方がおかしいといっているのだ。人によってはそれだけの水分が必要な人がいるかもしれないが、大多数の人はその量は多すぎるし、その結果、内臓ダメージを受け、心不全や高血圧の悪化等につながりかねないといっているのだ。

このことについては、紹介した質問者とは別な二人の方が、同じくフェイスブックに次のような意見を書いてくれている。

(竹内理論は)今では、一昔前の医師らしい発想で理論ですらないと思えます。断片的には正しいものがあるのは騙しのテクニックに共通するものです。

評価の高いマニュアルがあると、それに固執して個々としてのケアが見えなくなる。経験、知識、感受性、すべてに置いての劣化が懸念されます。

ごもっともである。ただし竹内理論は質の高いマニュアルとはいえない。エビデンスに基づかないのだからマニュアルにさえならない。そもそも脱水を防ぐための必要水分摂取量は、1日に体内から排出される水分を計算して、それを補うものだ。

例えば僕が特養の相談員時代に作成した施設サービス計画の、排泄支援部分をピックアップした次の画像を見ていただきたい。
排泄介護計画
本ケースは1日に排出する水分・汗を100mlとし、不感蒸泄(感じることなく気道や皮膚から蒸散する水分で、発汗は含まない)が900mLとした場合であり、尿や便の排出量を計測して、その量が1.500mlだったために、合計水分排出量は2.500mlと想定した。(※排出する水分・汗及び不感蒸泄で失われる水分量については、医師と相談して想定。)
※特に不感蒸泄には個人差があるので要注意。高齢者の場合、多く見積もっても2.000〜2.500といったところか

この場合、補うべき水分量も2.500mlとすればよいわけだが、まずもって3度の食事でどれだけ水分摂取できているかが問題だ。例えば食事で水1,000mL取れている場合(※これはかなり少ない数字。特養などの食事が全量摂取されているかたであれば、おそらく食事だけで、1.300ml以上取れているだろう。:管理栄養士に確認することをお勧めしたい。)、食事以外で1.500ml水分補給しなければならないという考えは間違っている。

なぜなら体内の代謝水というものがあるからだ。代謝水は、体内での栄養素の酸化的分解過程で生じる水のことで,酸化水ともいう。この分を見積もらねばならず、それはおおよそ200ml/日くらい見積もれるので、結果、このケースの水分補給に必要な量は、1.300ml/日となる。

しかもこれは、不感蒸泄を最大限に見積もり、かつ食事摂取量が少ない人の場合であり、特養等で暮らしている方々で、1.300ml/日もの水分摂取量が必要になる人は、さほど多くはなく、そういう意味で竹内理論の、1.500ml/日という強制的水分摂取量は、尋常な量ではないのである。

水分を多量に摂取しても、尿になって排出されるし、尿量が増えることはそれなりに意味があるという考えも危険であり、その前に水分をとり過ぎると、心不全、肺水腫、高血圧などをおこし、心臓・肺・血管といった、生きていくうえで最も重要な臓器に大きな障害を与えることの危険性を考えねばならない。

どちらにしても竹内理論に一部の理も認めることはできない。それは人の命を危険にさらし、人の尊厳を失わせかねないものだからである。

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