介護保険制度改正議論は、総論部分であらかた整理が終わり、年明け後は各論の議論に入っていく。

総論部分では2号保険料の総報酬割の導入や、現役並み所得者の3割負担の導入、高額サービス費の上限引き上げなどの方向性が示されている。

給付除外が検討された軽度者の生活援助と福祉用具貸与については、保険給付に残すものの、単価の大幅な引き下げが確実な状況となっている。

このブログでも何度か取り上げてきた、「混合介護の弾力化」(保険が適用されるサービスとそうでないサービスを組み合わせて、より柔軟にサービス提供できるようにする構想)については、14日に厚労省が規制改革推進会議に対して、「利用者保護の観点などで懸念がある」と指摘し、具体的なルールを検討していくことは拒絶しないが、難しい課題が少なくないとして慎重な態度を示しており、次期改正で弾力化が実現するのかは不透明な状況となった。

9日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、来年4月に実施する臨時の介護報酬改定で、「処遇改善加算」を拡充し、現行の算定要件に加えて、一定の基準にもとづいて定期的に昇給させる仕組みを設けていたり、経験や資格に応じて給料を引き上げていたりすれば算定できる加算率の高い新たな区分を創設することが決定された。これにより新区分を算定した場合、対象職員の給与はさらに1万円程度アップするとされている。

この部会では、日本経団連の井上隆常務理事が、「給付をするには負担が欠かせない。誰が出すのか。その議論が必ずしも十分でないと感じている」と述べ、「制度を使っていない人も含めて国民全体に安心感を与える、という観点も非常に重要だ。今回の内容で現役世代、次世代の不安を解消できるのか。それをよく考えて欲しい」と注文をつけた。

経済界は、財務省が求める軽度者の給付制限が実現しなかったことなどに大きな不満を抱いているということだ。

しかし井上氏の意見には疑問を呈したい部分がある。現役世代、次世代の不安を解消するためにも、もっと思い切った抜本改正が必要であると述べているが、果たしてその不安解消は、給付制限を推し進めて制度を維持することとイコールなのであろうか。

制度あってサービスなしという状態のほうが、現役世代、次世代の不安につながっているのではないかということは、年金制度に対する現役世代の不安感を鑑みれば明らかであり、年金制度が存続しても、生活を支えるだけの給付はされないと感じている人が、保険料負担意欲をなくし、自分で老後を守るために、保険料負担分を貯蓄にまわそうとしているのである。

介護保険制度も同様で、要介護と認定されただけでは使えないというサービスが増えることで、制度そのものへの信頼感は薄れ、保険料負担を無駄と考える人が増えるだろう。自分の体が弱っていく過程、障がいを持つ身になった際に、給付条件が厳しかったり、サービス利用の費用を年金でまかなえなかったりするのでは、実質サービスがない状態と同じであり、そんなものに保険料負担はできないと考える人が多くなるのではないか。

そうは言っても、財源をどうするのだという声が聞こえてきそうである。確かに給付には財源が必要であり、それは無限ではない。

社会保障の一面は、給付に一定の制限を設けつつ、すべての人々に公平に救いの手を差し伸べることを持続する視点が求められる。だから給付制限を一方的に批判すべきではないし、給付製制限論を唱える人々を敵視する必要もない。

むしろ反対意見があることが健全なのだから、自分と違う意見の人々と議論ができる場を、貴重な場所と考えるべきである。

同時に僕たちソーシャルワーカーは、対人援助の専門家として、根底ではすべての人が幸せになるための制度設計という立ち位置から物申していくことも必要だ。国の主張する財言論を鵜呑みにしたのでは、正論が埋没してしまう。

巷で財源が足りないという声が満ちているが、国の財政支出全体を通して、社会保障費は適切に支出されているのだろうか。安倍外交は、首脳会談のたびに巨額な資金援助を行う外交だが、それは果たして国のためになっているのだろうか。

社会保障費の自然増が悪者扱いされているが、そのような見方はどうなんだろう。そして自然増の先には、高齢者数の急激な減少が起こるのが確実なのだから、そこで自然減という現象は起きないのだろうか。等々・・・。巷で声高に言われている事実が、真実かどうか疑う議論も必要だ。

だから声なき声を届けようとする物言いは必要なのだ。
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