福祉援助は、もともと救貧対策として始められた経緯がある。
そのため「物とお金の豊かさ」を現わす「福」と、「心の豊かさ」を現わす「祉」という文字を組み合わせて表現されている。
そして祉より先に、福があるという意味は、まず人として生き得る最低限のものを得ることを目的としており、それが充足してはじめて心の豊かさが生まれることを現わしている。
つまりここで言う、「物とお金の豊かさ」とは、決して贅沢な暮らしを現わしているわけではないということだ。
何が贅沢で、何が最低限なのかという尺度は存在しておらず、時代とともにその概念も変わっていく。よってその判断は難しいところだ。
現在の我が国の社会情勢を見ると、自家用車は贅沢品ではなく、それは生活を支える収入を得るための移動手段であったり、日常生活を営む上で必要不可欠なツールである場合が多い。例えば公共の交通網が発達していない地域においては、高齢者の暮らしを支える物品を得るために不可欠な移動手段が自家用車であったりする。それらの地域で、そうした人たちは、自家用車が運転できなくなった瞬間から暮らしに困るわけである。
PC、スマートフォン、タブレット、携帯電話も、それを使いこなして生活するのが当たり前の世代にとっては、なくてはならない生活ツールである。なにをもって贅沢であるといえるのかは、難しいところである。
これはもう政治の問題だ。ソーシャルワークの専門技術の中で判断できる問題ではない。
しかしいくら物を手にしたところで、それが心の豊かさにつながるとは限らない。満足しない人の心に豊かさは存在しないからだ。
ある意味、物やお金で済むことなら、問題は複雑ではない。それを手に入れるための過程はともかく、結果としては、目に見えるものを手に入れさえすればよいだけだからである。
そのことに加えて、心の豊かさを求める人々の思いを、僕たちソーシャルワーカーは大切にしなければならないし、求めるものを探すために手を差し伸べる必要がある。
僕たちソーシャルワーカーは、そんなふうに、暮らしを支えるだけではなく、人の心を豊かにするために何が必要かと考え続ける責務がある。答えはひとつではないのかもしれないし、答えが見つからないこともあるだろう。そうであっても目の前の一人ひとりの利用者が、僕たちと縁を結んだ結果、暮らしぶりが良くなることのみならず、心の平安を得て、日々の暮らしに満足して暮らしてもらうために何が必要かを考え続ける必要がある。
そのためには、僕たち自身の感性を磨き、人の心のひだに敏感になり、喜怒哀楽に敏感になる必要がある。そして僕たち自身の中で、人に感謝する心や、人とつながりあうことを尊く思う謙虚な気持ちが必要だ。
対人援助における冷静な対応の基盤は、冷徹な心ではない。冷静な対応の基盤は、人に対する熱い思いである。その熱い思いを失ったときが、ステージを去るときなのかもしれない。
施設サービスの場は、衣食住が満ち足りた場である。しかしそこには満ち足りた思いを持つことができないたくさんの人たちがいる。衣食住が満ち足りても、心の平安が得られない人がいる。心の豊かさを得られない人が存在している。
その人たちが求めているものは、誰かとの関係性である。それが途切れてしまったと感じている人は、途絶えた関係性を紡ぎなおそうと、家に帰るという。雪が降る中を、除雪するために帰るという。すでに亡くなった夫や妻のもとに帰ろうとする。
それは或る意味当然である。それは僕たちが説得してどうこうする問題ではない。その思いに心を寄せて、満ち足りない思いを分かろうとするだけだ。
認知症の記憶障害とか、見当識障がいという捉えかたではなく、人の心のひだを見つめることがもとめられているのだ。そしてそうした形で寄り添うとし続ける限り、僕たちの思いは必ず伝わると信じている。
そんな考え方の先にエビデンスは生まれないといわれても良い。
エビデンスは必要でも、もっと求めるべきものがあるからだ。人の思いを大切にする先にしか見つけられないものがあるからだ。
この思いを言葉や文章で伝えられたときに、僕のつながりは永遠となっていくのかもしれない。
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「使えるものはわしでも使え。その代り、中途半端は許さん」
理事長も高齢者と呼ばれる世代であり、また隙間時間に常に施設を見てます。
私は畑違い(他業種)から来た人間なので、現場経験も無いし対人援助なんてド素人。
ただ、ケアマネージャーや社会福祉士の発言を聞いていると時々「保険しか使ったらダメなの?一般にある
もので使えるものを使ったら法人を潰されるの?」と聞いてしまいます。
法人が政令市にありますので、施設はともかく在宅では市独自の補助が結構ある。
それを知らない、知ろうとしない支援が結構多い。
施設もほんの少し検索すれば活用できるものがあるのに「出来ない」
熱くなくてもいいから、「んじゃ、この人が求めてる事で出来ることを調べてみるか」くらいはやりましょう。
仕事だよ?賃金もらっているんだよ?それはやらなきゃいかんでしょう。
万難排する必要はないから、チャンスに即応出来る体制を作っておくのも営業上は大きな利点になるんですが。
同時に引き出しを多く持っている人物ほどいざというときに腰が軽くなれるよ。