1月31日に書いたブログ、「介護福祉士国家試験の受験者減も国の政策だぞ」の中で、僕は国家試験受験者数半減の原因は、 実務者研修(450時間)の受講という高い壁ができたためだとし、しかもそのことは前々から予測されていたことであり、国もそのことによって受講者数が減ることは想定済みであると論評した。
しかし一部の関係者からは、受講者数の減少の主たる原因は、実務者研修(450時間)という壁そのものではなく、この壁を避けるためにここ2年ほどの間に、駆け込みで国家試験を受ける人が増えたため、その分の人数が今年減っただけであり、元の受講者数に戻っただけだという声が聞こえてくる。そして、その声に対し無批判に同調する意見も見られる。
だがこの分析は正しいとは言えない。むしろ全く根拠のない間違ったものであるといいたい。
そもそも減少した受講者数の具体的な数と、「駆け込み試験受験者数」と比較したデータは、どこに存在するのかと問いたい。
今年度の介護福祉士国家試験受験者数の半減とは、具体的に言えば、平成27度の国家試験受験者数は16万919人だったが、28度度のその数は7万9113人に減ったというものである。
ではここで下記の表《介護福祉士国家試験受験者数の推移》を見ていただきたい。


介護福祉士国家試験の第1回目は、平成元年度なのだから、回数がそのまま平成の年度に重なる。つまり27回目の試験は、平成27年度試験なのだからわかりやすい。
これを見てわかるように26年度と27年度の受講者数は確かに増加しているが、その数は過去の試験受講者数と比して大幅に増えているものではなく、22年度、23年度試験の受験者数に戻っているだけに過ぎない。28年度はさらに駆け込み受験者が増えていたこともわかる。しかし今年度の受験者数7万9113人という数字は、駆け込み受験がなくなったという理由だけで説明できる数字ではないのである。
受験者数が10万人を切ったのは、平成17年度の90,602人以来だし、その数字は平成16年度の81,008人を下回っているのであるから、この現象に大きく作用しているのは、実務者研修(450時間)の壁そのものであるといってよいと思う。
だからといって介護福祉士だけが介護サービスの人材ではないことから、このことが介護人材不足にさらに拍車をかけるという短絡的な見方にはならない。その影響が出るとしても、ごく短い期間のごく狭い範囲であると国は見ているのだ。さらにいえば、給付財源の削減のなかで、一方ではある程度のサービスの質を確保するための人材を育てるという意味では、必要不可欠な対策であると考えているはずである。そのことについては1/31のブログに書いたとおりである。
また国家試験の受験者数減については、今年度から数年間が底で、少なくとも2022年度(平成でいえば34年度)以降、確実に増加に転じる。なぜなら2022年度以降については介護福祉士養成施設を卒業した者も、国家試験に合格しなければ介護福祉士資格を取得できないからである。
また2017〜2021年度については制度変更までの経過措置期間となり、この期間の卒業生には5年間の期限付きで介護福祉士資格が与えられ、期限内に国家試験に合格するか、もしくは5年間現場で勤続することで正式に介護福祉士の資格が認められるが、期限内にいずれかの条件を満たさなかった場合には資格が失わわれるため、実務についていない卒業生の、この期間の受験が想定されるため、2020年度より早い段階で、受験者数は増加に転ずる可能性がある。
どちらにしても、介護福祉士という資格者については、社会全体の介護職員の数の確保より、質の確保という方向で受験資格や、授業内容が考えられていく時代だ。そのことを見誤ってはならない。
ところで先般の、介護福祉士国家試験受験者数半減報道を受けて、日本介護福祉士会は公式ホームページに、「介護福祉士国家試験の受験申込者半減等の報道について」という声明文を掲載している。
ここでは「資格取得方法の一元化を否定するものではないと考える。」・「今回の介護福祉士国家試験の受験者数の激減を受け、絶対基準を採用している合格基準を、政策的に歪める対応は行われるべきではないことを付言する。」という二つの主張がなされている。
この主張をザックリ解説すると、受験者数が半減したからといって、介護福祉士国家資格の取得新ルールを改める必要はないし、受験者数の激減に怯えて合格基準を引き下げるべきではないということだ。
この主張は至極まともな主張であり、介護福祉士がスキルをアップし、介護職全体のスキルを引き上げるという気概やよしと言いたい。
そもそも受験資格の厳格化と、資格取得のハードルが高くなることは、介護福祉士というの資格の価値を高める可能性を持っているから、その資格者の職能団体にとっては歓迎すべきことなのである。
例えば介護職員処遇改善加算は、無資格者も含めてすべての介護実務に携わる職員を対象とし、これによる介護職員の待遇改善を図って介護職全体の数を担保しようとする国の政策の中で、介護福祉士という有資格者のブランド力をアップさせ、差別化を図って、処遇改善加算プラスアルファの待遇改善を求めるためには、目に見える形のスキルアップが必要だ。
そうであれば介護福祉士等がたん吸引や経管栄養などの医療行為を行えるようになるには、喀痰吸引等研修といった専門資格を修了する必要とされているが、実務者研修のカリキュラムには、喀痰吸引等研修で受講する基本研修も含まれているため、喀痰吸引等研修の基本研修は免除され実地研修を受講するだけで、これらの行為を業務として行うことができるようになる。
養成校ルートも新カリキュラムによって、資格さえ取得できれば、たん吸引や経管栄養などの医療行為を行うことができる。
つまりこれからの介護福祉士はそれらの医療行為を行うことができる有資格者が大多数を占めるという意味であり、そうであるがゆえにより高いハードルを超えて資格を取得することで、従前までの有資格者とのイメージ上の差別化が図れる可能性があるわけで、そこに新たな可能性を求めるためにも、必要な改革といえるのではないだろうか。
同時にこのことは、現在の日本介護福祉士会の役員や会員にも、新しい資格者と同等以上のスキルが求められてくるという自覚が必要だ。
国家試験というハードルを越えていない有資格者や、実務者研修を受講していない有資格者に、今更それと同じハードルを超えよとはいわないが、せめて特定医療行為をできる条件をクリアすることは求められてくるのではないだろうか。
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