専門学校などで介護福祉士を目指す留学生が、従来の10倍超に急増しているそうである。

これは国家資格を取得した外国人が、継続的に就労できるよう在留資格に「介護」を設ける入管法改正案が国会で審議されており、その法改正を見越した動きだ。

外国人は従来、経済活性化を目的に複数国間で人や物、労働力などの移動を自由化する経済連携協定(EPA)に基づき、介護福祉士として就労できるとされていた。逆に言えば、EPA以外のルートでは国家資格を取っても介護福祉士として働けなかったのが現状である。

しかしEPAを結んでいる国の人々も、日本の試験制度があまりにも外国人に配慮がない点や、不合格の場合の帰国ルール(3年の実務経験後に国家試験に合格すれば継続的に日本で就労できるが、2度不合格なら帰国する決まり。)などが厳しいものだとして、日本に来て介護福祉士になろうとする動機づけに結び付かず、他の外国で介護労働に就こうとする人が多くなる傾向にあった。

そのために外国人向けの試験問題にルビを振るなどの改正を続けてきているわけであるが、合格者が増えても、短期間で母国に帰国する人も多く、なかなか国内の介護労働力の不足を補うほどには、外国人労働者数が増えていないのが現状である。

そうした状況下で、入管法改正案は今臨時国会での成立も見込まれており、改正後は国指定の養成機関で2年以上学んで卒業した外国人が介護福祉士として在留資格を得られるようになる。これによって、、経済連携協定(EPA)に基づい て例外的に認め ているインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国以外の外国人労働者が、介護福祉士の国家試験に合格し、介護現場で働く道が開かれるわけである。

このこと自体は決して悪いことではないし、これによって外国人労働者の数は増えるだろう。

例えば、僕が今年6月に講演を行った中国・上海では、一人っ子政策の影響から、独居老人が増えており、民間レベルでその対策が行われているが、そこに公的支援の手が差し伸べられることが期待されており、そうであるがゆえに高齢者介護は、大きなお金が動く市場にもなっている。

しかし一方では、介護に従事する人の技術レベルも低く、待遇も良くないという問題がある。そのために高い技術があるといわれている日本の介護技術をいち早く取り入れて、介護市場でのシェアを確保しようと画策している人もいる。これらの人々が、日本の介護福祉士になって学んだ技術を母国に持ち帰って、母国での介護ベンチャーになろうとする可能性もあるわけだ。

しかしそのハードルは今後引き上げられる。なぜなら現在は介護福祉士養成機関を卒業すると国家資格を得られるが、22年度卒業生からは国家試験に合格しなければならなくなり、留学生にも適用されるため、試験合格が必須となるからだ。

ところで前述したように、外国から介護福祉士を目指して来日した人々は、一定期間日本の介護を学んだ後は、帰国してその技術を母国で生かすことを目的としているために就業期間は短くなる傾向にある。なぜなら外国人介護労働者は、日本の介護労働者の不足は、2025年以降さらに深刻になるのと同時に、それはせいぜい15年〜20年程度の限られた期間の問題であり、それ以降は、高齢者の数が少なくなり、介護労働者の数余り現象が出現し、その時には真っ先に外国人労働者が切り捨てられるという不安を持っているからである。

そうであれば、日本の法改正後の制度を利用して、自分のスキルを高めて、それを母国で生かそうとする人が増えることは必然の結末で、結果的に外国籍の介護福祉士の数は増えても、定着率が高まらず、日本の介護労働者の数の不足は、外国人労働者の増加で補えるということにはならないということになるのではないだろうか。

今までのように、打つ手なしか、打つ手がまったく的外れなリタイヤした人の登録制度などよりはましな方向性ではあるが、根本的な解決策である、日本の若者が介護労働を選択し、そこで安心して働き続けることの手当てがない限り、すべて付け焼刃の対応に終わるのではないだろうか。
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