地域の主役は、地域行政ではなく、サービス事業者でもなく、地域住民である。

そのことに少しの異論も差し挟む余地はないはずなのに、地域包括ケアシステムのなかに住民参加の姿は極めて見えにくい。そのシステムが機能するために必要とされる多職種協働にも、地域住民の協働の視点が抜け落ちていることが多い。

それはなぜか。うがった見方であるが、ここに本当に住民が主体的に参加すれば、お金をかけないシステムにならない恐れがあるからではないのか。

国が地域包括ケアシステムを推奨する一番の理由は、少しでも給付費用を削るためである。それは地域住民のニーズにすべて応えないことを前提にした、限られた財源を主役に置くシステムとも言え、地域住民が主役になっては困るのではないだろうか。そのために国も住民をシステムの中に積極的に取り込むということを、あえて求めていないのではないかと思う。

そのようなシステムではあるが、責任と義務だけは地域の行政機関やサービス事業者に丸投げするというのが、多職種協働という言葉の意味でもある。

このブログで何度も指摘しているように、国が地域行政に求めている地域包括ケアシステムというものは、社会保障財源には限りがあるとして、その財源を効率化・重点化して、お金をかけるべきとこところにはかけざるを得ないが、その代わりにお金をかけなくて良いところをピックアップして、そこにかけていたお金を削り取るというシステムである。財源のかけ方も、出来高に応じた青天井の金の使い方ではなく、年額上限を設定した中でお金を使うという方法が基軸となる。

さらにその設定金額を下回るようなサービス抑制につながる状態が生じたら、報奨金を出すシステムを導入するというのが、次期制度改正であり、お金をかけないためのシステム作りという意味が、地域包括ケアシステムと呼ばれているに過ぎない。(参照:報奨金で地域他付けケアシステムは深化するのか

つまり地域行政担当課に下駄を預けっぱなしにして創造する地域包括ケアシステムは、自己責任と自己負担という言葉で、数多くの地域住民を切り捨てたうえで、地域の保健・医療・福祉・介護関係者には、多職種連携という言葉で、体の良い義務感を背負わせて、金のかからない周辺業務を強い、制度の光の当たらない部分には目を背けて、ないふりをするというシステムでもある。地域支援事業の総合事業はその隠れ蓑である。

全国横並びサービスではなく、地域の特性に応じた工夫を求めるといっても、そこでは安かろう悪かろうサービスが地域の特性であるかのように取り繕われる恐れがある。いやその可能性が高い。

地域福祉の質は、地域の関係者に多職種協働というお金のかからない耳障りの良い義務感を背負わせながら、地域行政・地域介護事業者に丸投げされただから、国はその結果にまで関与しない。すべて地域包括ケアシステムに組み込まれている関係者の責任である。

財源をできるだけかけないためのシステムとして、地域包括ケアシステムの構築していくことを、「深化」という言葉で現わし、そうしたシステムを急ごしらえしようとすればするほど、上記のような取り繕いの形骸化システムにならざるを得ない。

そんな中で、切り捨てられる人を放置しないために存在するのが介護支援専門員ではないか。

給付抑制のためにサービス利用させないと、切り捨てることが間違ってると、論理的に異を唱える方法がケアマネジメントではないのか。

地域包括ケアシステムを、地域住民に光が当たるべく、真に必要とされるシステムに向ける実践者が介護支援専門員であるし、それこそが求められるケアマネジメントの方向性だと思う。この使命を強く訴えていきたい。

今後予定されている講演予定では、介護支援専門員の職能団体会員からご招待を受けているものもあり、地域包括ケアシステムの中で求められるケアマネジメントに関連した講演も予定している。

一番近い日付のものとしては、今週末の土曜日に静岡県三島市で行われる「三島市介護支援専門員連絡協議会研修会」で、「介護の誇り 心が動く介護 〜これから求められるケアマネジメント」というテーマでお話ししてくるが、そこでは制度改正の方向性に関する最新情報の提供を行うとともに、そこでできること、すべきことを本音でお話ししてくる。僕以外の誰も指摘していない制度の真実が明らかになるだろう。

介護支援専門員の使命
このスライドは、そんな厳しい状況下であっても、どのような時代であっても、介護支援専門員として根底に持っていなければならない使命感とは何かについて語ろうとして作った講演ファイルの中の、スライドの1枚である。

このことは綺麗ごとでもなんでもなく、介護支援専門員がいつか存在意義が問われる時が来るとしても、この根幹さえ守っておれば決してその存在が揺らぐことがないという、根っことなる考え方だと思う。そのことを含めて伝えてきたい。

静岡県で講演するのは2度目である。数年前に静岡県介護支援専門員協会からお招きを受け静岡市で講演したことがあるが、その時は受講者数が550名を超える大盛況となった。今回は三島市介護支援専門員協会さんのお招きで、三島市で土曜日の午後2時から150分の講演を行う予定になっており、参加申込者もすでに150名を超えているそうである。

前回の静岡入りの際は、静岡空港を利用して当日入りしたが、今回は冬の移動ということもあり、三島市の位置も考えて、羽田空港経由で品川〜新幹線を利用して前日入りする予定である。そのため2泊3日の余裕ある行程表となった。

講演を終える日の土曜の夜は、講演主催者の方々とのオフ会が予定されているが、前日入りの金曜日の夜は、フェイスブックでつながっている方が、地元のおすすめ店を紹介してくれたので、そこで一献交わす予定にしている。もしかしたら明後日・金曜日の夜遅くまで三島駅付近を徘徊しているかもしれない。

それでは三島市でお会いする皆さん、どうぞよろしくお願いします。久しぶりの静岡県を堪能してきます。

※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。