改正社会福祉法の規定により、すべての社会福祉法人は、評議員を29年3月31日までに新たな法規定に基づいて選任しなければならない。このことは、従前から評議員会を設置し、評議員の任期が来年4月以降となっている場合も同様であり、評議員を選任しなおす必要がある。(参照:社会福祉法人関係者は法改正に鈍感すぎないか?)
このことに対する備えは進んでいますか?そのように問いかけると、今の時期すでに準備を終えているという社会福祉法人が多いが、しかしその準備は万全だろうか?
特にあらたな方法で選任する評議員候補に対し(現在の評議員で再任する予定の人も含めて)、評議員の権限と責任を負う義務について、十分に説明責任を果たしているのだろうか?
僕の知る範囲では、権限についての説明があっても、責任を負う義務について、ほとんど説明していない法人が多い。このことは後々大問題となりかねない。
新評議員会の権限は、従前のそれとは比較にならないほど大きく、評議員の選任を慎重かつ適切に行わないと、合法的な法人乗っ取りという事態も空論とはいえないことについて、貼り付けたリンク記事で紹介している。そこでは同時に、「評議員は役員等と連帯して社会福祉法人や第三者に対する損害賠償責任を負うこととなるため、その責任を負ってくれる評議員を必要定数確保できるかどうかが、大きな課題となるだろう。」と指摘しているところだ。
評議員が負うべき社会福祉法人や第三者に対する損害賠償責任とは、例えば理事長や法人役員が、法人の資金を横領して、法人に損失を与えた場合に、その人選責任を問われて、評議員も賠償金を支払わなければならないという事態が考えられる。
理事長が、理事会の議決も経ずして、多額な法人支出を伴う理事長室と称した私的な部屋を作る様な場合で、建築の随時契約も不透明な方法(例えば2社見積もりで、工事を受注した業者が、受注できなかった業者を下請けとして、事実上一体的に工事を行っているような場合)などは、人選責任とともに賠償責任が問われることも非現実的ではない。
しかも賠償責任は有限ではなく、無限責任を負うのだから、巨額な賠償請求をされることもありえないわけではない。しかしさらに大きな問題がある。それは何か・・・。
社会福祉法改正に詳しい、「介護・福祉系法律事務所 おかげさま」の外岡 潤弁護士は、シニア・コミュニティ2016年11・12月号(ヒューマン・ヘルスケア・システム)の氏の連載記事において、「その責任は評議員が死亡しても消滅せず、負債として遺族に相続されるのです。」と指摘している。
怖いことである。
さらに外岡氏は、この夏の台風被害で岩手県のグループホームで9人の利用者が亡くなった事案を例示して、今後はこうした災害で被害者を出した法人では、評議員が予防するための体制構築をしていたかという責任も問われる可能性があることも指摘している。
そのための備えについても解説されているので、外岡氏がシニア・コミュニティに書いている、「待ったなし!社会福祉法改正で生ずるリスクと採るべき方策」を参照していただきたい。
評議員会の権限強化とともに、評議員にはこうした厳しい責任が負わされていることを説明したうえで、新たな規定により評議員の選任を行う必要があることはいうまでもないことだが、それがされていない社会福祉法人は、評議員確保のために意図的にこのことを明らかにしていないのだろうか。そうではなく説明できるほどの知識がないのだろうか?
そもそもこうした権限と責任について知らない法人理事長や役員では困るわけである。これからも社会福祉法人は、逆風に向かって走り続け、非課税法人である立場を護っていく必要がある時期に、法令知識がないのでは、様々な圧力に立ち向かえない。
とはいっても、そういう困ったチャンがたくさん存在しているということも、社会福祉法人の同属経営・個人商店的運営の実態の一面でもある。
ある意味そうした困ったチャン法人は、なくなっても良いわけではある。罪がない職員は困るだろうという声が聞こえてきそうだが、有能な職員を求めている社会福祉法人は、たくさんあるのだから、それらの人は、適切な法人運営ができている社福に転職したほうが将来のためだろう。
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