僕が管理する、介護福祉情報掲示板では、介護保険制度に関する質問がたくさん書き込まれており、それに対して関係者が回答してくださっているが、その際には、「根拠」に基づいた回答を書き込んでいただくようにお願いしている。

その根拠とは、法令に沿ったものである必要があり、「行政指導担当者が、こう言っていた。」は根拠にならないと指摘している。

しかしながらこうした正論が通じないのが、ローカルルールである。

介護保険給付費は国定費用であり、その算定に関する基本ルールは国が定めているが、地域の実情に合わせて、国のルールに加えて地域ルールを独自に定めている地域がある。

その場合のローカルルールとは、国のルールより厳しく狭い制限ルールとしている場合が多いように思う。

例えばつい最近、訪問看護と訪問リハ同日利用というタイトルでスレ立てされたものに、訪問看護の複数事業者からのサービス提供の問題がある。

スレ立ての質問では、「同日の午前にA訪問看護ステーションから訪問看護を1時間、午後にB訪問看護ステーションから訪問リハを40分受けることは出来ないとケアマネから言われました。」という質問から始まっている。本当にそれは許されないのか、許されないとしたらどうしてかという疑問である。

この質問に対して僕は、「医師の指示があれば、複数の事業者の利用も可能であり、複数事業所からの訪問看護とリハビリの同日利用も可能です。」と回答した。

その後も他の方々からこの問題について、医療保険訪問看護に存在する制限ルールは、介護保険訪問看護には存在しないことなどが説明されている。

ここまでは一般市民の質問に、介護業界の人が根拠を元に説明している普通の展開である。答えも問題なく、そのまま問題解決となってスレッドが閉じられても良い。

しかしこのことについて、質問者が介護保険担当課に念のため確認したところ、次のような回答があったとの情報提供があり、逆に問題は複雑化している。

出来れば一か所の訪問看護ステーションからが望ましい。病院施設の訪問リハステーションからであれば問題は無い。複数の訪問看護ステーションからはプラン上に相当の理由があれば認められる。先ずはケアマネから文書で問い合わせしてください。文書でお答えします。実績であげた場合、却下で自費にはならないが、相当しくないと指導が入る場合があります。

まったくもってくだらないローカルルールである。そもそも複数の訪問看護ステーションの利用の必要性は、ケアマネジメントで判断すべき問題で、行政許可が必要になる問題ではない。

そもそも訪問看護からのセラピストによる自宅でのリハビリテーションは、訪問リハビリ事業者が少ない地域で、それに替わって行われるケースが多いもので、すべての訪問看護ステーションで対応できるサービスではない。よってこの部分のサービスとの組み合わせを考えるケースでは、主治医師が所属する医療機関併設の訪問看護ステーションでリハビリ以外の訪問看護を担当し、そのステーションではカバーしきれないセラピストによる訪問看護という名のリハビリテーション部分については、そのサービスに余力を持っている他のステーションのサービスを導入するということはレアケースでもなんでもなく行われている。

その際に、特段介護事情に精通しているわけでもない行政職員に、事前許可を求める必要性はまったくないといってよい。

その必要性を判断する方法・技法とは、介護支援専門員という有資格者が行うケアマネジメントという専門技術であり、その結果について何の根拠を持って医療や介護の素人である行政職員が、「許可・不許可」と判断するのだろうか。それともすべてのケースについて、ケアプラン適正化事業を適用するとでも言うのだろうか。なんとも暇な行政職員である。

そういえば先日、シンポジストとして参加したシンポジウムでも、利用者支援の際に、「この地域では、暫定プランを作成する際に、必ず予防プランと介護プランの両方の作成を求められるが、それがケアマネの負担になっている」という話を聴いた。

これもおかしい。国のルールでは、暫定プラン(つまり要介護認定結果が出ていない状態で、居宅サービス計画を作成しなければならない際の、居宅サービス計画)については、予防もしくは介護のどちらかの予測されるほうの計画書を作成しておればよく、予測が外れた場合は、遡ってセルフプラン扱いとして現物給付してよいというルールだ。

こんな問題に、国のルール以上の業務負担をケアマネに課したって、ケアマネジメントの質が上がるわけでもあるまい。根拠のない「こうしたほうが良い」という行政側の価値観で、勝手にルールが変えられて、ケアマネの業務負担だけが増えるルールだ。その負担を回避して暫定プランでのサービス利用を抑える傾向ともなれば、それは利用者のデメリットであり、すなわち地域住民のデメリットを増やしているに過ぎない結果となる。そんな簡単な理屈も分からない行政職は、制限するという権力によっているとしか思えない。

そんなふうにして裁量というものを「狭い了見」と勘違いしている行政職員が多すぎないか。

そもそも地域の専門職を信用しないような制限ルールで、一体どんな地域を創ろうとしているんだ。介護の専門職を信用しないようなルールを押し付けて、職域横断の多職種連携など構築できるわけがないではないか。

こうしたローカルルールが、地域包括ケアシステムを形骸化させることに気がつかないのはなぜだろうか。

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