先週土曜日、今年度の介護福祉士国家試験を直前に控えて、その介護福祉士の受験申込者数が前年度の半分の約8万人に激減していることがわかったというニュースが流れた。

それに対しSNSなどでは、関係者の間から人材不足に拍車がかかるという声が湧き上がっている。

しかし僕に言わせれば、「何をいまさら」といったところだ。あれだけ長い時間の講習受講義務を課したのだから、その費用と講習時間というハードルを越えられない人が、すごい数になることは予測されたことで、受験者数が半減するのだって予測の範囲内である。

それを予測していた証拠として、今から3年も前に書いた記事、「今後の介護福祉士養成校に求められるもの」を、改めて読んでいただきたい。

ここに「そう考えると、27年度以降は介護福祉士の資格を新たに取得する人の数が、現在より大幅に減るのではないかという予測も立てられる。その数が半減したっておかしくはない。」と予言している。
※この記事で28年度ではなく、27年度と書いているのは、この受験資格の見直し措置は、当初27年度実施予定のものが、一度延長されて、今年度(28年度)〜の実施とされたためである。

受験者半減を、介護従事者のさらなる不足に拍車をかけ、人員の確保がさらに難しくなる問題として声を挙げている人も多いが、ある意味、国はそのことも織り込み済みである。

役人だって馬鹿じゃないし、むしろ僕より頭が良くて、狡猾な人が多いのだから(違うかな?)、僕が3年前に記事に書いた状況くらい容易に予測しているはずだ。

それなのに、なぜ受験者減につながる改正を強行したかといえば、介護人材の質を上げるためといえば聞こえは良いが、それだけではなく、介護の提供主体は、質が高くてお金のかかるサービスと、安かろう悪かろうサービスの2極化の中で、国民の選択にゆだねるという意味である。逆に言えば単価の安いサービスも、ある程度の量が必要だという乱暴な理屈が、そこにあるということだ。

リンクを張った3年前の記事で書いているように、これによって介護福祉士の国家資格を持つ人の価値自体は上がることはあっても、下がることはないので、有資格者の待遇は良くなるかもしれないのである。むしろこのことより問題なのは、介護福祉士養成校の定員に対し、入学者数が5割を切っていることである。介護福祉士という資格を取れば、その資格で働く限り待遇はさほど悪くないという認識を広め、ネガティブキャンペーンに踊らされて、いたずらにその資格取得を否定することのないようにしてほしいものだ。

ただし介護福祉士という資格には、今後お金がかけられる可能性があるとは言っても、それだけお金をかけることができる財源には限りがあるので、この部分のパイは大きくしないというのが、受験資格のハードルを大きく引き上げたことに隠されている意図である。

必要とされるすべてのサービスの質を高品質に保つことができるほどに、介護サービスに国費をかけることはできないので、介護のスタンダードな国家資格者は大量生産・大量排出する必要はなく、受験者も合格者もコンパクトに絞り込んで、数より質を担保し、その代わりに国家資格がなくとも提供できるサービスや、ボランティアで対応できるサービスをどんどん作って、そこは国費をかけるとしても安い費用で提供するサービスにするという意味である。

そもそも介護現場の人材難、人手不足の問題は、無策であっても、あと20年少しで解決に向かう。

2040年ころには、高齢者の数がぐんと減り、サービスの供給過多となり、各地で人員余りが生じてくるだろう。だからそれまでの間に、しっかり質を担保する部分を強固にシステム化し、足りない部分は、この時代に介護を必要とする人に泣いてもらいながら、あと少しの期間だけ歯を食いしばって頑張ってもらおうという、意図的無策がとられているわけである。

その背景には、お金をかけないといっても、介護保険サービス事業には年間11兆円もの岡野がかけられ、自然増を半減するといっても、さらに毎年5.000億円ずつ費用は膨らんでいくのだから、この費用を得ようとする民間事業者はなくなるはずがなく、人材枯渇と人員不足は、国が無策でも、民間事業者が何とかするだろうという、根拠のない見込みがあるのかもしれない。

だから今更受験者数が半減したからといって、驚いている役人はいないし、関係者が介護の危機につながる問題だと、このことを論評しているのを見て、「わかってないな〜。」と鼻で笑っているかもしれない。

だからこの問題に関して、正論は通用しない。

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