介護福祉士養成校の非常勤講師をしているが、過去に教えた学生の顔と名前をすべて覚えているわけではない。
というより僕は本業が別にあるので、学校で授業を行っている期間は短いし、せいぜい1学年に対する担当授業は1教科もしくは2教科といったところなので、よほど印象に残っている学生しか覚えていない。しかし学生のほうは僕のことを覚えており、先日も10年前に僕が教えた子から声をかけられた。介護の事業者で働き続けている彼は、僕から見てもすっかり立派になっていてうれしい限りである。
こんなふうに僕の教え子が、たくさん介護サービスの場で活躍して、事業者の中で中心的役割を担う人材に成長している。介護福祉士養成専門学校の非常勤講師という役割をいただいていることを心よりありがたいと思う。
今年度も2年生の後期授業で、「社会福祉主事実習」(実習といっても講義形式の授業である)と、「社会福祉援助技術演習」を担当している。本業である高齢者介護とは分野が全く異なる、障がい者福祉や児童福祉、子育て支援からドメスティックバイオレンス、インフォームドコンセント、ホームレス問題など幅広いテーマの授業を担当しているわけであるが、こうした広範囲の分野を一人で担当できるのも、僕が講師として求められていることであろうと心得、それはそれなりに楽しんでいる。
今年の2年生はやる気があって、まじめな良い子が多いので、授業をしていてもやりがいがある。ただその数が23名であるのが少し寂しい。
僕が授業を担当するようになった当初は、1クラス30名を超え、それが2クラスあった。それゆえにスキルのばらつきはあったとはいえ、それだけ多くの学生が介護福祉士を目指していたわけである。それが今では1クラスのみで、25名に満たない生徒しかいないというのは、介護事業者にとっても人材難につながる深刻な事態といえる。
それでも室蘭にはこの学校があって、介護福祉士を養成できているから良いほうで、例えば僕の現在の職場がある千歳市には養成校がない。全国的に見ても、昨年度より今年度は養成校の数が60校以上減っているそうである。
その最大の理由は、少子化に加えて高校の進路指導の先生が、介護の職業には未来がないとして、生徒の進路として介護福祉士を選ばないように指導しているからである。この状況を何とかしないと介護人材難は、より深刻な状況を生み出し、それは国民の多くが介護難民となりかねないという社会問題と直結してくる。
そんな中、全国老人保健施設協会の東会長が、面白い提案をしている。それは地域包括ケアを推進する原資として各都道府県に設けてある基金の使途の再考だ。
この基金は大きく分けて「施設等整備」と「人材確保」の2つがあるが、両者のバランスを見直してはどうかというのである。昨年度の予算(補正を含め2,285億円)でみると、「施設等整備」に全体の9割を占める2,041億円が充当されている一方で、「人材確保」は244億円にとどまっていることを指摘し、「配分が逆ではないか。そんなに施設ばかり作っても働く人がいない。一体どうするのか」と問題提起をしている。
具体的には、介護福祉士養成校の授業料をすべて免除し、通学している間の生活費も補助する手厚いサポートを行う案を出し、「基金の使い方を変えればできる。それくらいしないと、(介護人材不足は)解決しない」との考えを示している。
僕はこの提案には大賛成だ。前述したように、介護職員のなり手がない根本原因は、介護職員という職業に未来がないと感じている人が多いからである。高校卒業者が介護福祉士養成校に入学しないのもそれが最大の理由で、けんもほろろと言う態度の進路指導教員も多い。この状況を変えるためには、処遇改善加算による待遇改善ではアピール不足である。
東会長が提言を疲労した会見で、「少し極端かも、というくらいでないともうもたない」と発言しているが、その通りである。
そもそも介護サービスの量が不足するからといって、箱物だけを整備してどうするというのだ。そこで実際に介護サービスを提供できる人材がいないから、施設は完成し指定は受けたけど、一部のユニットを開設出来ないという、「空き箱」が全国各地にできているではないか。それほど無駄なものはない。
建物より、サービスを提供する人材、人の暮らしを守る人材の確保にお金を使うべきではないだろうか。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
「人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。)