このブログでは制度改正について様々な角度から論評しているが、社保審やその他の専門会議等で、介護保険制度改正に直結する議論が、現在までどのような方向性で議論されているのかを、いま一度整理してみたい。

財務省が最初にやり玉に挙げたのは、福祉用具のスペックと価格の関係が高止まりしているという点である。その意味は、福祉用具の性能のわりに価格が高すぎるという意味であり、価格を適正レベルまで下げるように何らかの規制をかけようというものだ。さらにスロープ・ベッド・手すりの3種類については、最高価格が平均価格の10倍を超えているとして、品目ごとに価格上限を設定することになりそうである。

軽度者といわれる「要介護1、2」(計223万人)向けの生活援助を保険給付から除外し、市区町村の事業に移す検討については、今回は給付除外を先送りし、その代わり事業者へ支払う介護報酬を2018年度の改定時に引き下げる方向が打ち出されている。

これと関連して、顧客単価が下がることに対応するためには、保険外サービス事業の展開を積極的に行うように誘導しており、保険給付サービスと保険外サービスを同時一体的に提供する「混合介護」の推進案もそのひとつである。

しかしここで注意したいことは、公正取引委員会の報告書における規制緩和と、規制改革推進会議の規制緩和の検討は別次元であるということだ。むしろ規制推進会議関係者は、公正取引委員会がこの問題に踏み込んできていることに怒っているのである。

10/27に行われた自民党の「介護に関するプロジェクトチーム(以下PTと略)」では、「公取のレポートには捕らわれない」、「(規制緩和は)規制改革推進会議で議論する」、「利用者の安心・安全を守れなくなる緩和はしない」として、公取委レポートに激しい拒否感が示された。その中には、「介護PTで公正取引委員会を問い糺す機会を設ける。自由市場を見ている公正取引委員会が、公定価格による介護保険制度のあり方に首を突っ込んでくることがそもそもおかしい。」という意見もあった。

ちなみに軽度者の給付除外に関連しては、11/17の「財政制度等審議会」で、要介護2以下の給付縮小に改めて言及するとともに、生活援助について、どのように自立支援につながるかをケアプランに明記することを義務化すべきと踏み込んでいる。これは介護支援専門員の業務負担に直結する問題なので、今後とも注視していく必要があるだろう。

居宅サービス関連では、通所介護の新たな類型として「共生型サービス」を創設し、障害福祉サービスの事業所でも介護保険の給付が受けられるようにする方針(人材を効率的に活用)が示されている。障害福祉サービスの事業所が、介護保険サービスの事業所としての指定を受けやすくなるようにするというものだ。

しかし昨日の記事で示したように、一方では未来投資会議が介護保険で提供できるサービスに「自立支援介護」という枠組みを新たに設けて、高齢者の要介護度を下げた事業者の介護報酬を優遇する制度の導入を検討するよう求めていることで、レスパイトケアに対する大幅な報酬減額が現実味を帯びている。

居宅介護支援関連では、居宅介護支援費の自己負担導入が規定路線であるかのような議論展開が見られるほか、相談支援専門員とケアマネジャーとの連携をさらに促進する観点から、居宅介護支援事業所の基準の見直しが検討されている。

さらに小規模多機能型居宅介護の利用者のケアマネジメントを外部のケアマネジャーが担えるようにする見直しが議論の俎上に載せられ、居宅介護支援事業所のケアマネが、小規模多機能型居宅介護の仕事を兼務できるようにすることが検討されている。

これは小規模多機能居宅介護の利用が伸びない要素のひとつが、小規模多機能居宅介護に移行すると、居宅介護支援から外れてしまうため、居宅介護支援事業所の担当ケアマネが、利用者を離したくないために、小規模多機能居宅介護の適応である人も、抱えこんで小規模多機能居宅介護事業所に紹介しないという理由があると考えられているためで、利用者が小規模多機能居宅介護に移行しても、継続して居宅介護支援事業所が担当ができるようにしようというものだ。

ただ居宅介護支援事業所のケアマネが、小規模多機能型居宅介護のプランを実際に立てられるかというと、はなはだ疑問だ。小規模多機能居宅介護事業所のサービス内容・個性を知悉していない人には無理ではないだろうか。

介護認定期間を3年に延長することについては、前にも賛成意見を書いたが、そもそも区分変更申請ルールがあるのだから、認定期間などなくても良いと思う。

ケアプランを作成するプロセスでAI(人工知能)を活用するための検討も行われているが、どうぞケアマネを助けるAI技術の進歩を実現させてほしい。そうなった先には、書類に振り回されずに、人と向かい合って支援行為に係るという、ケアマネジメントの本質部分の業務に専念できるからである。

このことについて日本介護支援専門員協会は、文書作成の効率化でタイムリーな支援につなげられると前向きに捉えつつ、「尊厳に通じる価値や文化、生活環境などは人でなければ分からない。全面ICT化は憂慮する」と慎重な姿勢を求めている。この団体にしては、珍しくまともなことを言っているように思える。

ところで介護ロボットに関連しては、その導入事業者に対する加算を検討するとしている。そのことも過去の記事で批判しているところである。

僕がかねてから必要不可欠と指摘している、2号保険料の総報酬割導入(現在は総人数割り)も、議論の遡上に上っている。これについては企業の負担が増えることから反対の立場を取っていた経団連会長も、「何が何でも反対するものではない」と述べ、給付費の伸びを抑制する措置をあわせてとることを条件に、実施を容認する構えをみせており、数年かけて段階的に総報酬割へ移行する流れとなっている。

そのほか、給付制限につながる利用者負担増については、3方向からの議論があるが、それは明日、あらためて整理してみるつもりである。
※祝日は記事更新しないことが多いが、明日は必ず更新するので、ぜひご覧になってほしい。
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